第49話
そういえば激昂の効果は凄まじかった。
あれをいつでも発動できるようになれば更に領地の強化に役に立つな。
ただ、やはり問題になるのが発動の条件だな。
おそらく今回クルシュが誘拐された、みたいな俺自身が怒る必要があるようだ。
今ならあの誘拐犯のことを考えて怒ることはできないだろうか?
試しに激昂を使ってみて、クルシュの能力を見てみる。
【名前】 クルシュ
【年齢】 18
【職業】 メイド
【レベル】 1(1/4)[ランクE]
『筋力』 1[×2](25/100)
『魔力』 1[×2](0/100)
『敏捷』 1[×2](41/100)
『体力』 2[×2](4/150)
【スキル】 『採取』10[×3](18/5500)『釣り』3[×2](37/2000)『給仕』1[×2](1/1000)
うん、無事に成功したものの、採取スキルがとんでもないことになっている。
ただでさえ十、と高かったのにそれがなぜか三倍に……。
クルシュの得意スキルだからなのだろうが、合計三十。
これで木の枝を拾うとどうなるのだろうか?
「あっ、ここに転がってる木の枝って私が落としたやつですね」
クルシュが何も考えずに落ちている木の枝を拾っていった。
これ幸いとそれを調べてみる。
【名前】 木の枝
【品質】 A[木材]
【損傷度】 0/100
【必要素材】 S級魔石(0/10)
【鍛冶】 A級木材(0/20)→
ついにAランク……。
しかも、それを当たり前のように拾っていく。
更にそれだけではなく、たまにSランク……とかいう文字すら目に留まる。
もしかしたらこれを使えばラーレが望んでいた万能薬すらも作れるようになるのではないか?
改めて激昂の能力の高さに感動しながら、俺はクルシュが拾ってくれた素材を鞄にしまっていった。
それから戻ってきた俺たちは一緒にクルシュのことを探してくれた人たちにお礼を言った後、建物など、木材で強化できるものを徹底的に強化することにした。
もちろん、激昂を自在に使えるようになった(気がする)俺に敵はない。
大工たちのスキルすらも倍にして、ドンドンと建築していく。
そして、領内にある建物がついに全てSランクの素材でできた建物になった。
なったのだが……。
「なんだろう、この町――。最初とずいぶん見違えたな……」
一軒しかなかったときから比べるとまるで貴族の館かという建物が建ち並ぶ高級住宅街にしか見えなくなってしまった。
――まぁ、領地がかなり狭いので隠れ家には違いないが――。
ただ、Sランク木材は家の他にもたくさんの使い道があった。
まず武器。
弓などが作れるようになったので、遠距離からでも攻撃をすることが出来るようになった。
まぁ、ラーレはそれを軽々と躱すし、実質的な威力は魔法の方が強い。
結局の所あまり使い道はないだろう。
ただ、こちらは大事なことなのだが、なんと町を覆うように城壁を作ることに成功した。
木材だけじゃなくても石材とか、拾うことのできる素材はSランクで拾うことができた。
きっちり城壁で囲ってしまえば突然領地の中で襲われる……ということはなくなるので一石二鳥だった。
あとはアルバンたちが戻ってくるのを待って、毒草を拾いに行くだけだった。
ただ、アルバンたちが妙に帰ってくるのが遅いのが気になる。
何かあったのだろうか……?
◇
「なるほど……、儂が任命した領主を別の領主が襲ったのか。それは申し訳なかった。私も少々目が届いておらなんだ」
「いえ、我々もその領地を攻め込んで良いものかわからなかったので、国王様のご指示を仰ごうと思いまして――」
「本来なら我々が攻め込みたいところなのだが、今は魔王が現れて困ったことになっておる。……そうだ、聖騎士たるそなたも勇者に協力して魔王を討伐してくれないか?」
国王が身を乗り出して期待のこもった視線を向けてくる。
以前のアルバンなら即答していただろう。
しかし、今のアルバンはソーマの部下。
すぐに首を振って断っていた。
「申し訳ありません。私は領主ソーマの部下故にソーマの指示がないと勝手には動けません。魔王討伐の任でしたらソーマに直接申しつけていただけると幸いです」
「ふーむ、それもそうだな。よしわかった。では、ソーマに直々に依頼させてもらおう。勇者に協力して魔王を討伐するように、と」
「はっ、それで魔王は今どちらに?」
「それが我が王国を転々と歩き回っているようだ。観光気分なのか、後には完全に壊された町しか残っておらん」
その言葉を聞いて、アルバンはなんだか嫌な予感を感じた。
ソーマの領地にいる戦闘力のある人間は自分とドラゴンのみ。
その二人が今ここに来ている。
今攻められたらあっさり領地は落ちてしまうのではないだろうか……。
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