第41話

 先が長そうだと思っていた時期が俺にもありました。

 領地が広くなったのだから……と建てられるところには建物を建てていき、道を整備する。

 更にアルバンがさり気なく田畑を作っていってくれたこともあり、領地レベルは日に日に上がっていった。

 更に人口が増えると調理器具等が必要になってくる。

 それを鍛冶で作り、バルグの商店で売る。


 それらを領民たちが買っていった結果、全てが巡回していき、全体的にバランスよく数値を上げることができていた。



【領地レベル】 4(14/32)[村レベル]

『戦力』 12(1/75)[人口](12/21)

『農業』 6(7/35)[畑](4/6)

『商業』 9(0/50)[商店](1/9)

『工業』 15(0/90)[鍛冶場](1/1)



 やはり領民が増えれば数値が上がるのも一気に早くなったな。

 この調子で順調に上がってくれたら良いけど――。


 そんなことを思っていたのだが、中々そうはいかないようだった。




 とある日、俺はアルバンから呼び出しを受けた。



「何かあったのか?」

「えぇ、ちょっと大変なことが起きましたので、ぜひソーマ様に指示を仰ぎたいと思いまして――」



 大抵のことは任せたままでも進んでいく。

 そんな中、わざわざ俺のことを呼びに来ると言うことは、よほどのトラブルが起きたのだろう。



「わかった。すぐに行く!」



 俺はアルバンの後を追いかける。

 するとそこにはロープでぐるぐる巻きにされた四人の男たちがいた。


 乱雑に生えたひげ面の男。

 それぞれが剣を持ち、お世辞にも小綺麗にしているとは思えない、野蛮な人たち。

 その姿を見て、ピンとくる。



「盗賊か……」

「はい、どうやらそのようです。この領地を狙ったようで――」

「わかった。少し話をしてみる」



 こんな辺境の地を襲ってくる理由は何か。その辺りを聞いておく必要はあるだろう。

 しかし、男たちは何も聞かずにあっさり教えてくれる。



「くっ、どうしてこんな所にこんな強い奴らがいるんだ!」

「お前がこの辺りに隠れ家に便利そうな場所があるって言うから来たのに――」

「す、すみません。数人くらいの農民とかなら追い出せると思ったんですぅ……」

「どうせ、役人に引き渡すんだろう。さっさとしろ! どうせ俺たちは食っていけないんだ」



 どうやら何か理由がありそうだな。



「なんで食っていけないんだ? そんな盗賊まがいのことをしているからじゃないのか?」

「好きで盗賊なんてするか! 俺たちは食えないから仕方なく盗賊をしてるんだ!」

「ふ、普通に働こうとしても門前払いをくらいますから……。こんな姿では」



 確かにこの姿のまま来られたら困るだろうな。



「なるほどな。でも、それで人を襲っていたんだろう? なら自業自得じゃないのか?」

「うっ……。た、確かに人を襲おうとしたからな。じ、自業自得か」

「……んっ? 襲おうとした?」

「あ、あぁ……、ここを拠点にして本格的に活動しようと思ったんだけど、その出鼻から挫かれたんだ。笑うといい……」



 あぁ、そういうことか。

 盗賊デビューした、その最初からアルバンやエーファ、ラーレの相手をしたわけか。

 それはご愁傷様だ……。


 いや、ちょっと待てよ。それなら俺たちが黙っていたら特に今まで盗賊として活動していないわけだし、罪に問われないってことだよな?



「お前たちは元々どんな仕事をしていたんだ?」

「り、リーダーだけ冒険者だったけど、後の俺たちは農家だった……。まぁ、土地なし農家のせいであっさり首になって食いっぱぐれたけどな」



 農家!? なるほど、これはちょうど良いかもしれない。



「もういいでしょう。そろそろ殺してしまいますか? 盗賊ならそれで報酬がもらえますので――」



 アルバンが剣を構えてくる。

 しかし、それを俺が止める。



「いや、それには及ばない。こいつらが俺に指示に従順に従うなら、命までは取る必要はない」

「し、しかし、こいつらは盗賊ですよ?」

「いや、盗賊になりたいなんて考えた馬鹿な奴……止まりだ。だからこそ、アルバンは俺を探しに来たのだろう?」

「……わかりましたか。さすがに殺すほどの罪を犯したわけでもなし。かといって何もなしというわけにも行きません。だから困ってしまいまして――」

「それならしっかりとした監視体制の元で働いてもらうといい。アルバン、監視は任せていいか?」

「はっ、しかとこの目を光らせておきます」



 アルバンが胸に手を当てて敬礼してくる。

 あとはこの盗賊たちがどう返事をしてくるか……だな。



「さて、それでお前たちはどうする? 罪を反省して、この領地のために働くのなら命までは取らない。しっかりと衣食住を用意しよう。でも、刃向かうというのなら――」

「は、ははっ、寛大なお心遣いありがとうございます。誠心誠意、この身に変えても働かせていただきます」



 男たちはすぐに頭を垂れて頷いてくれる。

 まぁ、アルバンの監視付きだが、これで畑を増やしてもらう人間が増えたわけだ。


 念のために水晶も確認しておいたが、しっかり男たちの表示が出ていた。

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