概要
水を守れ。血を繋げ。
「不羈なる我が一族よ、闘え。己が手で愛する者たちを守り抜け」
人々に天として崇められる『黎泉《れいせん》』により与えられた泉を礎として九つの国が並び立つ大泉地。その一つ、古来から薬泉によって栄える長寿大国・四泉の気弱な少年王・沙爽《さそう》は、妹の叛逆と隣国二泉の侵攻に遭い、その力を試されていた。
臣下の暎景《えいけい》、茅巻《ぼうけん》とたった三人で国を離れる。自国の荒廃を憂えて国と国とを隔てる毒霧のなかを進み、夷狄として人々から畏怖され敬遠される諜報斥候一族、牙族に助けを求める。
泉の国の少年王と夷狄の王が共に戦う中華風異世界ファンタジー。
総文字数約44万7,000字
【九泉伝】
≪Kyusenden≫≪Koyu-Roen≫
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人間味溢れる者たちの宿命が奥深い世界観を織りなす重厚な中華ファンタジー
圧倒的な漢字の渦に飲み込まれる心地よさをお求めなら、是非『九泉伝』を。
生きるために不可欠な水を供給する泉。その泉と運命を共にする少年王。
人にとって有毒である霧に包まれた山岳地帯に暮らす牙族を率いる美貌の族主。
城で手にあかぎれを作りながらせっせと働く族主の妹。
反乱を起こし、対立する国・二泉と共にある少年王の妹。
独裁的な二泉の王。
と、これら主要人物を取り巻く人物たちも含め、ここには書ききれないくらい沢山のキャラクターが皆しっかりとした個性を放っており、この時代を、これまでの歴史を、この世界に生きる人々を背負って地に足を着けて闘います。
激動の時代、そう呼ぶに相応しい舞台で、この…続きを読む - ★★★ Excellent!!!圧倒的な世界観と心地よい漢字のリズム
序章から、そのまま風景が目に浮かぶような漢字に埋め尽くされた圧倒的な表現に惹き込まれます。
硬質ですが、豊かな表現と心地よいリズムに、久しぶりに音楽を聞くように文章を読むだけでも心地よいと感じることができました。
一方で、中華風の世界を舞台に由霧という謎の瘴気や、どうやら泉が世界の中心で大きな役割を持っているらしいその世界観、謎めいた当主に、いまひとつ優柔不断ながらもだんだんとその本領を発揮する若者など、魅力的な登場人物たちが物語を彩ります。
戦の気配が色濃くなる中、その彼らがどんな風にその運命を切り開いていくのか、とても楽しみです。