第40話 空堀に穂すすきなびく山の城



 

 

 

 カクヨム「5分で読書」参加用に書き下ろした短編『El Cóndor Pasa』について、各自の努力も"たまたま"に入れてしまうのかとご質問をいただいたケイコの答えは、


 

 ――是。


 

 なぜって、努力すらも許されない環境に置かれている人たちの現実が横たわっているからですし、現在は俳句や小説など多少の努力を伴う作業を甘受していられるケイコですが、いつなんどきバランスが崩れるかもしれず、それはケイコに限ったことではなく、知らず知らず傲慢になっている人たちにとっても同じことであり、その事実が、努力もまた"たまたま"のなせるものと断定する所以なのであります。


 

 

               🏯


 

 

 天正11(1583)年4月下旬。

 本能寺の変で没した信長の跡目を狙う秀吉が、信長随一の重臣、柴田勝家の居城の北ノ庄城へ攻め入ろうとしたとき、病気で出陣できずにいたひとりの若武者が、病身を駕籠にあずけて城内に入り、追手門の扉に、みごと3行に大書したという、


 

 ――小島若狭守男(むすこ)新五郎十八歳

   病気によって柳瀬表へ出張せざるといえども

   今籠城まったく忠義者也


 

 その無念さを” たまたま”に安住している人たちに問うてみたいケイコなのです。


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