第48話 全山に絹布をかけて竜田姫





 

 山に里に街に、秋が深まってきました。

 

 ――さあ、いよいよ、あたしの出番よ!

 

 奈良・竜田神社の竜田姫は美しい頬を染めて、大張りきりに張りきっています。


 春の佐保姫がやわらかなさみどりを刷き立て、夏の筒姫が何層にも濃く深く茂らせた山々を、今度は一気に紅や黄色に染め直し、つぎに待ち構える冬の宇津田姫にバトンタッチせねばならないのですから、絵の具なんぞでは間に合いません。


 錦の小袖に朱のたすきをきりりと掛けた竜田姫は、色とりどりの絹の布を何十反何百反も牛車に積ませ、大勢の侍女を連れて、雄々しく天空へ舞い上がりました。

 


 

                 🍁

 


 

 しばらく心弾む出来事に出会えていないあなた。


 冷えこむ今夜が明けたら、あなたが住んだり働いたりするまちの周囲の山々や街路樹にも、あざやかな紅色や黄色の絹布がまばゆく輝いているかもしれませんよ。

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