第41話 変わる日常?
……何が目的だったんだろう?
俺に彼女がいるとか、好きな人がいるとか……。
とりあえず、静香さんの親友らしいから……。
何とか砕けた口調を心掛けてたけど……。
あの時、喉が渇いて仕方がなかった。
でも、面白いし良い子なのは間違いなさそだ。
静香さんが家に呼びやすいように、俺も頑張って仲良くならないと。
それから一週間は、勉強とバイトの日々が続き……。
五月も中旬になり、いよいよテスト期間が近づく。
「おっす、春馬」
「おはよ、トシ」
「春馬は、テストまでバイトはどうするんだ?」
「一応、やる予定かな。流石に、三日前からとテスト期間中は休むけど」
俺はやっても良かったけど、店長に休めって言われてしまった。
学生の本分を忘れるなって……店長は高校に行きたかったけど行けなかったらしい。
確か、小さい妹と弟がいたからとか言ってたっけ。
「そりゃ、そうだ」
「そっちは? 部活はいつまで?」
「一応、一週間前から休みだな」
「ということは、テスト勉強はその辺りで?」
「ああ、頼むわ。来週から、お前の家に行って良いか?」
ということは……いい加減、静香さんのこと伝えないとな。
ただ、トシも静香さんの事情を知ってるみたいだったから……。
そこだけが、少し気になるけど……深い意味はない。
「ああ、わかった。じゃあ、来週の月曜から来ていいよ」
「おっ! サンキュー! 恩にきる!」
「良いよ、俺だって助かってるし」
トシがいるおかげで、俺はぼっち回避が出来ているし。
友達がたくさん欲しいとは思わないけど、流石にひとりぼっちは寂しいし。
そこで吉野先生が入ってきて……ホームルームが始まる。
休み時間は、俺にとって心地よい時間だ。
トシは他の連中と話しているし、クラスのみんなは話しかけてこないし。
幸い、イジメらしい扱いは受けていないので……。
いや、悪口は言われたりしてるかもだけど……。
暗いとか、いつも本読んでるとか、友達いなそうとか……。
うん……まあ、概ね平和な時間を過ごせている。
昨日までは……。
俺がいつも通り、パンを買いに行こうとすると……。
「篠崎君〜!」
「……藤本さん?」
何故、この教室に?
そして、なんで俺を呼んでいるの?
「あれって、藤本さんじゃ?」
「可愛いって有名だよな?」
「中村さんと仲良いって聞いたことはあるけど……」
教室がざわつき始め、視線が俺に集まる。
俺はとっさに静香さんに視線を向けると……。
「……パクパク……」
口を開けて、ポカンとしてしまっている。
どうやら、静香さんも知らなかったらしい。
「仕方ないか」
俺は席を立って、藤本さんの元に向かう。
「ど、どうしたの? 中村さんに用?」
「ううん、違うよー。お昼、一緒に食べようかと思って」
「はい? ……俺と?」
「うん、そう……ダメかな?」
意図が読めない……上目遣いしてるし。
この子は頭が良さそうだし、空気読めるタイプなはず。
何か、考えがあるんだろうか?
「ダメってことはないけど……」
「じゃあ、いこ!」
「ちょっ!?」
手を引っ張られて、どんどんと先に進んでいく。
当たり前なことに、生徒たちの視線が集まってくる。
そのまま、購買のパンを買って……。
校庭のベンチに連れていかれた。
「はぁ……」
「ごめんねー。目立ちたくないんだっけ?」
「そうだね。平穏に過ごしたいから」
「でも、静香と同じ教室で……いずれ、そうもいかなくなるよ?」
……痛いところを突くなぁ。
考えないようにしてたけど……いずれ、何処かでバレるだろう。
トシだって、変に思ってたし。
そしたら、今以上に目立つことは間違いない。
「ふふーん、どうやら理解はしてるみたいだね!」
「まあ、一応ね……それが目的?」
「それもあるかなー。それに私と仲良くしてたら、静香と話しても違和感減るでしょ? そしたら、バレるのも防げるかなーって」
なるほど……隣の席で、あまりに話さないのも不自然かもしれないか。
「そういうことか……」
「もしバレたとしても、それはそれで助けようがあるしね」
「それは心強いな」
なにより、静香さんの味方がいるのが心強い。
男の俺は、何を言われようが構わないけど……女の子は、色々と怖いって聞くし。
「というわけで、これからは一緒にお昼ご飯を食べよー!」
「は、はい?」
「そんで、そこに静香を呼んじゃおう作戦です!」
「はい?」
ダメだ! 全然ついていけない!
これが今時の女子なのか!?
「そしたら、私と君が仲良くて、静香が付き合ってあげてるって形になるでしょ?」
「……それに、何の意味が?」
「あら、気付いちゃったかぁ〜。うーん、どうしようかなぁ……まあ、これを伝えるのはアリとしますか」
「えっと? 全然話がわからないんだけど……」
あれ? 俺の頭が悪いのか?
「つまりは、静香はお弁当を作りたいってことです!」
「……作ってるけど?」
「もう! 鈍感さん! 君のお弁当に決まってるじゃん!」
「へっ? ……俺の?」
「ほら! 食べないと休み時間終わっちゃうよ! 詳しいことは本人に聞いて!」
「わ、わかった」
全然わかってないけど!
だが、時間がないのは事実なので……。
俺は急いでパンを食べるのだった……。
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