第34話
鍛冶を終えた後、俺たちは探索に向かうためにアルバンとエーファを探しに来ていた。
すると、二人は何やらにらみ合っていた。
そんな二人の様子を見て、ラーレは慌てて俺の服を引っ張ってくる。
ただ、あの二人が喧嘩をするとは思えない。
そう考えると――。
「た、大変よ、ソーマ。二人が喧嘩を――」
「いや、あれは特訓をしてるだけじゃないのか?」
剣を構えるアルバン。
それに対してエーファが龍魔法を放っていた。
圧縮された空気泡のようなものがエーファの手から飛び出すと、それが触れた瞬間に爆発を引き起こしていた。
アルバンはその空気泡を簡単に剣ではじいているものの、その表情は少し険しいものだった。
「中々やりますね。さすがはソーマ様の力を見抜かれた方だけあります」
「あなたも中々やるね。主様が認めているだけあるね」
最終的にはお互いが手を握り合って認めあっていた。
まぁ、アルバンが攻撃を一方的に受けていた……とはいえ、良い勝負ができるほどに龍魔法は強力なようだ。
部屋の壁を一撃で壊したし、これは能力値は依然として低いエーファだが、案外戦力として期待できるかも知れない。
「おや、これはソーマ様。どうかされましたか?」
俺の姿に気づいたアルバンが駆け寄ってきて聞いてくる。
その瞳はまるで「一緒に連れて行ってください」と訴えかけているようで、さながら子犬のように思えてきた。
「あぁ、これから探索する場所を広げようと思ったんだが、時間はあるか?」
「もちろんにございます。なくても無理矢理作ります!」
必死に頷いてくるアルバン。
まぁ、アルバンならそう言ってくれるよな。
あとは、エーファだが――。
「あ、主様……、私も一緒に行ってもよろしいでしょうか?」
おいていかれるのでは……と、エーファの方から不安そうに聞いてくる。
「もちろん一緒に来てもらうつもりだけど、いいのか?」
「は、はいっ!!」
エーファは満面の笑みを見せてくる。
むしろ喜びたいのは俺の方なんだけどな……。
「よし、それじゃあ早速行くか!」
俺たちはスライムの森の先にあるまだ見ぬ場所へ向かって進んでいった。
スライムの森にたどり着くと早速エーファとアルバンが周りに現れた魔物を蹴散らしてくれる。
「スライム程度だと私の敵ではないね」
「ソーマ様のお手を煩わせるわけにもいきません。そこで見ておいてください。ラーレはいくぞ!」
ラーレはため息交じりに答える。
「全く、相変わらず人使いが荒いわね」
「すまんな。俺も手伝うから……」
「いいわよ。余計なことをしなくてもあんたは見ていた方が早いのよ。その代わりにバフだけはお願いね」
「そうだな。わかった……」
俺が鼓舞のスキルを使うと三人は軽く捻るようにスライムを倒していった。
そして、落ちた魔石を俺が回収していく。
E級魔石なのだが、かなりの量を集めることができた。
そして、しばらく森の奥へと進んでいくとだんだん出てくる魔物が変わっていく。
スライムがゴブリンに変わり、ウルフになり、そして、今俺たちの目の前にはゴブリンメイジがいた。
いや、さっきまでいた……というのが正しいかも知れない。
それもそのはずでやたら気合いが入っているアルバンとエーファの前にそれらの魔物は一瞬で魔石に姿を変えていた。
えっと、落としてるのがD級の魔石に変わってるんだけど……。
先ほどまでと変わらないペースで二人は魔物を倒していく。
「主様、私の力を見ていてください」
「はははっ、この程度でソーマ様に刃向かおうなんて片腹痛いわ!」
鬼神のごとき働きを見せる二人に苦笑しか浮かばなかった。
しかし、おかげで俺はゆっくり素材を採取することができた。
D級の雑草であるいやし草やD級木材。
そして、D級の毒草なんかも見つけることができた。
種類はちょっとずつ増えるみたいだな。
「どう? 目的の素材はあったの?」
「あぁ、これを見てくれ」
俺はラーレに毒草を見せる。
「ちょっ!? なんてものを見せるのよ! それって毒のある草じゃない!」
「あぁ、そうだな。ただ、それだけじゃない。これを少し調べてみたんだ。するとあることがわかった」
【名前】 毒草
【品質】 D[雑草]
【損傷度】 0/100
【必要素材】 C級魔石(1/10)
【鍛冶】 D級毒草(0/20)→万能薬(D級)
この毒草がどうやら万能薬を作るための素材のようだった。
ついにこれで万能薬が作れるようになったようだ。
ただ、問題になるのは品質か――。
クルシュを連れてきて採取してもらえば、もう一ランク上げることができるかも知れない。
でも、上げられたとしてもC級止まりか……。
S級まで上げるのはまだまだ先になりそうだな。
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