第14話 リノアへの告白

◆リノア視点


ぁぁぁぁ…

イオリ君に幻滅されたかもしれない。


ユーリに騙され

悪魔の契約書にサインさせられた挙げ句

恥ずかしい過去をバラされ

頭に血が登り、全力で殺りにいった。


穏やかな乙女だったはずなのに…

彼もドン引きしただろう。。。


そして、例の魔導契約により

私と彼が2人で夜を過ごす日だ。


魔導契約は魂との契約。

強制的に契約を守らされる。


記念すべき初夜がユーリとの仁義なき闘いのせいで

気まずくて仕方ない。


「イオリ君、そろそろ部屋に行きましょう。。。」


ここは村の宿屋。

唯一空いていた部屋は

まさかのシングルベッド…


「シングルベッドですね。。。」


彼がボソッと呟く。

こんな落ちは求めていない…

本来なら喜ぶべきシングルベッドなのに

気まずさが増していく…


「リノア先生、先にお風呂どうぞ。

浸かられるようにお湯を入れてしまいますね。

僕はソファーで寝ますので、先生はベッドでお休み下さい。」

「ありがとう。イオリ君。

後で少しお話ししてもいいかしら?」

「はい、先生。

まずはゆっくりお風呂に浸かって来てください。」


鏡を見て驚いた。

顔と髪が血と泥で汚れている。

こんな顔でサインして貰いに行ったんだ…

イオリ君がお風呂を勧めてくる訳だ。。。


もうヤダ。私の心は沈んでいく。

治癒院をほったらかしにして、街を飛び出し、ユーリに騙されて、血塗れで泥だらけの闘い。


そう言えば、彼がお義父様の前で

「こんな素晴らしい女性は他にいません!」

って言ってくれてたなぁ。。。


昨日の話なのに、もう何年も前のように感じる…

もう私の順位なんて下から数えた方が早いのかな。

シクッ…シクッ…シクッ…

ダメ、また涙が溢れてくる。

昨日までが幸せ過ぎて自分が惨めになってきた…


この後、彼に全て話したら

明日、ユーリをこの世から抹殺して私も逝こう。


イオリ君、先に天国で待ってるからね。



「イオリ君、大事なお話しがあります。」

「はい、リノア先生。」

「今までイオリ君が頭を撫でられて気持ちいいって言ってたのは

私が使っていた魅了魔法のせいなの。

イオリ君が私の事を好きだって言ってくれてるのも魅了魔法の影響もあると思うの。

私はずっとイオリ君に魅了魔法を掛け続けて、気が付けば『魔女』が成長してた。

イオリ君に本当の事、言わなきゃって…

ずっと苦しかった…


イオリ君に…ヒグッ…嫌われたくなくて…ヒグッ…好かれたくて…ヒグッ…卑怯な真似をして…ヒグッ…本当にごめんなさい…ヒグッ…」


ぁぁ、言ってしまった。

これでもう私の元から彼は去っていくだろう。


後はユーリさえ抹殺すれば、この世にもう思い残す事はない。


「イオリぐん、今までありがどう…ヒグッ…ざようなら…ヒグッ…

もう寝るね。おやずみなざい…ヒグッ…」


私は一方的に話しを打ちきり、電気を消して横になった。


えっ?えっ?

イオリ君が布団の中に入ってくる。

そして、あの小さな身体で私を抱きしめてくれる。

「リノア先生、僕の温もりを感じますか?

僕は先生の温もりを感じています。

これから2人でいる時はシングルベッドがいいかもしれませんね。」

「イオリ君…」

「僕もリノア先生に伝えないといけないことがあります。

僕はリノア先生が魅了魔法を使っているのを知ってました。

でも、先生が僕を撫でてくれながら、魅了魔法をかけてくれると心が暖かくなって、とても心地よくなります。

これからも毎日僕の為に掛けてくれませんか?


それにリノア先生は忙しい中で、真摯に僕の為に尽くしてくれました。

初めて墓地で怨霊を退治しに行った時の事を覚えていますか?

リノア先生の背中に隠れて怖くて何もできない僕の為に、怨霊の攻撃を受けながら、僕が光魔法を放つまで盾になってくれました。

その時に僕は決めたんです。

今度はリノア先生を守れる男になりたいって。


まだ、10歳で頼りないのは理解しています。

頑張ってお金を稼ぐようになります。

2年後の学校も行くつもりはありません。

リノア先生に認められるように、すぐにでも働きたいからです。

何度でも言います。

リノア先生が大好きです。

僕と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」

「ヒグッ…ヒグッ…ヒグッ…」


私は嬉しさと驚きのあまり、涙が止まらず返事できなかった。


「リノア先生、返事はいつでも大丈夫です。

でも、先生が頷いてくれるまで諦めません。

覚悟してくださいね。」


ぁぁ、私の心が溶かされていく。

ここまで私を蕩けさせたんだから、ちゃんと責任を取ってね。

未来の旦那様❤️

もう彼無しでは生きていけない。


幸せな気持ちで私は眠りについた。




◆イオリ視点


今日から3人でパーティーを組んで冒険者をすることになった。

しかし、問題がある。

3人とも回復メインの職業なのだ。

壁もいない。アタッカーもいない。


仕方なく、俺の『プリースト』LV5に合わせ、低レベルの魔物でレベル上げを手伝ってもらうことになった。


しかし、ここでさらに深刻な問題が発生する。

リノア先生とユーリ先生の仲が異常に悪いのだ。

それはもう殺しあうくらいに。。。


さっきは魔物と連携して、リノア先生がユーリ先生を始末しようとしていた。

もちろん、混乱や魅了の状態異常ではない。

正気の状態?で…だ。

正確には混乱とバーサクがデフォルトで掛かった状態と言った方が正しいか。。。


ユーリ先生は遂に刀を抜いて斬りかかった。

もちろん、魔物にではない。

リノア先生に…だ。

リノア先生を殺る為に大金をはたいて買ったそうな。。。


今日1日掛けて倒した魔物は最弱級の魔物11匹。

俺1人でも倒せる。

しかも、周りの冷ややかな視線がこちらに向けられる。

魔物と協力して2人が殺りあってるのだ。

嫌でも注目を浴びてしまう。


しかも、怒りのあまり、四方八方に攻撃魔法を飛ばし続けるのだ。

周りからしたら迷惑でしかない。

平和な狩り場が混沌としている。。。


しかし、回復系と言えど高レベル帯が殺気を撒き散らし、暴れているのだ。

低レベル帯の俺達ではどうすることもできない。


お前がなんとかしろよ的な視線を向けられる。

やめてくれ。。。

俺が何とかして欲しいんだよっ!


言えない…

この人達に口が裂けても言えない…

このうちの1人にプロポーズしてしまったなんて。。。



ぁぁ、この2人を置いて治癒院に帰りたい。

魔導契約はあと1年と364日と8時間残っている。。。

自宅に帰りたい。

母さんが恋しい。。。


この後、昨日のリノア先生へのプロポーズは無かった事にして貰った。。。



職業:寄生虫LV5

擬態職業:プリーストLV5

熟練度:

寄生虫 LV5(209.01/500)

プリースト LV5(337.11/500)

魔女 LV1(69.25/100)

医者 LV1(5.59/100)

諜報員 LV0(0.85/50)

寄生先:2(2/2)

親密度:リノア(74/98)

   ユーリ(30/91)

スキル:寄生 回復魔法(微・小) 毒回復(小)

浄化魔法(小) 火炎魔法(小) 精神異常耐性

精神安定(小) 解熱(微)



ステータス(↑プ+魔+寄)

HP 44/44

MP 50/50

体力 25

力  19

魔力 52

精神 52

速さ 23

器用 29

運  34

寄生 14

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