訳あって地方で育った姫宮の護衛で、ともに京の都に上ることになった女武人・翠令の恋と中央の政争を描いた平安王朝ファンタジー。
まず気づいたのが、地の文であっても姫宮さまと帝には尊敬語で、当然、実名なんて出てきません。源氏物語などの現代語訳を読んだことがある方には馴染みの表現ではありますが、こだわってるなあと感じました。
しかも、そのこだわりはそのままに、現代風の表現とが絶妙にミックスされていて、古くささも全く感じずとても読みやすいです。
主人公の翠令は、曲がったことが大嫌いな真っ直ぐな女武人。そんな彼女の上官となったのは、くせ者でイケメンの近衛大将・佳卓。
東宮となった姫宮と翠令の回りには、思慮深く優しい典侍、盗賊上がりの白人、博学な地方の文官など、個性溢れる面々が集まります。
一方、保守的な考えを持つ従来の貴族たちとの衝突も起こるようになり……。翠令と佳卓のじれじれな関係を中心に複雑な人間模様が描かれています。
そして中盤から今度は白狼と薄幸の佳人・竹の宮との交流が綴られます。このやり取りが非常に素晴らしい。二人が大好きになること請け合いです。
後半は大きな政争に巻き込まれていくことになるのですが、手に汗握る展開あり、甘くドキドキな展開あり、いやいやこれも近衛大将の思惑ですか??
古式ゆかしき平安を舞台に、常識に囚われず、前を向いて進むことの爽快さを教えてくれる平安王朝好きにはたまらない逸品です!
お話は、突然東宮になった姫君に付き従い、女武人である翠令が京へと向かうところから始まります。
この翠令、兎にも角にも真っ直ぐで、間違っていると思えば身分関係なく突っかかっていく気概のある女武人。そこが彼女の良いところでもあり、ハラハラさせられるところでもあるのですが、そんな翠令に一度は刀を向けられるほど激昂させたのが武人であり翠令の上官となる佳卓。この2人を中心に物語が進んで行きます。
2人の心の交流はじれったくもあるのですが、そこがまたとても良い。それに身分違いでもあるので、2人はどうなるのかとずっと目が離せません。
そして、翠令と佳卓のほかに、元盗賊の白狼と東宮の叔母にあたる竹の宮という姫君がいるのですが、この2人がまた尊いのです……本当に読んで欲しいです。私は尊すぎてスマホを拝みながら読みました。
と、恋愛模様について語りましたが、このお話はそれだけでなく、政争とそれに伴う人間ドラマについてもかなり深く描かれています。なので、恋愛だけのキラキラした話ではなく、全ての要素が複雑に絡み合った読み応えのあるお話になっているのです。
さあ、気になってきましたか?読みましょう、本当に面白いですよ!!