第43話 ユリアの苦悩と村の発展1

◆ユリア視点


今、私はリノア様、ブランカ様、リーリア様の4人でアルル村に向かう馬車に揺られています。

村を離れたのはたった9日。

たった9日ではありましたが…とても濃い時間を屋敷で過ごしました。



未来の旦那様となるイオリ様との出会い。

とてもお優しく、あの柔らかい眼差しで見詰められると心がザワザワして落ち着きません。


私の1日は朝のアイテムの合成から始まります。

早く『錬金術士』として成長して、ご融資を返済し、村民の皆の生活を少しでも楽にできればと思っています。


昼間はダンジョンに『錬金術士』のレベル上げに行きますが、いつもイオリ様が一緒に付いてきて、私を見守って下さいます。

私が1度、魔物の攻撃を受けてしまった時、走って私の無事を確認し、傷を癒して下さいました。

あの時、この方が旦那様になるんだって嬉しくなりました。


夕方はブランカ様に勉強をお教えしています。

最初は怖い方なのかと思いましたが、とても優しくてすぐに仲良くなりました。

職業は『格闘家』『魔法剣士』。

私よりも年下なのに中級職を2つもお持ちです。

これから、修行も兼ねて、村の周りとダンジョンの魔物を減らしてくれるみたいです。

リノア様とブランカ様には本当に感謝の思いしかありません。


夜は…ユーリ様が訪ねてきます。

初日から体を迫られ、お断りしました。

でも、お姉様と呼ぶようにお約束させられました。



そして…次の日もユーリ様は私に迫ってきったのです。

私は怖くなって扉を閉め、ユーリ様を拒みました。

でも、それがユーリ様の怒りに火を付けたのです…。



「ユーリお姉様、今日はお会いしたくありません。」

「そう。レオ爺が大変みたいだから、ユリアに相談したかったのだけど、それじゃ、仕方無いわね。」

「えっ!?」


私は扉を開けて、ユーリ様に聞きました。

「レオ爺が、レオ爺はどうしたのですか!?」

「あはは、あら、私には会いたく無かったんじゃないの?」

「その…今日も迫られるのかと思って…」

「今日は迫るつもりは無かったんだけど…

ユリアに嫌われてるみたいだから、もう部屋に帰るわ。」

「えっ?…あのレオ爺は…」

「あら、ユリアは私を傷付けておいて、自分の聞きたいことだけ聞くのかしら?」

「ユーリお姉様…申し訳ございません。」

「教えてあげてもいいけど、誠意を見せてもらわないと…ね。」

「お姉様、誠意とはどうすればいいでしょうか?」

「あはは、自分で考えなさいと言いたいけど

今日の所は、私が送った下着を毎日着けるって約束すれば許してあげる。」


私は恐ろしくなりました。

ユーリ様から贈られてきた下着を着けたら最後、どこまでも迫られそうで。


「ユーリお姉様、それは…できれば…」

「あはは、そう。じゃ、私は帰るわね。

今ならレオ爺が助かるかもしれないのに。」

「えっ!どういことですか?

レオ爺がどうしたんですか!?」

「約束もせずに聞き出そうなんて、ユリアはそんなにズルい娘なの?」

「お姉様…お約束します。ですから、どうかレオ爺はどうなったのでしょうか?」

「あはははは、後で目の前で着けてもらうからね。」

「はい…お約束します。」

「レオ爺が血を吐いて倒れたみたいだわ。

私、心配でユリアの所に来たのに…」

「えっ…レオ爺が!

私、リノア様にお願いして、今から村に帰ります。」

「あははは、ねぇ、ユリア。

もっと良い方法があるわ。

これが何か分かるかしら?」


そう言って、ユーリ様は医療ポーション(大)を取り出されました。


「ユーリお姉様!お願いします!

どうか…どうかレオ爺にこれを…」

「えぇ、もちろんよ。

私もレオ爺が心配だもの。

だから、次からは私に歯向かわないと誓える?」

「それは…」


ユーリ様は渋った私の頬を平手打ちしたのです。

「キャッ」

「せっかくレオ爺を心配して持ってきたのに、あなたは自分のことばかり、もういいわ。好きになさい。」


ユーリ様はそう言って、自分の部屋にお戻りになろうとするのです。

ユーリ様を怒らせてしまった。

このままでは、レオ爺が…


「ユーリお姉様!誓います。

誓いますから、どうかお薬を…レオ爺を…」


私の瞳から涙がポロポロと溢れてきました。


「お願いします…どうか…

頼れるのはユーリお姉様だけなのです…」

「レオ爺が苦しんでるのにあなたは自分のワガママばかり言ってたわ。

だから、私は怒ったのよ。」

「はい、お姉様。私が、私が全て悪いのです…。」

「あはは、やっと素直になってくれたわね。

ユリア、最初から素直なら、私を怒らせずに済んだのに。」


そう言って、ユーリ様は私の頬をつねってきました。

「お姉様、痛い…」

「あはは、ねぇ、ユリア。

私を怒らせたら、次からはもっと酷いわよ。」

「はい、お姉様…。」


ユリア様はそう言って…村に薬を送って下さいました。


「さぁ、下着を約束通り、身に付けなさい。」

「はい。お姉様。洗面所で着替えて参ります。」

「ダメよ。ここで着替えなさい。」

「えっ…」

「私を怒らせた罰よ。」

「そんな…」

「ユリア、また私を怒らせたいの?」

「申し訳ございません。この場で着替えます。」


ヒィィッ…ユーリ様のねっとりした視線を感じます。

私には同じ女性を見詰める目には到底思えません。

まるで獲物を見詰めるような…


着替え終わった私を見てユーリ様を耳元で囁いてきます。

「あぁ…ユリア、とっても似合ってるわ。

何て綺麗な娘なのかしら…」

「ヒィッ…」


うっとりされているユーリ様を見て私は恐ろしくなりました。

逃げ出す事もできません。


「あはは、ユリア。そんなに怯えないで。

さぁ、慰めてあげるからおいでなさい。」


私は恐ろしくて震えています。

ユーリ様に呼ばれているのに、足が進みません。


「早く!」

「ヒィィッ…」


そう言って、立ち竦んだ私を、ユーリ様は自分から抱きしめにきました。

「あはは、こんなに怯えてしまって。

私も悪かったわ。反省してる。

だから、怯えないで。」


ユーリ様が私を優しく抱きしめ、頭を撫でてくれます。

最初は怖かったのですが、少しずつ落ち着いてきました。


「あのお姉様。ありがとうございます。

もう大丈夫です。」

「良かったわ。ユリア、怖がらせてごめんね。」

「いえ…ワガママな私が悪かったのです。」


ユーリ様と少し心が繋がったと思った時でした。

「今日はそろそろ部屋に戻ろうかしら。

さぁ、自分の下着を全て出しなさい。」

「え…?」

「あなたには私があげたもの以外は着ける必要はないの。

処分するから全て出しなさい。」

「そんな…何も捨てなくても…」

「そう。また、私に歯向かうのね。」

「ヒィッ…出します。

出しますので怒らないで下さい。」


下着を全て差し出し…この日は帰って行きました。

私はまた恐ろしくなって、涙が止まりません。


イオリ様…イオリ様…私を助けて下さい。



次の日の夜もやはりユーリ様は来られました。

扉を開けるのが怖くて…でも開けないと酷くて…

ユーリ様はその日もその次の日も村民の困ってる事を言ってくるのです…


タンジさんの腰が痛そうで見てられない。


ジュリアさんにお子さんがお産まれになったのにミルクが足りない。


ユアンさんにもう1本ポーションが必要。


畑を耕したいのに農具が壊れた。


家が壊れたせいでお布団が足りずに、寒い思いをしている。


ユーリ様の耳に言葉を傾ける度に、私はユーリ様にお願いせざるを得ませんでした。


その都度、ユーリ様は私に何かを求めてくるのです。

最初は嫌悪感しかなかったのに、段々、それに慣れてきている自分がいました。


そして、遂にユーリ様は私にキスをするように迫ってきました。


初めてはイオリ様と。


私はそう決めていました。

必死で拒む私にユーリ様は言ったのです。


「村民が困っているのに、あなたは自分のワガママを優先するのね。

そんな酷い領主なのに、みんなはあなたを信じて待ってるなんて…

あなたは英雄のご両親に胸を張れるのかしら?」


また涙が溢れてきました。


ぁぁ…イオリ様…申し訳ありません…

私の初めては、もうユーリ様に捧げるしか…



1度だけ…1度の過ちなら…

そう思いましたが

1度、唇を許すと何度も何度もユーリ様は求めてきました。


当然、私は拒絶しました。

しかし、そんな私を他所に言葉巧みに村民の困ってる事を伝えてくるのです。


それでも私が渋ると

領主として…村民の気持ちが…お父様とお母様が…

いつも逃げ切れずに許してしまいます。



そして、昨日…。

ユーリ様が屋敷に居られる最終日にそれは起こりました。

いつものようにキスを許してしまった私の口に

あろうことか、ユーリ様は舌を入れてきました。


私は驚き、ユーリ様を突き飛ばしてしまいます。

そんな私にユーリ様は言ったのです。


「あはは、ユリアは本当に良い身分ね。

村民の皆が困っているのに、まだこんなことも受け入れられないなんて。」

「ユーリお姉様!お話が違います。キスだけって…」


「あはは、ねぇ、ユリア。

村民の皆はね。贅沢もせずにあなたの事を信じて待ってるの。

あなたは領主として、何かしてあげたい。

喜ぶ顔が見たいと思わないのかしら?」


そんなの喜ぶ顔が見たいに決まってます。

その為に、私は…汚されながらも…耐えて来たのですから。


そんな私にユーリ様は囁きます。

「何か勘違いしていないかしら?

あなたが今まで村民の為に耐えたことは領主として最低限のことよ。

困ってる人を助けるのは当たり前のことでしょ?」


ぁ…ぁぁ…

これ以上、この人の言葉を聞いてはダメ。

本能がそう警告しています。


「ねぇ、可愛いミミやケンタに美味しいお菓子を食べて貰いたいと思わないの?

ねぇ、いつも笑顔でみんなを支えてくれるミーシャさんに綺麗な小物を贈りたいと思わないの?

ねぇ、いつも村の為に狩りをしてくれているロードさんに新しい弓をプレゼントしたいと思わないの?

ねぇ?ねぇ?ねぇ?」


ぁぁ…そんなの…やってあげたいに決まってます。


「あなたは村民の事を見てるようで見てないダメな領主なの。

ちゃんと理解できたかしら?」


一生懸命やってきたつもりなのに…

みんな…ごめんなさい…

また涙がポロポロとこぼれていきます。


「ほら、ここに皆が喜ぶプレゼントがあるわ。

ねぇ、これをプレゼントして、村民の皆を喜ばせてあげましょう。」


ぁ…ぁぁ…


「あはははは、さぁ、ユリア、こちらに来なさい。

どうするか分かるわね?

自分から求めてこないとダメよ。」

「あはは、えらいわ。ユリア。

キスが上手なのね。

私をこんなにもキュンキュンさせて❤️」

「これで皆が喜ぶ顔が見れるわね。

明日が楽しみね。

私は善い領主になれるって信じてるもの。」


こうして、私は自分からユーリ様の舌を何度も貪りました…。


イオリ様、ごめんなさい…。

そして、早く私を助け出して下さい…。

もう自力ではユーリ様から抜け出せないのかもしれません…。

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