第2話父親の再婚話
あれから数日が過ぎ……。
少しは傷が癒え……てはないが、どうにか持ち直した。
春休みということもあり、学校に行かなくて良いのが救いだった。
「まあ、振られることは前提だったし」
だからクラス替えの前に告白をして……。
もし振られても、教室で気まずくならないように。
「こんな逃げの姿勢じゃ上手くいくわけないよな……ハァ」
俺が落ち込んでいると……ノックの音が聞こえる。
「春馬? 今平気か?」
どうやら、父親が仕事から帰ってきたらしい。
「うん? ああ、平気だよ」
ガチャっと音を立てて、父親が入ってくる。
「お帰り、親父。どうしたの?」
「いや……そのだな……」
「うん?」
もしや、深夜にエロDVDを見ていることがバレたか!?
もしくは、秘蔵のコレクションの隠し場所か!?
「お前に大事な話がある」
「お、おう……なんでも言ってくれよ。たった二人の親子じゃないか」
よし、覚悟を決めよう。
親父が借りたいというなら、喜んで貸してあげよう。
母さんが出て行ってから女っ気のない親父のためだ、恥を忍んで貸すとしよう。
「そうか、そう言ってくれるか。俺は、良い息子を持ったなぁ」
「ん? ……珍しいね、酔っ払ってる?」
若干酒臭いし、少し顔が赤い。
母さんが出て行った時に酒に溺れて、ひどい状態になって……。
それからは酒をやめていたのに……。
「す、すまん」
「いや、たまには良いでしょ。何かあったの?」
俺は姿勢を正して、きちんと話を聞く態勢に入る。
リストラか? 転勤か? どんとこい!
「……再婚したいと思ってる」
「サイコン? ……再婚!?」
「だ、ダメか?」
「えっ? いや、待って……ダメではない」
弱気な親父の顔を見たら、意外とすんなり言葉が出た。
ほんとは、あんな目に遭ったのにとか言いたいけど……。
もう四年も経つし……親父が幸せになるなら良いだろう。
「ほ、ほんとか!?」
「うん、親父が幸せになるなら良いよ。俺も、気に入られるように頑張るからさ」
そうだ、親父は男手一つで育ててくれた。
これからは、俺が親父の幸せを手伝う番だ。
「春馬ァァァ!」
「酒臭っ!? 抱きつくなよ!?」
俺よりガタイもいいし、身長差があるから重い!
なんとか引き剥がし、話をうながす。
「ウォォォ……ありがとな」
「はいはい、俺のことは気にしないで良いよ。それで、どんな人なの?」
「う、うむ……綺麗な方だ。優しくて、ほんわかしてて……心が休まるんだ」
「そっか、なら良かったね」
母親はヒステリックで、すぐに怒る人だったからなぁ。
「それで、一度会って欲しいんだ。それで、お前がもし嫌なら言って欲しい」
真剣な表情で、親父が見つめてくる。
……これは、俺が嫌だって言ったらやめるな。
「わかった。でも、嫌だって言うことはないよ。親父が決めた人なら」
「春馬……ありがとう」
「うん、だから決めちゃって良いよ」
「わかった……おそらく、来週には会えるはずだ」
そう言い、親父は部屋から出て行った。
俺はベットに横になって……。
「そっか……再婚かぁ。少し羨ましいかも」
俺は振られたから、ほんの少し複雑だけど……。
まあ、親父が幸せなら良いかな。
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