第21話 これからのこと

 日曜が終わり、月曜になる。


 つまり……。


「ね、眠い」


(いくら普段規則正しく生活してても、この月曜だけはキツイよなぁ)


「うぅ……しかし、遅刻や欠席は内申点に響くし……がんばろ」


 俺は気合を入れてベットから出て、部屋を出ると……。


「兄さん、おはよう」

「おはよう、静香さん」


(相変わらず、きちんとしてるなぁ。すでにセーラー服に着替えてるし、髪型も……アレ?)


「今日は髪型違うんだね?」

「えっ? う、うん……変かな?」

「い、いや! よく似合ってると思う!」


 いつもは下ろしていたり、サイドテールが多いんだけど……。

 ポニーテールである、そうポニーテールですね。

 男子高校生憧れの髪型の上位ランキングですね。

 つまり……はい、朝から眼福です。


「そ、そう? なら良かった」

「えっと?」

「べ、別に兄さんに褒められたから良かったってことじゃなくて……バイトの時にポニーテールか、もしくは髪をまとめることはできるか?って聞かれて」


(……ああ、そういう意味か。アブナイアブナイ、勘違い男は痛いからね)


「確かに、髪の毛が入ったらまずいからね」

「切った方が良いのかな?」

「どうだろ? でも、別に他の人も長いから平気だと思う。それに……」

「兄さん?」

「似合ってるから勿体ないかなぁなんて……」

「へっ?」

「い、いや! いけね! 遅刻しちゃう!」


 俺は照れ臭いのと、ガチで遅刻しそうなので急ぐことにする。





 俺が手早く済ませると、彼女はすでにテーブルの上に料理を置いていた。


 そして、今日も美味しい朝ごはんを頂いた……めっちゃ贅沢だよなぁ。


(客観的に見たら、ただ好きな女の子と二人きりで朝ごはんだもんなぁ……)


「兄さん? 私、行くからね?」

「あ、ああ、いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」


(そんなこと考えてる場合じゃないな。洗い物して、俺も急がないと)







 そして、何とか遅刻をすることなく学校に到着する。


 すると、席に着くなりトシが話しかけてくる。


「よっ、ギリギリだな? 珍しいじゃん」

「まあね……少し、本を読みすぎてな」

「なんだなんだ、面白いものでも見つけたか?」

「いや、実は……」


(あれ? 別にこれは話しても問題ないよね?)


「なんだ? ……エロいやつか?」

「ち、違うしっ!」


(ばかやろー! となりに静香さんがいるんだぞ!?)


「じゃあ、なんだよ?」

「……文庫本だよ、挿絵がないタイプの」

「へぇ? 敬遠してたじゃん」

「まあ……ね。でも、読んでみたら面白くてさ」

「じゃあ、俺にも貸してくれよ。というか、今度の休みに家に行っても良いか?」

「……はっ?」


(いやいや! 待て待て! 今、来たら……)


 俺は視線を感じ、そちらを見ると……静香さんと目が合う。

 そして、一瞬だけ首を横に振る。


「ん? 何かまずいのか? お前一人だろ?」


(トシは、この学校では唯一俺の事情を知っている。以前にも来たことはあったが、最近は部活もあって、遊ぶとしても基本的に外だった……しくった)


「あ、あのな……今度の休みはバイトが忙しくてな」

「相変わらずバイトづくしか。まあ、良いや。じゃあ、月のシフトを組む前に連絡くれよ。そしたら、合わせるからよ」

「お、おう……」


 その時——ガラガラと扉が開く。


「おはよーさん。さて……よし、欠席者はなしと。諸君、先生のために頑張ってくれな」

「自分のためかよ!?」

「先生! 嘘でも生徒のためって言ってください!」

「はいはい、今日も生徒のために頑張りますよ」

「「超棒読み」」


(……どうする? いずれ、部屋に呼ばなくてはいけなくなる……ということは、静香さんがいることがバレる……いや、その日だけ出かけてもらって……悪いよなぁ)







 その日の授業を終えて、俺が家に帰ると……。


「兄さん」


 玄関の前で静香さんが腕組みをして待っていた。


(お、おっぱいが押し上げられてえらいことになってる……気づいてない?)


「兄さん? 聞いてるの?」

「ご、ごめんなさい!」

「もう、謝らなくても良いけど……ほら、上がって。少しお話しましょう?」

「は、はい」


(おっぱい見ていることがバレたか……こりゃ、土下座でもするしかないかな)




 大人しく、リビングのテーブルに着く。


「兄さん、鈴木君についてなんだけど」

「あっ、そっちか」

「えっ?」

「う、ううん! ごめんね、俺が迂闊だったね」

「そんなことはない。それに、いずれ出てくる問題ではあったもの。私だって、何人かの友達に聞かれるし。それに一人だけ元中で仲の良い子がいるから、その子にはいずれ伝えたいと思ってるの」

「そうなんだ、俺の知ってる人?」

「どうだろ?理系の子だし知らないかも。藤本理沙っていうんだけど……」

「……あれ? 何処かで聞いたことあるような……」

「まあ、元気で目立つ子ではあるから。もしかしたら、見ればわかるかも」


(ふむ……どこで聞いたんだろ?)


「そっか……それで、どうしよう?」

「流石に勝手に部屋を漁るような人じゃないよね?」

「ああ、トシはそういう奴じゃないかな」

「じゃあ、来る日はそれぞれ出かけるってことで良いかな?」

「わかった。お互いにするなら不公平じゃないね」


 こうして話はまとまったが……。


 いつまでも隠しきれるものでもないし、いずれにしろ考えないといけないよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る