第6話 ユーリの思惑

◆ユーリ視点


「へぇ、あの子がリノアのお気に入りのイオリ君か。

いい子じゃない。私も好みかも。

ねぇ、いつ紹介してくれるの?」

「ふふふ、まだ駄目だわ。

じっくり恋を楽しんでいるんだもの。

私、今回は本気だから、絶対手を出さないでね。」

「あはははは、恋を楽しむって。

そもそも年の差はいくつなのよ?

本気になったら犯罪だからね。

ねぇ、たまにならいいでしょ?

今までお互い助け合ってきた訳だし、ね。

去年もさみしいって言うから

貸してあげたわよ?」

「ふふふ、ごめんなさい。

彼だけは絶対ダメだわ。

笑われるかもしれないけど

7ヶ月前、彼が私と一緒の『プリースト』に目覚めたと聞いた時、運命を感じたわ。」

「あはははは、運命って、勘違い勘違い。

もう手は出してるんでしょ?」

「ふふふ、まだ出してないわよ。

一緒にいられるだけで幸せって感じるもの。

2人の関係を壊すような事はしていないわ。」

「あはははは、リノア、大丈夫?

熱でもあるんじゃない?」

「ふふふふふ、あなたも本当に大切な人ができたら分かるかもね。

もう彼からは真剣にお付き合いして欲しいって告白されてるわよ。

でも、あの子の師匠をやると決めてから、関係を進めていないの。

師匠として、あの子の成長を優先してあげたいもの。」

「あははは、告白されたって。

お姉さんに甘えたいだけでしょ。」

「もう!どっちにしても、彼だけはダメだわ。」

「ねぇ、手は出さないって約束するからお願い。

親友の想い人がどんな子か確認しとかないと」



そんな会話をしたのが昨日の話だ。

「こんにちは、リノアの親友のユーリよ。

内科棟で働いている。

イオリ君の事はリノアから色々聞いてるよ。」

「初めまして、リノア先生の弟子のイオリです。

よろしくお願いします。」

「イオリ君、えらいわ。

しっかり挨拶もできるのね。」

「あの、ユーリ先生。お願いがあって…

内科棟へもお手伝いに行ってみたいんですが…

やっぱりダメでしょうか?」

「ちょっと、イオリ君!?

内科棟はダメよ。

ユーリに何をさせられるか分かったもんじゃ…

それに外科棟のお手伝いはどうするの?」

「色んな経験をしてみたくて。

内科棟は凄くお忙しいと聞きました。

少しでもお力になりたいなって…

リノア先生ダメでしょうか?」


リノアが露骨に嫌がっている。

えらい言われようだ。

あはは、まぁ、逆の立場なら私も止めるし、止めるような事をしてきた。

今回は本気だと言うリノアの気持ちは分からないでもない。


「イオリ君。もちろん大歓迎よ!

この前も人が辞めちゃったから

人手が足りてなくって。

本当に助かるわ。」


ニッコリ微笑んで握手をする。

あれ?

何か彼と繋がったような感覚になる。

握手した手を見返しても特に何もない。


「やった!ユーリ先生、ありがとうございます。

早速、明日から伺ってもいいですか?」

「助かるわ、イオリ君。

内科棟のみんなにも伝えておくわね。」

「ちょっ!何で話が進んでるの?

先生のお願いを聞いて、ダメよ、イオリ君。」

「リノア先生。

休憩時間はリノア先生の所で休憩するつもりです。

だから、お手伝いしてきたらダメですか?」 

「イオリ君。。。」


うわぁぁぁ、イオリ君のあの表情。

リノアじゃなくても、クラっときちゃったわ。

あんな顔されたら、リノアも強く言えないわね。


「イオリ君、もし何かされたら、すぐに言ってくるんだよ?

ユーリ分かってるわね。

親友と言えど、間違いは許さないわ」

「あはは、ええ、もちろん分かってるよ。

私も親友を失いたくないから。」



今日からイオリ君がお手伝いに来てくれる。

正直、ちょっとした掃除や片付けを手伝ってくれればいいと思っていた。

しかし、良い意味で裏切られることになる。


教えられた事をメモを取るのは当たり前。

自分にもできる掃除や片付けは率先して行い

手が空けば自分から仕事を取りに来る。


何より人を良く見ている。

それぞれの作業工程をまとめ、この作業をさせて欲しいと自分から提案してくる。

さらに誰かが怪我をすると、すぐに回復魔法で癒してくれる。

そこらの新人よりよっぽど使えるのだ。


2日目には

「イオリ君っていったかな。

あの子、凄く良いよね。

痒い所に手が届くっていうか。」

「もう『プリースト』として目覚めいるのに

昼間は内科棟でお手伝いしたいって言ってたよ。」

「ヤバイ、私、キュンってしたよ~。」

そんな話が食堂で聞こえてきた。


流石、リノアの秘蔵っ子とでも言えばいいのかしら。

私から見ても良くできた子だ。


「ユーリ先生。今日もありがとうございました。

明日も朝からお伺いしますね。

あの、、皆さんのお邪魔になってなければいいのですが?」

「邪魔だなんてとんでもない。

ここの職員がイオリ君がいてくれて

助かるって話してたよ。

バイト代を払うから、こちらに正式に来ない?

私もイオリ君なら大歓迎よ。」

「そう言って頂けて嬉しいです。

僕の働きが悪いと、リノア先生とユーリ先生の顔に泥を塗っちゃうと思って緊張しました。」


働きぶりと言い、受け答えと言い

もう10歳の物とは思えない。

最後に親友としてリノアへの気持ちを聞いてみる。


「リノア先生は僕の大切な人です。

それに、、あの、、笑われるかもしれませんが

キレイで優しくて…あの笑顔を見ると幸せになるっていうか、、、

いつか男として見て貰えるようになりたいって思ってます!

あ…すいません。

それでは、これからリノア先生の授業がありますので

今日はこれで失礼致します。」


あはは、リノアいい子じゃない。

容姿もいいし、能力も高い。

リノアが本気になるのも分かるわね。

知ってしまったら、欲しくて欲しくて堪らなくなる。


すぐに切り崩すのは難しいわね。

ゆっくりでいい。

何とか入り込む余地がないか、思案するユーリだった。


イオリ 10歳

職業:寄生虫LV5

擬態職業:プリーストLV5

熟練度:

寄生虫 LV5(11.85/500)

プリースト LV5(126.61/500)

魔女 LV1(59.93/100)

医者 LV0(1.12/50)

寄生先:2(2/2)

親密度:リノア(69/98)

   ユーリ(5/91)

スキル:寄生 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

浄化魔法(小) 火炎魔法(小) 精神異常耐性



ステータス(↑プ+魔+寄)

HP 42/42

MP 42/42

体力 23

力  19

魔力 47

精神 44

速さ 21

器用 26

運  31

寄生 14

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