第8話
それから俺は徹底して、上げられる数字を上げていった。
幸いなことにここまでは開拓度を上げるのに苦戦することはなく、小屋だと板を打ち付けるだけ、畑だと種を撒くだけだった。
そして上げ続けた結果、ついに小屋の開拓度が二へと上がっていた。
【名前】 古びた家
【開拓度】 2(0/15)[戦力]
【必要材料】 D級木材(0/5)
【能力】 『盗難防止』1(0/1000)家に入れられたものは盗むことができなくなる。
[家の鍵を閉めたとき限定]
『水回り』1(0/1000)風呂、便所、水道が使用できるようになる。
【状況】 ボロボロだけど住めなくもない
ついにボロボロの物置小屋だった俺の家はちゃんと家、と呼べる物へと生まれ変わっていた。
しかも水回り完備。
……まぁ、これは実は元々付いてたやつなんだけどな。
開拓度を上げる時に使えるように修理させられたけど、そのおかげで随分と快適さが上がっていた。
ここへ来るまでにずいぶんと時間がかかってしまったな……。
まぁ、畑はまだ開拓度が一のままだったけど。
【名前】 荒れた畑
【開拓度】 1(7/10)[農業]
【必要素材】 E級魔石(0/3)
【状況】 キュウリ(0/7)トマト(0/7)キャベツ(0/4)
毎日採れる野菜はかなりの量になり、もう食べ物に困ることはなさそうだった。
まぁ、飽きることはあるが……。
そして、武器も多くの石の槍と木の棒が出来上がっていた。
どうしても消耗品であるので、多く作っていてもすぐに壊れてしまう。
いくらあっても困らない物だった。
そんな、数値を上げる日々を繰り返して十日ほど経つと、あの商人がやってくる。
「遅くなってしまい申し訳ありません。お約束通り人を募集して、ここの領民になってくれるという方を連れてまいりました」
商人の後ろから小柄な少女が出てくる。
一瞬子供かと思ったが、さすがにこんなところに子どもは来ないだろう、考えを改める。
少し薄い金色の髪が肩にかかるくらいまで伸び、顔立ちも整っていて着ているワンピースもとても彼女に似合っていた。
思わず呆然と彼女のことを見てしまうが、そこで我に返る。
たしかに思わず見惚れてしまうほどの美少女だが、そんな人物が一人で、しかも男の俺しかいない領地に来るだろうか?
……どう考えても罠だよな。
ただ、まずは俺から情報を書き出すところから始めようとしてるのか?
可愛い子に聞かれたら答えてしまうもんな。
俺は苦笑を浮かべながら女性に頭を下げる。
「俺はソーマ。この領地の領主をしている。まぁ、領地というより庭ほどの広さしかないけどな」
「は、はじめまして。わ、私はクルシュといいます……。このたびはビーンさんの求人広告を見せていただいて、それで……」
「あぁ、助かるよ」
そういえば領地のことは水晶で調べられる。
もしかすると領民のことも調べられるのか?
商人であるビーンは直接調べることができなかった。
しかし、俺自身の能力は見ることができる。
もしかするとこの領地の者……と認識されると見ることができるのかも――。
水晶を取り出して、クルシュを調べてみる。
【名前】 クルシュ
【年齢】 18
【職業】 メイド
【レベル】 1(0/4)[ランクE]
『筋力』 1(17/100)
『魔力』 1(0/100)
『敏捷』 1(34/100)
『体力』 1(21/100)
【スキル】 『採取』4(61/2500)『釣り』2(37/1500)『給仕』1(0/1000)
意外と普通の能力だ。
……いや、普通じゃない、普通じゃない。
俺が全ての能力が一だったので、それを基準に考えてしまったが、よく考えるとずっとこの世界にいるのに能力値が全て一はかなり低いな。
レベルの横にランクEとも書かれているし……。
やはり今の領地相応の人が来てくれるようだな。
少し気になる点はメイドをしていたはずなのに『給仕』のスキルが全く上がっていない。
メイドとしての仕事はあまりできないのかもしれない。
「一つ聞いて良いか?」
「はい、何でしょうか?」
「どうして、この領地の募集を受けたんだ?」
これだけは聞いておかないといけない。
すると、クルシュは少し不安そうな表情をする。
「そ、その、私は以前メイドとして雇ってもらっていたのですが、鈍くさくて仕事をミスしてしまい、そのままクビに……。そのあとも色々と職を転々としていたのですが、やはりミスをしてすぐに辞めることになりまして……。そして、お金も尽きて路頭に迷っていたときに人を募集していたのを見まして、このまま飢え死んでしまうなら……と思い切って受けてみました」
なるほど……。理由は特に嘘がなさそうだ。
ステータスの表記との齟齬はない。
「理由はわかった。ただ、ここも俺しかいないような弱小領地だ。金の援助もできないしできる仕事をしてもらうことになるぞ? それでいいのか?」
「は、はい。私にできる仕事があるのでしたらやらせてください。お願いします」
理由もしっかりしているし、この少女になら後れを取ることもないだろう。
それに俺の領主としての力を使うならやっぱり人はいないといけない。
食料もかろうじて二人が食べていけるくらいはあるだろう。
「わかった。それじゃあ、これからよろしく頼む」
「は、はい、ありがとうございます」
クルシュは深々と頭を下げてお礼を言ってくる。
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