第50話 いざこざ
そして、翌日の昼休み……。
「ヤッホー! きたよー!」
「はいはい、わかったわよ」
「トシ、食べよう」
「お、おう」
……やばい、めっちゃ見られてる。
流石に四人なので、ベンチで食べる訳にはいかず……。
机をくっつけて、二対二で向き合って教室で食べてるけど……視線が痛い。
「おい、平気か?」
「う、うん」
「どうしたの?」
「に……篠崎君は、あんまり慣れてないのよ。というか、私もだけど」
おいおい? 今危なかったぞ?
確かに、トシと藤本さんは知ってるから良いけど……。
「そうなの? えっと、鈴木君だっけ?」
「ん? どうかしたか?」
「よろしくね!」
「あ、ああ、よろしく」
……だめだ、トシも使い物にならない。
ずっと目が泳いでるし……。
結局、藤本さんの怒涛のお話に……俺たちは頷くしかなかった。
それから数日が過ぎ……。
「それでね!」
「へぇ! そうなのか」
「ふふ、おかしいわね」
「なるほど」
どうにか、トシも慣れてきて……。
俺たち四人は、自然と昼ご飯を食べれるようになる。
ただ……相変わらず、視線がすごい……特に一部の人たちが。
はぁ……何も起こらないと良いけど。
そういう訳にはいかなかったみたい……。
隣同士の人が日直担当で、今日が俺と静香さんだった。
そして、帰る頃に静香さんに近寄ってくる人物が……。
「なあ、アンタ」
「中村さん? ちょっと良い?」
「……ええ、良いわよ」
確か……横澤と佐々木だっけ?
如何にもな、今時の女子って感じだけど……。
その女の子二人に、静香さんがついていく。
教室を出るときに……一瞬だけ、俺を見ながら。
「あの表情は……大丈夫ってことか?」
でも……あんまり口達者な訳じゃないし。
人見知りが発動して、攻撃的になっちゃうタイプだし。
「どうする?」
トシもいないし……俺に何ができる?
「いや……そういうことじゃないか」
何ができるではなく……どうしたいかだ。
「そんなのは決まってる」
好きな人……妹を守るのは、兄の役目だ。
そう決めた俺は、急いで後を追うのだった。
◇
……参ったわ。
少し、浮かれちゃってたなぁ。
学校でも、兄さんと一緒に居られるから……。
「ねえ、聞いてる?」
「アンタさぁ……調子乗ってる?」
「いえ、そんなことないわ」
茶髪の方が佐々木さんで……金髪の方が横澤さんよね。
あまり話すタイプじゃないから、よくわからないけど。
ただ……中学時代も、こういうタイプには嫌われてきた。
良い子ちゃんだとか……可愛いからって調子に乗るなって。
高校に入ってからは目立たないようにしてたんだけど……。
「じゃあ、あれは何?」
「教室でぎゃあぎゃあ騒いでるけど?」
「そうかしら? 貴女達の方が、よっぽど騒がしいと思うけど……」
いつもいつも、教室の前の方で騒いでるし。
声も大きいし、内容も……あんまり、聞いてて楽しいものじゃないもん。
居心地悪そうにしてる子達もいるのに……。
「はぁ?」
「何言ってんの? あたし達は良いんだよ」
「そうそう、そういう特権があるからさぁ」
「何を言ってるの? そんな特権ないわよ?」
カースト制だが何だか知らないけど……。
ほんと、こういうのにはうんざりしちゃうなぁ。
「っ……ねえ、良い加減にしときなよ?」
「そうそう、謝れば許してあげるからさ」
「何故かしら? 私は悪いことしてないわ」
声だって、そんなに大きくしてないし……。
教室の端っこの方で、自分達の席を使ってたし。
それに比べて、この人達は……我が物顔で、いつも教室の中央を陣取ってる。
それで自分の席がなくて、困ってる子達もいるのに。
「へぇ? ……せっかく、大人しくしてたから見逃してたのに」
「痛い目に見ないとわからないんだ?」
そう言って、ジリジリと近寄ってくる……。
大丈夫……痛いのには慣れてるから。
私は歯を食いしばって……その時を待っていたら……。
「あっ、ここにいたんだ」
「し、篠崎君?」
「はい? 何、アンタ」
「陰キャが何の用?」
に、兄さん!? どうして!?
来ないでって、視線を送ったのに……。
「陰キャねぇ……それは、君達の物差しだろ? 俺は普通だよ」
「はぁ?」
「何言ってんの? というか、何しにきたの?」
「あれれー? 一緒に食べてるから気にはなってたけど……好きとか?」
「あははー! まじウケる!」
……やめてよ! もう! どうしてこんなるの!?
「好きだけど何か?」
「「は?」」
「ふえっ!?」
「というか、付き合ってるし。彼女が絡まれてるのに助けない方がおかしいだろ?」
「「………」」
その言葉に、二人……いや、三人が固まります。
「し、篠崎君?」
「平気? ほら、行こう」
「う、うん……」
兄さんに手を引かれ、その場を離れようとすると……。
「ちょっと!?」
「待ちなさいよ!」
「さっきの会話と映像は撮ってあるから」
「「なっ!?」」
「もし、何かあれば……わかるよね?」
「くっ……」
「ちっ……」
二人は悔しそうに俯いて……去っていく。
「ほら、帰るよ」
「は、はぃ……」
絡まれたとか、どうでも良くなっちゃった……。
そんなことより、私の心臓は張り裂けそうになっていた……。
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