第7話 リノアの不安

◆イオリ視点


よしっ!

何とか内科棟に入り込めた。

リノア先生との親密度は60ぐらいから、伸びが悪くなってきていた。

まずは親密度を上げやすいユーリ先生との関係を築く方を優先する。

内科棟で一緒に仕事をすれば、仲良くなる機会に恵まれるだろう。


少しでも好感を持って貰えるよう、お手伝いは真剣に取り組んだ。

ユーリ先生は仕事ができる人間が好きだと感じたからだ。

自分で言うのもなんだが、これで給料を貰っていないのがおかしいレベルだと思う。


それでも、お金や労力ではない。

仲良くなってしまえば、後は寄生により熟練度が安定して入ってくる。

それまで頑張ればいい。


何故かとても嫌がっているリノア先生には申し訳ないけど

もうしばらく内科棟でお手伝いさせてもらおう。



◆リノア視点


良かった。

今日も内科棟から無事に帰ってきてくれた。

それだけで嬉しくなる。

抱きしめて、何度も何度も魅了魔法を掛ける。


内科棟へ手伝いに行ってまだ1週間。

たった1週間なのに、彼のことが気になって気になって仕方がない。

魅了魔法を念入りに掛けないと落ち着かない。

気休め程度の魔法でもすがってしまう。


何から無事に帰ってきたかは言うまでもない。

あの女からだ。

私も元々は同じ穴の狢。

ユーリの好みもやり口もほぼ理解している。


特に気を付けないといけないのは薬物だ。

ジワジワ入り込んできて

気が付けば、あの女に全てを彼を奪われかねない。

彼は私の全て。

あの女に譲るつもりは微塵もない。


あちらで提供される物を口にしてはいけないと言いたい。

言いたいが、そういう訳にもいかない。


しかも、私も【魅了魔法(微)】で似たような事をしている。

その時その時の印象を良くする程度でも、ちりも積もれば山となる。

彼の私との記憶は美化されている部分がそれなりにあるのではないだろうか。

もちろん、ユーリはそれを知っている。


今の関係は魅了によるものだけではない。

特に彼の師匠になってからは彼の為を思い接してきた。

それでも、やっぱり不安なのだ。

後ろめたい気持ちが心を沈ませる。



ユーリに紹介するまでは、こんな思いすることも無かったのに。

失敗した。

紹介なんてするんじゃなかった。



そう物思いに耽っていると

その不安の種がこちらにやってきた。


「イオリ君、本当に助かってるわ。

内科棟でも評判良いのよ。

バイト代出すから、しばらく内科棟にって本人にお願いしても、お手伝いがいいって。

母親のサラさんにお願いしたら

イオリの事はリノア先生に一任していますので、だって。

あはは、もう母親の信頼まで勝ち取っているのね。」

「何故、勝手に話を進めようとしてるのかしら?」

「あのレベルで働いていくれるなら

お金を払った方がシフトにも組み込めるし、仕事のお願いもしやすいもの。

それくらい人手が足りていないの。

あなたもそこら辺は分かってくれると思うけど?」

「ユーリなら私の不安を理解できるわよね?

こんな話になるなら、絶対、紹介なんてしなかった!」

「嫌われたものね。

でも、内科棟に行きたいって言い出したのはあの子なんだよ?

遅かれ早かれ、あの子の行動力なら内科棟に来ていたと思うわ。


ねぇ、あの子に、イオリ君にリノア先生をどう思ってるの?って聞いたら何て応えたと思う?」

「えっ…何て、、言ってたの?」


あの子との絆には自信がある。

もう固い信頼関係は出来上がっているはず。

それでも、魅了魔法という後ろめたい事をしているからか、どうしても不安はつきまとう。


「あはは、安心して。リノアせーんせ。

優しくてキレイで、笑顔を見ると幸せになるんだって。

今は無理でも、いつか男として認めて貰いたいって言ってたわよ。

私が入り込む隙なんて少しも無いわ。

盛大にノロケられちゃったわ。」


不安と罪悪感は残っているけど

ひとまずホッとした。


「だから、人数不足が解消されるまででいいから

あの子を内科棟で働くことを認めてもらえないかしら?


あなたが不安に思っている事なんて一切起こらないと保証するわ。」

「……。分かったわ。

ただし、彼がお手伝いではなく、働くことを認めればだからね。

それと約束は必ず守ってね。」

「あはははは、大丈夫よ。

私達の仲じゃない。

悪い虫が付かないように、しっかりと見張っておくわ。」

「ふふふ、そのあなたが悪い虫だったなんて落ちは許さないからね?」


ユーリの最後の言葉で頷かざるを得なかった。

これ以上拒否すれば、ユーリの口から何が飛び出すのか分かった物ではない。


ぁぁぁ、認めたくなかった。

彼が内科棟に行き続ける限り、心に安寧は訪れないだろう。


いつの間にか私はこんなにも弱い人間になってしまった。

本当は内科棟に行かないでと、泣いて彼にすがりつきたい。

でも、彼の目標でありたい。立派な師匠でいたい。


さらに年齢の壁が立ち塞がる。

彼は10歳で私は24歳。

10歳の男の子にすがりつけば、彼はどう思うだろう。

本当に見放されるかもしれない。



イオリ 10歳

職業:寄生虫LV5

擬態職業:プリーストLV5

熟練度:

寄生虫 LV5(63.77/500)

プリースト LV5(178.41/500)

魔女 LV1(67.03/100)

医者 LV0(11.27/50)

寄生先:2(2/2)

親密度:リノア(69/98)

   ユーリ(16/91)

スキル:寄生 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

浄化魔法(小) 火炎魔法(小) 精神異常耐性



ステータス(↑プ+魔+寄)

HP 42/42

MP 42/42

体力 23

力  19

魔力 47

精神 44

速さ 21

器用 26

運  31

寄生 14

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