第1話　八月や I was born 呟ける

第2話　同窓会居場所のありや草いきれ

第3話　ふつくらと十八歳の浴衣かな

第4話　星の子に摘まれて空へ青葡萄

第5話　わたくしが至りませんで万太郎忌

第6話　頭蓋骨小さくなりて髪洗ふ

第7話　起し絵の女となりて閉ぢられぬ

第8話　パレードの大太鼓の子秋暑し

第9話　うつし世を立ち去りがたく秋蛍

第10話　愛されて馬の余生や秋うらら

第11話　群れ咲ける桔梗ゆるく束ねたり

第12話　秋蝶に連山ひだを極めけり　

第13話　背きし子を門に待ちゐる秋の暮

第14話　通過せる電車のアニメ秋の雲

第15話　高く咲く金木犀に宵の星

第16話　十年目のわが子記念日秋うらら

第17話　文月の風の竪琴つまびける

第18話　底紅や生き過ぎたとも足らぬとも

第19話　叱られて腹出す犬やゐのこづち

第20話　つまべにや日ノ本なべて渡来人

第21話　つゆくさの帰りそびれて地の星に

第22話　生真面目に樋を伝ひて秋時雨

第23話　秋蝶や湖水に底のなきごとし

第24話　枯葦やパチンコ店は出玉の日

第25話　牧柵に弾くバンジョーや秋高し

第26話　路地裏に幻燈ともす秋果かな

第27話　風の神まつる祠や濃竜胆

第28話　ウクレレの弦のゆるみや星飛べり

第29話　秋うらら猫の器量を談じをり　

第30話　満月や子のなき家もある家も

第31話　愉しき日トルコブルーの毛糸編む

第32話　月の人輿にはみ出す裳裾かな

第33話　粗塩のほのかに甘き秋刀魚かな　

第34話　切り取りて一眼レフの良夜かな

第35話　夕霧や弁柄色の画廊の扉

第36話　棚占むるレコード盤の愁思かな

第37話　金色の雲の耀ふ夕花野

第38話　そろと出す猫の右手の寒露かな

第39話　飛翔せる鳥の目刈田遠ざける

第40話　空堀に穂すすきなびく山の城

第41話　大切を仕舞ふ小部屋や白桔梗

第42話　秋めくや眼鏡外せば別の顔

第43話　年譜から読みそむ史書や虫の秋

第44話　瓢箪や労はり合へる老夫婦

第45話　夕さりのお猿のかごや木の実雨

第46話　飛びながら流さるる鳥初あらし

第47話　一編の詩を遊ばせて野紺菊

第48話　全山に絹布をかけて竜田姫

第49話　柳散る堀にアコギの弾き語り

第50話　司法書士事務所の桜紅葉かな