第4話 星の子に摘まれて空へ青葡萄



 

 

 ある夏の日、星の坊やがゆっくり回転している惑星を眺めながら、


 ――あそこに垂れている、ふっさりした緑色のものはなんだろう?


 小首を傾げていると、物知りのとうちゃんが説明してくれました。


 ――あれは葡萄といって、もう少しすればとても甘く熟すんだよ。


 でも、星の坊やは「ふうん、ぼくも食べてみたいなあ」とは言いません。


 星には星の、惑星には惑星の☆🌟☆があることを承知していたからです。


 

 太陽さんから星の世界のまとめ役を仰せつかっているとうちゃんが宇宙の見回りに出かけてしまうと、入れちがいに、親せきの雷のおじさんがやって来ました。


 ――なんだ坊主、つまらなそうな顔をして。


 星の坊やが正直に打ち明けると、雷のおじさんは少し考えてから言いました。


 ――あの葡萄が熟れるころには、雷は店仕舞いを済ませていねばならん。だからチャンスはいましかないんだ。いいかい、ワシがゴロゴロッと言いながらピカッと稲妻を走らせたら、坊主は惑星へ降りて、青葡萄をひと粒だけもらって来るんだ。


 ――黙って摘んできたりして、あの惑星は気をわるくしないかしら?


 星の坊やのもっともな質問に、雷のおじさんはドンッと太鼓判を押しました。


 ――大丈夫、惑星は太っ腹だから、ひと粒ぐらい大目に見てくれるさ。


 

 星の子に甘い雷のおじさんは、さっそく自分のプランを実行に移しました。


 雷のおじさんがゴロゴロピカピカ、思いきり派手にやってくれているあいだに、星の坊やは素早く惑星に飛び降り、「こんなことをして、本当にごめんなさい」とあやまりながら、ひと粒の青葡萄をそうっと摘むと、大急ぎで天へもどりました。


 あまりの早業だったので、葡萄棚の下にふっさりと垂れている青葡萄の房も、


 ――ん?


 なんかへんと思ったぐらいで、ひと粒なくなったことには気づきませんでした。


 

 でも、とうちゃんが言ったとおり、せっかくの青葡萄は固くて食べられません。


 すると、雷のおじさんはまたピカッと稲妻を走らせて青葡萄に穴を開けてくれ、そこに天の川で拾った銀のチェーンを通すと、すてきなネックレスになりました。



 宇宙の見回りを終えたとうちゃんが、かあちゃんと連れ立ってやって来ました。


 ――雷のおやじさん、困るよ、子どもにへんなことを教えてもらっちゃあ。


 とうちゃんは渋い顔をつくりましたが、星の世界で一番の別嬪さんのかあちゃんにネックレスがとても似合ったので、ついつい口もとがゆるんでしまうのでした。


 

 つぎの夏、さらにつぎの夏も、星の坊やはひと粒ずつ青葡萄を摘んできました。



 やがて六粒になった青葡萄を連ねてみると、モワッと輝くリングになりました。


 ――もういいだろう、なにごとも欲張ると、ろくなことにならないぞ。


 とうちゃんのことばに、こっくりとうなずいた星の坊やは、大好きなかあちゃんの指でふしぎな緑の光を放つ青葡萄のリングを、うっとりとながめているのです。



   

    🌟🌟🌟🌟🌟🌟



 はい、もうおわかりですね。

 あの昴の六連星の誕生秘話。

 いえ、本当の話ですってば。(笑)


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