第8話 ユーリの誤算

◆ユーリ視点


「ねぇ、イオリ君。

アルバイトの件、やっぱりお願いできないかしら?

リノアも許可をくれたわ?

それにさ、リノア先生を喜ばせたくない?」

「えっ?」

「イオリ君がアルバイトを頑張ったお給料でプレゼント買ってあげたら絶対喜ぶよ。

内科棟のみんなも、リノア先生も喜んでくれる。

そしたら、イオリ君も嬉しいでしょ?」

「分かりました。

では、1ヶ月だけお願いしてよろしいですか?」

「本当はもう少しお願いしたいんだけど仕方ないか。」

「そこはすみません。

リノア先生の為と思って精一杯頑張りますので」

「じゃ、リノアに報告に行こう。

あはは、プレゼントの件はまだ内緒ね。」


昨日、リノアを見に行った感じでは、だいぶイライラしていた。

1ヶ月あれば十分だ。

その間にリノアに揺さぶりを掛ける。

困ったイオリ君と相談に乗って仲良くなり、後は…


あはははは、女は友情よりも愛情を取る人が多いって聞く。

私も例に漏れず。と言ったところか。

まぁ、私の場合は何よりも欲望を優先するんだけどね。

あはは、リノア、ごめんなさいね。

やっぱり私が悪い虫だったみたい。



しかも何故かイオリ君は私と仲良くなりたいみたい。

やたらと私に視線を送ってくる。

何かあれば、他のスタッフではなく、必ず私の所に相談に来る。

まるで私と少しでも話す機会を増やしたいように見える。

あはは、これは都合が良い。

リノアにたっぷり見せ付けてあげないと…ね。


計画は順調に進んでいた。

昨日はイオリ君とリノアにケーキの差し入れを持って行ったところだ。

たっぷり私とイオリ君の仲の良いところもリノアに見せ付けておいた。

飛びっきりの笑顔でボディータッチをさりげなく行う。

あはははは、リノアったらイライラしていたな。

市販のケーキなのに、何か入れられてないか何度もチェックしていたし。

昔、あなたの目の前で何度も薬を使ったものね。

気が気じゃないでしょうね。


その後も計画は順調だった。

リノアが嫌がる事が手に取るように分かってしまう。

しかも、イオリ君は何も知らずに私の所に自分から寄ってくる。

あはははは、本当に罪な男なんだから。


昨日は途中から泣き崩れ、イオリ君を抱きしめていたみたいだ。

私が昔使っていた薬物と同じ容器に

同じ色の別の薬(目薬)を入れてイオリ君に渡していた。

それを見つけてしまったのだろう。


愛する弟子がいつの間にか、師匠の私よりも、親友のユーリを好きになっているかもしれない。

リノアの怯えが伝わってくる。


あはは、ごめんね、リノア。

でも約束通りイオリ君には今はまだ何もしてないよ?

今はまだね❤️



イオリ君を私の助手として配置したから

話をする時間が増えた。

リノアや仕事の話だけでなく、進路の相談、他の街や国のこと、ダンジョンや職業のこと。

もう読み書きや計算は一通りできるみたいで

再来年から始まる学校に行きたくないと言っていた。

賢い子だと思っていたけど、俗に言う天才というやつか。


リノアがイオリ君にどっぷりハマるのもよく分かる。

働き始めて2週間で効率改善を提案してくる賢さと広い視野。

『プリースト』として将来は有望。

礼儀正しく、柔らかい物腰。

落ち着いて物事も考えられる。

年上と話しているのかと錯覚させられる事がある。


それなのに…それなのに…

あの可愛い外見と照れ屋な性格とのギャップが私を刺激する。

不意に胸が当たったりすると顔を真っ赤にするのだ。

ハァ…ハァ…ハァ…

もっと困らせたくて胸が疼いてしてしまう❤️


あの子を独占するなんて、いくら親友と言えど許してあげられない。

認められるハズがない。

あの子はあなただけの物じゃない。

私達2人の物よ。



そろそろ、計画も大詰め段階に入った。

特別なお薬も手に入れた。

あはははは、ここまで我慢したんだもの。

先にイオリ君を味見させてもらうわ。

ここからは遠慮しない。

お薬の力も女の武器も徹底して使わせてもらう。





おかしい。

そろそろ、イオリ君が困り果てて

リノアの相談にくるはずなのにそんな気配が無い。

計画の最終段階が発動しないのだ。


そんなはずは無い。

長年の付き合い。親友だからこそよく分かる。

もうリノアは虫の息のはずだ。


私が我慢しきれなくなってリノアに会いに行く。

顔色も良く、私と話をしても落ち着いている。

むしろ、余裕すら感じる。


そんなはずは無い。

さらに揺さぶりを掛けてみる。


「ねぇ、もう1ヶ月だけイオリ君を貸して欲しくてお願いしにきたの。

もう少ししたら新しいスタッフも増えるから、何とかお願いできないかな?」

「ふふふ、彼が内科棟で頑張ってくれてるみたいで良かった。

彼も得る物が大きいみたい。構わないわよ。」


なんで?なんで?なんで?

リノアはもう限界のはずよ。

何故、心にこれほど余裕があるの?

延長の申し出もあっさり許可してきたのだ。


1週間前、リノアが泣き崩れたと聞いた時

私の勝ちは確定したはずだ。

おかしい。何かが起こっている。



◆リノア視点


ふふふふふ、ユーリ。

我慢できずに私の様子でも見に来たのでしょ?

私があなたでも同じことをしていたわ。


ふふふ、ごめんなさい。

余裕が無くなって、取り乱した私を見せてあげられなくて。

ユーリ。あなたのおかげで私と彼の絆はより深くなった。

もう私は揺るがない。


1週間前、あなたの薬を見て泣き崩れた私を抱きしめ、彼は精神安定の魔法を使って落ち着かせてくれた。

本来、内科棟の『看護士』『医者』が使える魔法を彼が使ってくれたの。


驚いた私に彼は言った。

「リノア先生の為に何かできる事がないか神様にお願いしたら

『医者』に目覚めて使えるようになっていた」と。

でも先生と一緒の『プリースト』として頑張りたいから

先生と2人だけの秘密にして欲しいってお願いされた。


その後、彼は私を抱きしめて言ってくれた。

「内科棟のお給料が入ったらリノア先生にプレゼントを買いにいきます。

その時にもう一度、告白するから返事が欲しい」と。

私は嬉しくて、また泣き崩れてしまった。

もちろん、答えはyesだ。


しかも、私が心配で仕方ないから

住み込みの弟子になりたいと

サラさんにお願いしに行ってくれるみたい。



ふふふふふ、やっぱり彼は私の物。

師匠である前に私は女。

一緒に住むようになったら、流石に私も我慢できないからね。


まっ昼間から幸せな妄想に浸ってニヤけてしまう。

あぁ、私の事をこんなにも考えてくれる彼が愛おしい❤️



イオリ 10歳

職業:寄生虫LV5

擬態職業:プリーストLV5

熟練度:

寄生虫 LV5(209.01/500)

プリースト LV5(337.11/500)

魔女 LV1(69.25/100)

医者 LV1(5.59/100)

寄生先:2(2/2)

親密度:リノア(70/98)

   ユーリ(29/91)

スキル:寄生 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

浄化魔法(小) 火炎魔法(小) 精神異常耐性

精神安定(小) 解熱(微)



ステータス(↑プ+魔+寄)

HP 42/44(↑2)

MP 42/50(↑8)

体力 25(↑2)

力  19(↑0)

魔力 52(↑5)

精神 52(↑8)

速さ 23(↑2)

器用 29(↑3)

運  34(↑3)

寄生 14

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