第5話同居生活の始まり
それからの日々は大変だった。
男二人暮らしのマンション暮らし……。
単純明快——物凄く汚なかった。
埃が舞う中、拭き掃除や、キッチンを磨いたり……。
特に、トイレとお風呂は入念に掃除した。
そして、お昼過ぎに……何とか迎える準備が整った。
「よし、これで平気だろう」
ちなみにエロいモノは、全てデータ化してある。
自前のパソコンなので、見られる心配はない。
悲しいが、紙媒体の本は全て処分、もしくは友人にあげた。
あんなの見られたら……一巻の終わりだ。
家庭内でも、学校内でも……死んだようなものだ。
「さて、そろそろ……おっ、来たか」
「は、春馬! き、来たぞ!?」
「親父、落ち着いて。大丈夫、抜かりはないはず……多分」
「へ、変なものないよな!?」
「平気だよ、それより早く出た方が良いんじゃない?」
「そ、そうだった……!」
ドタドタと、親父は玄関に向かっていく。
全く……子供みたいにはしゃいで。
でも、ずっと楽しそうだ……よし、親父の幸せ家族計画に付き合うとしますか。
俺も部屋を出てみると……。
「あら〜春馬君」
「どうも、由美さん……中村さん」
「どうも、兄さん……家の中では、静香で良いわよ」
……ハードル高けぇぇ!
好きだった子を呼び捨てにするとか……。
彼氏になったらしたいと思っていたことが、こんな形で叶うとは……。
「わかった……静香さんで良いかな?」
「う、うん……」
「ふふ〜二人とも照れちゃって可愛い!」
「うんうん! 仲良くしてくれて嬉しいな!」
は、恥ずい! た、耐えろ! これも、二人のためだっ!
ひとまず、リビングのテーブルについて、話し合うことにする。
「へぇ〜綺麗にしてるのね! ねっ、静香!」
「そうね……うん、綺麗だと思う」
……ほっ、頑張った甲斐があったな。
どうやら、及第点をもらえたらしい。
「えっと、まずは見取り図がこれです」
俺はテーブルの上に、我が家の見取り図を置く。
何故か知らないが、親父が俺に頼んできたので説明をする。
「まずは、我が家は3LDKとなってます」
「あら〜聞いてたけど、広いのね」
「元々は……」
「兄さん、気を使わないで良いわよ、その辺りのことは」
「そっか……まあ、元々は母親が住んでいて……子供がもう一人いる予定だったんです。なので広いリビングがあって……広い部屋が一つ、小さめの部屋が二つあります」
「なるほど〜私は、その広い部屋ってことかしら?」
「親父、それで良いんだよな?」
「ああ、そういうことだ。幸い、俺は趣味らしい趣味もないしな。スペースは確保できる」
「というわけです……それで、残りの部屋で真ん中を静香さんに使ってもらいます。そして一番手前が俺の部屋ですね。すでにダンボールは置いてありますから」
「わかったわ。兄さん、運んでくれてありがとう」
「いえいえ、大した量じゃなかったしね。さて……トイレは玄関近くに、お風呂場はその反対に。鍵もあるのでご安心下さい」
実は壊れてたんだけど……男しかいないから気にしなかった。
良かったよ、気づいて……覗いちゃったなんてなったら……恐ろしい。
あれが許されるのは、フィクションの世界だけだ。
「ベランダもそこそこの広さがあります。十階建ての十階なので、景色はオススメです。しかも角部屋になっております。エレベーターもあるので、移動は楽ちんですね」
「お父さん、頑張りましたよ……本当に」
本当だよな……値段的に一番高い部屋だし。
母親が無理を言って、買ったってらしいが……。
「最寄りの駅から徒歩で十五分ですし、駅前には商店街もあります。買い物は大体の物が揃うでしょう……以上を以て、部屋と近隣のプレゼンを終了とさせていただきます」
「ふふ、とってもわかりやすかったわ」
「ええ、そうね。そして、物凄く好条件だし。お、お父さん、ありがとうございます」
彼女は少し照れながら言った。
「あ、ああ……」
「おい、何動揺してんの?」
「し、仕方ないだろう!?」
「ふふ、じゃあ私も呼んでもらおうかしら……ダメ?」
は、恥ずかしいが……ええい! 頑張れ! 俺!
「お、お母さん……」
「あら〜嬉しい……でも、無理はしないで良いからね? 普段は、由美さんでいいから」
「は、はい」
(正直言って助かった……少々きつい)
「静香ちゃんも、無理に呼ばなくていいからね。慣れるまでは、普通でいいから」
「は、はい」
その時、彼女と目が合う。
……多分、同じことを思ったのだろうなぁ。
その後、俺が静香さんを案内する。
「ここが、静香さんの部屋だよ」
六畳一間の部屋で、クローゼットもある。
「うわぁ……自分の部屋」
「うん?」
「私、自分の部屋がなくて……狭いアパート暮らしで。改めて感謝しないとね」
「そっか……まあ、俺が言うのもなんだけど、好きに使っていいから」
「うん、ありがとう」
「ただ、エアコンはまだないから。親父が夏前にはつけるって」
「そ、そんな! 悪いわ!」
「親父がつけたいんだって。まあ、気にしないで。家族になるんでしょ?」
「そう……うん、そうね。でも、きちんとしないとね」
……律儀な性格してるんだな。
それにしても……うん、さっさと出よう。
「じゃあ、俺は部屋に戻るから。何かあれば呼んでね」
「ええ、ありがとう」
俺は悟られないように、部屋を出て行く。
(ふぅ……すでに、部屋の香りが俺の知ってるものじゃない)
急ぎ足で自分の部屋に入り、ベットに横になる。
「なんだ? あの甘い香り……やばいだろ」
どうやら……前途多難のようである。
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