第26話 路地裏に幻燈ともす秋果かな
城下町の蔵通り。
秋の日が暮れると、人通りもまばらになります。
その目立たない一画に小さな八百屋さんが一軒、
――ふかしいも、あります。
ひらがなだけの張り紙を風になびかせて、遅い時間まで店を開けています。
店の奥から引き出された裸電球が、温かなほおずき色の光を放っています。
ほのかに照らされているのは、梨、葡萄、柿、林檎などの新鮮なくだもの。
🍏
骨ばった腰に藍色の前かけを巻いた老主人が、皺だらけの手を泳がせました。
すると――。
物かげにひそんでいた狸の子どもが、おっかなびっくり店に近づいて来ます。
老主人はとりわけ美味しそうな葡萄を選んで、仔狸の手にのせてやりました。
もじもじしていた仔狸はぴょこんと頭を下げると、暗闇に去って行きました。
里山の巣穴には病気の母さん狸が、いまや遅しと仔狸の帰りを待っています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます