第40話

 ただ、C級木材の割合は木の枝百本中一本程度で、家の強化を行うほどの量はそうそう集められなさそうだった。


 逆にE級木材の割合は十本に一本程度。

 残りはD級の木材で基本的にはD級が採れると考えて問題なさそうだ。


 一方、俺が拾った物はほぼ全てE級木材だった。

 この辺りはやはり【採取】スキルの差だろうな。


 ――もしかするとこの割合もバフをかけたら増えるのだろうか?

 試しにクルシュに対して『鼓舞』を使う。


 それからしばらくクルシュが採取してくる素材を計測してみた。

 するとC級素材の割合が五本ほどに増えていた。


 まぁ、これだけじゃ足りないけど、ずっと繰り返し集めていけば必要な個数は溜まってくれそうだ。

 しばらくはクルシュに付き合うかな。



「これくらいでいいですか?」

「あぁ、助かったよ」



 持ち運べる限界まで集めた後、俺たちは領地へと戻っていった。






 それからしばらくすると領地の建物を作る手伝いをしてくれた男が家族を連れてやってきた。

 さすがに全員……とはいかなかったが、二組の家族が領内に加わり、更に発展していくことになる。

 ただ、そうなってくると次は予想通り食糧問題が出てきてしまう。



「やはり、農家の人は中々来てくれないか」

「えぇ、畑を持ってる人がよその土地に行く理由がありませんからね」



 大工の家族を連れてきてくれた商人ビーンに尋ねてみると彼も難色を示していた。



「そうなると農家の次男や三男といった畑を持てない者はどうだ?」

「確かにそういった人物なら来てくれる可能性はありますけど、基本的にそういう人物は冒険者を目指すことが一般的ですからね。中々農家として……と考える人物はいませんよ」



 確かに土地は有限なので、確実性のない土地を持たない農家として過ごすなら、冒険者として依頼でも引き受けている方がまだいいか。


 どちらも生活は不安定だが、冒険者の依頼はなくなることがないからな。


 いや、それなら冒険者ギルドをこの領地に作れば良いのではないだろうか?



「例えばだが、この領地に冒険者ギルドを作ろうとしたらどんなことをしないといけないんだ?」

「そうですね……。作るだけならギルドに申請するだけで大丈夫ですよ。ただ、冒険者が来てくれるかどうかはわからないですね」

「そういう問題もあるんだな……。でも、申請だけしてくれるか? 後は俺の方で考えておくから」

「はい、かしこまりました。それにしてもずいぶん発展してきましたよね」



 ビーンが感心したように言ってくる。



「そうだな。最初は一人だったもんな。それがもう十人を超えたわけだし、小さな村くらいにはなったな」

「えぇ、本当にそうですよね。そろそろ領地全体のことを考えていく必要もありそうですよね」



 ビーンに言われて気づいた。

 確かに今は個々の能力を考えるだけでよかったが、人が増えるともっと広い範囲を見ていく必要が出てくるわけだ。


 領内の収入がどのくらいあって、出て行く分がどのくらいあるか。食料がどのくらい自給できて、他所から買う分がどのくらいか。

 魔物とかに襲われたときに領地をしっかり防衛できるか。

 更には回りの町の人とも交流を増やしていく必要がある。


 やることはかなり多い。

 そのどれもが俺一人で出来るだろうか?


 少し不安に思えてくる。

 ただ、やるしかないわけだもんな。


 気合いを入れた後、ビーンに言う。



「できれば領地経営に詳しいやつも探しておいてくれ」

「はい、そう仰ると思っていました」



 にっこり微笑んでくるビーン。

 まぁ、自分でできないならできるやつに任せるのは基本だよな。


 いくら考えたところで俺一人にできることなんて限られているわけだからな。

 あとは、俺自身今できることをしていこう。


 大工が増えた以上、建物関連の強化が捗っていくはず。


 今は開拓度三の木造の小屋が二軒と開拓度一の古びた小屋が六軒。

 これを強化できるまで強化し尽くしていくか。






 そして、一月も過ぎる頃には建物の強化を終えていた。



【名前】 木造の館

【開拓度】 4 (0/25)[戦力]

【必要材料】 B級木材(0/5)

【能力】 『盗難防止』1(0/1000)家に入れられたものは盗むことができなくなる。[家の鍵を閉めたとき限定]

『冷蔵庫』1(274/1000)物を冷やすことのできる収納がある。

『水回り』2(674/2000)風呂、便所、水道が使用できるようになる。

『冷暖房』1(0/1000)快適な部屋環境になる。

【状況】 

新築の大きな館。



 ついに開拓度四の建物にすることができた。

 まだ、俺たちが住む館のみだが、それでもしっかりと領主の館だって分かるようになった。

 更に町にあった古小屋も全て新築の家へと変えることができていた。


 そして、戦力レベルも大幅に上げることができた。



【領地レベル】 4(4/32)[村レベル]

『戦力』 10(1/55)[人口](12/19)

『農業』 4(6/25)[畑](2/4)

『商業』 6(17/35)[商店](1/6)

『工業』 12(0/65)[鍛冶場](1/1)



 また、この上がり方を見ると人口の増え方の法則性が読めてくる。


 どうやら戦力レベルを上げると一。領地を広くすると十上がるようだ。

 ただ、次の領地レベルまではまだまだ先が長そうだ……。

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