三十七章



 一度経験があるとはいえ、やはりヒョウの疾駆する速さは体が置いてけぼりになりそうなほど平衡感覚を失わせる。しかし暎景と茅巻は野牛に乗った時よりも慣れるのが早かった。指示を出さずとも自らの意思で勝手に進むならば、騎上でしがみついておくだけで良かったからだ。


 小休止を挟みつつ走ること予定通り二日。沙爽軍は四泉と二泉の間の国境を進み、ろう州を過ぎてしゅ州に接する霧界のわだちに出た。

 霧界に接する国境とは多くは野獣や妖の類を寄せつけないため、また少しでも境をつくって由霧を忌避するために高い城壁を巡らせているものだが、街道が無く森の中に分け入る者もいない閑地などでは郷里まちを出て田畑から離れた木立からすぐに霧界へ続いていることが大半だった。


可弟かと、ご苦労だったな」

 山林の向こうに開けた仰坂げいはんの地を臨んだところで下りる。手綱たづなを解いてやりながら可弟の顎下を撫で、その脇では嘉唱かしょうがやれやれと言うように伸びをした。

「……お前の主は今も戦場にいるな……」

 沙爽は嘉唱に語りかけた。

「嘉唱、このまま戻るほうがお前たちにとってはいいのかもしれない。猋と主がどういう力関係なのかは私には計り知れないけれど、でもお前にとって牙公が大切な存在なのと同じく、きっと向こうもお前の力を必要としているんじゃないかと、私はそう思う」

 深遠な瞳で見遣ってきた獣はただ低く喉を鳴らした。そのままくるりと背を向けると、群れを引き連れて絶壁の岩肌を登り、霞む霧の彼方に隠れて消えた。



 沙爽らはそれを見送り徒歩で霧界を抜ける。急勾配の坂に沿って広がる田圃でんぽはようやく水が張られ、ちらほらと蛙の鳴き声が聞こえた。虫を狙って集まる鷺や鴨が人の姿をみとめて一斉に飛び立つ。空は雲が出ていたが垣間見えるのは青空、棚田の水鏡に映って美しかった。


 長閑な田園風景はまるで戦など起こってないかのよう、しかし、あまりにも牧歌的なそのを塗りつぶすように皮甲よろいを身に纏った兵が長い列をつくって閭門りょもんへと歩を進めた。


 門卒は何処からか突如現れた兵士たちに度肝を抜いたが、その頭上に掲げられた旌旗せいきを見てさらに腰を抜かした。沙汰は受けていたがまさかこんな森の中から軍がやって来るとは思ってもいなかったのである。慌てて伝令が下から上まで告げ知らされ、沙爽たちが門前に辿り着くころには扉は完全に開け放たれていた。


 民が野次馬で大路みちの左右に集まるなか、面覆いをつけた異様な戦士たちを従えた先頭には、銀の長髪の男女の区別もつかないような泉主が太守の出迎えを受け馬に乗る。街の者たちは王旗を見て驚愕し、少年が通り過ぎる前にさざなみのように一様に跪拝きはいした。額づきながらある者はその神秘的な容姿に心を奪われて畏怖し、またある者はなよなよと頼りなげな年若い君主に不安をおぼえて顔をしかめた。





 郡城に招かれた沙爽軍は太守以下仰坂の官からもてなしを受けた。


「馬が揃っていない?」


 太守に冷や汗を垂らされながら言われて、沙爽は思わず険を含んだ声で問い返した。申し訳ございません、と再び身を伏したほうはそのまま言を継ぐ。

「実は瀧州から街道を抜ける間に何者かの攻撃にったようで――おそらく二泉の手の者ですが、なんでも黒いよろいを着て蜚牛ひぎゅうに乗っていたとか。逃げ延びた者がそう申しておりました」

「蜚牛」

「北路で襲ってきた奴らか。瀧州で待ち伏せされていたようだな。結果として猋で走って良かったかもしれん」

 侈犧が盃を飲み干した。

「後続は阯阻しそから瀧州を通ってくる。知らせたほうがよくはないか」

「そうだな。鳥を飛ばそう」

「それで、集まった馬はどのくらいだ?」

 太守が書面を持って来させ目を通す。

「およそ四十ほどです」

「三分の二か……。侈犧どの、どうする」

「共に行軍するなら二十は仰坂で適当に見繕うしかないな。しかし騎馬じゃないなら走りに差が出る。後続と合流させるなら余分に連れて来る野牛でなんとかなる数だが」

「そうしよう」

「いいのか?四十で」

「どのみち姚綾ちょうりょうどのと合流するまでこちらから仕掛けはしない。少し遅れる程度なら万全の体勢を備えたほうがいい」

 同意して侈犧は頷いた。そういうわけで、沙爽軍はさらに四十を先行として北上することになった。


 仰坂は最南の郡郷ぐんごうの一とはいえ豊かな土地のようだった。城の窓から大きな仰坂泉のまわりを囲むようにして石造りの貯水塔が遠目に六、七つはそびえているのが見てとれた。おそらく三月みつきにわたる断水でもあれほどの数の貯水があればさほど困らなかっただろう。戦場からは距離があり、敵の籠城地にもされず本当に良かった、と沙爽は窓に腕をついて、ただぼんやりと塔が夜目に黒い影になるまで眺めていた。暝天にそれらはまるで小山のように見えたが、低い家々の灯りを少しばかり反射させて巨大な塑像が並んでいるふうにも見えた。光のいたずらか、根元からつるりと光線が蛇行して登っていくのが見えて、何気ないままそれを目で追った。

 なんだろう、とそのまま見ているとまた。二つの光蛇こうだは時折交差してまるで遊んでいるように軽やかに上昇し、塔の天辺まで辿り着くとすいと消えた。

 目をこすった。昨晩は夜通し駆けたので疲れているのかもしれない。気が張り詰めていて眠れそうにないな、と思っていたが、起こされた時には窓辺に座り込んだままうたた寝していた。



「四泉主。悪いけどちょっと来てくれない」

 肩を揺さぶった徼火きょうかがまだ寝惚けている沙爽に褂裴うわぎを放る。風に当たったままだったので体が冷えていた。

「いま、何刻なんじだ?」

「まだ初更しょこうにもなってないわよ。いいから来て」

「なにか変事か」

 一気に眠気が醒めて徼火に続き階下へ降り、仰坂城内の院子なかにわ中央、環泉かんせんを引いた溜池までやってきた。引いた、といっても水は小さな吹き抜けの天井から轟音を立てて流れ落ちる人工の小瀑布であり、その水は床より一段低い石組みの水盆に飛沫を散らして流れ落ちているのだった。


 場にはすでに侈犧とそれに仰坂都水官とすいかんの長とおぼしき男、そして水の溢れる池の中に、二人の子供が浮いていた。


 ひどく奇妙な幼子だった。見た目はおおよそ三、四つほど、びしょ濡れで肩までを水に浸かり、結っておらず肌に張りついた長い髪は燃えるように赤かった。目から下は牙族のように面紗ふくめんをしていて、垂れた布端をうなじでひとつにめている。それが瓜二つ共に並び、泉の色とおなじ瞳がじっと沙爽を見つめていた。


 遅れて慌てて駆け込んできた太守が濡れた石床にひざまずく。


水虎すいこ様」


 呼びかけに沙爽は子供をまじまじと見た。

「ちょっと待ってくれ。水虎とは、あの水虎か?」

「なんだ孩子ぼうず。泉国に住んでいて見たことねぇのか?」

「いや、私の知っている水虎はもっとかわうそのようなやつだぞ」

 詳細に言うと獺の顔と鱗のある胴尾を持つ小ぶりな水妖だ。少なくとも人ではない。これはどういうことかと池の中の彼らを凝視した。

「それは昼の姿だ。夜は人型をとる」

「そうなのか⁉」

 なおも驚きに包まれているあいだに、二頭の水虎は水音をさせて池から上がってきた。


 全身を見ると異形であるのがよく分かる。水と髪に隠れて見えなかったが、人の姿でも長い尾はそのままで、胸と腹以外は昼のかたちと同じく鯪鯉せんざんこうのような鱗で覆われていた。特異なのはそれだけではない。膝には虎の爪のようなものが生え、腕はすねまで届くほど。手の先は五つに分かれてはいたものの薄膜の水かきを有し、人ならざるたか趾先つまさきが鋭利に伸びていた。


 水虎の片方が沙爽の目の前まで近づくと髪と同色の面紗の下で口を開いた。

御身おんみハ沙爽鼎添であらしゃルか」

 いとけない小童の声だった。

「しゃべった……」

 水虎は首を傾け、再度同じ言を問う。沙爽はまだ戸惑いつつも是と返す。

「儂は山柏さんはくから来タ」

「山柏……葉州から」

 山柏水虎はつるりと光る鱗尾を波打たせた。

言伝ことづてヲ受けた。牙紅珥懿より、『陣をくなラ穫司にせヨ』」

「……え?牙公?」

「しかと伝えタ」

 それだけ言うと、山柏水虎は池に戻る。仰坂水虎と共に頭半分を水に浮かせて漂った。

「……一体どういうことだ?」

 困惑して侈犧に問うと、彼は後ろ頭に両手を当てて考えるようにする。

「おそらく種州と葉州の合間か、山柏の周囲にはまだ伏兵がいる。鳥が落とされているとみていい。だから山柏水虎を遣わしたんだ」

「では、こちらからの伝鳩も届いていないと?」

「今の内容だとそう考えるのが自然だな。しかし孩子が出てくるという当主の読みは当たった。どうやって仰坂だと分かったのかは知らないが」

「布陣を穫司にと言っていたが、燕麦らと合流しろということだな?では西をがら空きにせよと?」

 そうなるが、と侈犧は唸る。姚綾軍の半分はすでに穫司を出ている。

「侈犧どの、穫司まで移動していたらその間に悠浪平原の争いが本格化してしまう。それに、いつまでも瓉明の後ろに隠れるわけにはいかない。西から距離を詰めて二泉を挟撃する」

 言い募られてしばらく思案していたが、やがて頷いた。

「ま、今の俺の大将は孩子だからな。種州から金州への道は敵もいないようだし、まずくなりゃすぐ穫司まで退さがればいいか」



 それで当初の予定通り沙爽以下四十騎は翌朝仰坂を出発し北上した。速駆けること六日、種州の州境を隔てて悠浪平原を東に臨む團供だんきょうで姚綾軍と無事に合流した。



「姚綾どの」

「四泉主、ご健勝そうでなにより。丞必から仔細は聞いた。しかし勝手をする、猋を動かしたと」

 姚綾も驚きを隠せないのか沙爽をためつすがめつした。

「ああ、連れて来てもらった。それより、燕麦は」

「穫司城で引き続き儀同三司ぎどうさんしとしておわします」

「悠浪がいまどうなっているか把握しているだろうか」

 姚綾は頷く。「小競り合いは何度も起きているが、どちらとも攻めきれておりませぬ。瓉明どのは要らぬ戦いをいとうておられるようだが」

「もはやそうは言ってられなくなった。長引けばそれだけ兵も疲弊する。それに、私がこうして来た」

 であろう、と姚綾も同意した。

「悠浪平原と金州の境にははく長城がある。二泉もあれを越えないかぎりは穫司には近づけぬ」

 依然、瓉明と高竺こうとくはその城壁にとどまっている。

「牙公はいまどんな状況だろう」

 それが、と今度は険しい顔をした。

「山柏から敵を追い出したものの、葉州にはいまだに二泉の伏兵が多くひそみ伝令がうまく繋がりませぬ。もしかすれば交戦中の斂文れんもんの助力に動いた可能性もあるが、我らにはまだ伝わってはおらぬ」

「二泉主と撫羊への接触は」

 それにも首を振られた。「奇妙な敵の噂を聞く。蜚牛に乗った黒鎧の者たち」

「四泉から牙領に戻る私を泡丘ほうきゅうで襲ってきた奴らだ。二泉の味方をしている」

「蜚牛なぞを飼い馴らすとは。螻羊ろうようといい、二泉は異形の獣をなぜそう易々と調教できるのか。厄介だ。当主のほうへ行っていないと良いが」

 沙爽も地図を見て嘆息した。

「ともかく、二泉主と撫羊は悠浪の本陣へ戻ったと言うわけだな。近々に総力戦があると考えていいだろうか」

「二泉のほうが敵地で長引けば苦しい。主が戻ったとなっては早々に白長城を攻めたいはずだ」

 二人は顔を見合わせて頷いた。

「私たちも開戦に合わせて二泉の退路を断つ」

「不利となれば自然、防備の薄い東か南に逃げてくる。当主が東に移動しているとしても山柏をもぬけがらにするはずはなし、二泉軍は完全に鳥籠のなか」

 包囲網が完成した。胸の高鳴りを感じる。改めて惜しみなく協力してくれる牙族に感謝の念が湧いた。

「そなたたちにはいくら頭を下げてもこの気持ちを表しきれない」

 沙爽は人生においてほぼしたことのない行為をしてみせた。

「非力な四泉の主として感謝申し上げる」

 姚綾はその旋毛つむじを見下ろして威厳のある顔をふくりと笑んでみせた。

「必ずや、勝鬨かちどきをあげてみせましょうぞ」

「ああ。絶対に」







 金州と葉州の境を隔てる白長城の元来の役割は、穫司を通って以南へとそそぐ大河川・甜江てんこうの最低水面よりも悠浪平原が低く盆地であることを危惧しての氾濫に対する防波堤である。加えて平原の土壌は緩く、間を通る江のほとりは護岸工事が定期的になされるも脆弱であることから、水害のおそれの際には他所への決壊を防ぐために逆に平原に水を流した。その逃がし水が金州へと溢れださない為に長城壁が築かれているのである。


 ゆえに城壁といっても対戦用ではなく、上歩道の狭い白い壁が東西に長く延びているだけのさして特徴のない塀である。おおむねそれはこの地を訪れた者にとっては名所として親しむ程度の存在として認知されていた。緑の平原に横たわる白い線は美称として地雲稜ちうんりょう白龍線はくりゅうせんなどとも呼ばれる。

 西の種州から見るとおおよそ総長の半分の長さしか見えない。壁はゆるやかに弧を描きながら中心点が張り出しているので、こちらから見ると向こう端が隠れるのだ。


 その線を地平に見ながら沙爽は團供の敵楼みはりだいで深呼吸をしていた。斥候によれば二泉軍がにわかにざわめきだしているという。長城に詰める四泉軍もそれを受け、手前に兵を配置しはじめたようだ。


「四泉主、こんなとこにいたのね」


 登ってきたのは徼火、戦いに備えた格好のはずが、甲冑ぼうぐといえば披膊かたあてのみで、いつもとそう変わらない。

「さすがに無防備ではないか?」

「あまり重いと野牛の負担になるし、機動力を活かせない。それにあたしは後方から援護する弓弩兵を率いるから、これくらいで十分」

 なんとも怖いもの知らずだ、と沙爽は微笑した。二人で遠くに霞む平原を見渡す。


「――徼火どの。桂州にいるあいだ、そなたが言っていたことを考えていた。自分の命よりも大切なものとはなんだろうかと」


 沙爽はあの囚われの数日間のときの黙想を語る。やがて相手は聴き終わり、なるほどね、と窓辺のへりに腰を下ろした。


「自分の命より優先するものを生きる根拠とする、か。間違ってはいない」

 でも、と徼火は括った薄い色の髪を風になびかせる。

「それは裏を返せば、それがくなったときには生きる意味もうしなうということだ。悪いとは言わないけど、あまりよろしくない考え方ね」

「なぜだ?」

「どんなに高尚な大義名分を立てたって、それは依存になるからよ。その関係が自他共に素晴らしいものなら文句はないけど、大抵はなにかに依存すれば正心せいしんを失くす。あたしは、そもそもあたしたちには生を受けた理由なんてのは無いと思ってる。人はただ生まれ落ち、生きている中で自分のありようを型にめ、理由付けしていくに過ぎない。何の目的のために生きるかということと、目的そのものを生きる根拠とするのは全く別のことだわ」

「よくわからない」

「例えば、あたしは当主の役に立って尽くすのが生き甲斐。珥懿さまを守り戦って死ねと言われれば喜んで討ち死にするけど、たとえ先に珥懿さまが死んでも後を追って自刎じふんしたりはしない。あの人の存在自体が、あたしの生きることそのものの意味ではないから」

「だが……四泉主の私が、四泉の命と同義だ」

「じゃあ、あなたが四泉主でなくなったら、あなたに存在価値はないってわけ?」

 沙爽は言葉を詰まらせた。

「……そうなる。おそらく、私が泉主でなくなるのは、私が死ぬ時だ。もはや私の価値は泉主であるか否かにかかっている」

 いきなり肩を掴まれて、驚いて徼火を見上げた。

「そうじゃない。たとえ泉主じゃなくなってあなたが死ぬとしても、『沙爽』という人間は無価値になったんじゃない。人間は、ただそこにる、確かに在った、ただそれだけでものなの。評価するのはいつだって自分と他者で、結局のところ価値無価値は後付けの定義に過ぎない」

「難しいことを言わないでくれ。私とはつまり沙爽で泉主、それは事実だろう。たとえ切り離して考えたとしても私とは私だけなのだから変わらない」

 徼火は根気強く言った。

「あたしがあなたに言ってるのはね、とても簡単なことよ。泉主としてのあなたじゃなくて、沙爽であるあなたに重きを置けってこと。あたしは『沙爽』に命より大事なものを見つけろと言った。そうしなければ、きっと『泉主の沙爽』に心の全てを奪われ、物の見方さえもそれに準じてしまうと思ったから。大事なものとは守るべきもの、失わせないためには死ぬわけにはいかないでしょ?」

 なおも難しい顔をして黙り込んだ少年に笑った。

「あたしは砂人さじんの血を引いていて、よく顔貌かおかたちを蔑まれた。どんなに聞得キコエの能が高かろうと所詮は砂人だと侮られた。そればかりにとらわれて『徼火』は死んでいってた。それを珥懿さまが救ってくれた。万騎として珥懿さまを守り戦うことは『聞得の徼火』を生かす根拠でもある」

「……そなたはふざけていそうでいつもそんな深いことを考えているのか?」

「考えざるを得なかったのよ。誰だって出自だけで穀潰ごくつぶしだと言われたら腹が立つでしょ?」

 肩を竦めたのにともかくも同意したが、身の内では冷えたものがうごめくのを感じた。彼の言説のもとで判じるならばやはり、泉主の命と泉の命運が連繋しているのは、目的も根拠も同一のものとしているということだ。泉根における継承権に関わること、践祚せんそ禅譲ぜんじょう、退位において定められた泉柱きまり、そこには当事者をはじめ融通や調和をかんがみる人間の意思や感情一切を受けつける余地がない。まるで泉主には自我など不要であるかのようにそれらはただ王なる者の立場がその資格を満たすかどうかだけで裁かれ整然と機能し、無慈悲にもこんな争いを生む。沙爽は、これらが全くものだとは思えなかった。しかし、そう思えない自分が間違っているとも感じない。



(――――だとしたら、誤謬ごびゅうを犯しているのは、黎泉てんのほうだ)




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