第28話 ウクレレの弦のゆるみや星飛べり
――♪ ポロン、ポロン。
ウクレレを弾いていると、ホノカはいやなことをみんな忘れていられます。
空も飛べるはず、てんとう虫のサンバ、大きな古時計……など弾き語りで。
☕
詠みかけの文庫本持参で入ったカフェで、幼稚園の迎え待ちの騒々しいママさんグループに遭遇してしまい、せっかくの珈琲を半分も飲まずに席を立った……。
「ちょっとさあ、この少子高齢化の時代に子どもを産まない夫婦ってどう思う? 自分たちだけ子育ての苦労をしたくないなんて、ずいぶんと身勝手じゃないの? その人たちの老後まで、あたしらの子どもたちが背負わされることになるんだよ」
「それにさあ、言っちゃあなんだけど、ラインや年賀状で、そういう家庭には家族写真を送らないように気をつかわなきゃならないしさあ、ほんと面倒なんだよね」
§
――おあいにくさま。子どもがいない分だけ、うちは高い税金を払っているし、第一、あなたたちがこうして安穏とお茶を飲んでいられるのも、わたしたちの親の世代の働きが巡り巡っての恩恵。みんなで支え合ってこその社会なんですからね。
胸の中で反論したものの、マジョリティにものを言わせた大声のバイオレンスが耳について離れず、ずっと悲しい気持ちを引きずっていたのですが……ウクレレのやわらかな音色が、闇討ちに遭ったようなホノカの心をやさしく慰めてくれます。
🌟
窓の外には満点の星。
そのうちのひとつが、すうっと尾を引いて流れました。
もうすぐホノカをこの上なく大事にしてくれるタツヤが帰って来るころです。
マイノリティの夫婦にも、明日はいいことがあるかもしれませんね。(#^.^#)
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