第11話

 きっちり役割分担をする。


 クルシュは草取り。

 俺は魔石集め。


 やはりこの領地の広さを広げることが優先だからな。



【領地称号】 弱小領地

【領地レベル】 1(3/4)[庭レベル]

『戦力』 2(1/15)

『農業』 1(7/10)

『商業』 2(0/15)

『工業』 2(5/15)



 クルシュが来てくれたからか、それとも商人と交渉したからか、そのどちらが理由かはわからないが、戦力と商業が一ずつ上がっていた。


 全体を表示したら小数点以下の数字は隠れてしまったな。



 領地レベルを上げるには、あとは農業を上げればいいだけ。


 もう少し……、魔石さえあれば領地のレベルが上がる。



「あれっ? そういえば、『農業』以外のステータスも二になった後も少し上がってるな。こういうものは領地レベルが上がってからじゃないと上がらないものだと思ったが――」



 もしかすると全部均等に上げていかなくても、特定の一つを上げ続けても領地レベルが上がるのか?


 いや、畑の強化は必須だし、他のを考えると均等に上げる必要がある。

 それに木の棒が増えすぎても困る。


 クルシュが取ってきてくれた『いやし草』で回復薬が作れるからそれで上げていこうか。


 よし、とりあえず畑を上げきるだけの魔石を集めて(9/10)に上げてから、鍛冶で『工業』のレベルを上げてみるか。






 損傷度がまだゼロの木の棒と石の槍を手に取ると、俺はいつものスライムの森へと行こうとする。


 すると、クルシュから声をかけられる。



「ソーマさん、どこへ行かれるのですか?」

「あぁ、ちょっとスライムを狩りに行ってくる。畑の肥料に必要なんだ」

「そうなのですね。スライムって肥料になるのですか。初めて知りました」



 目を輝かせて聞いてくる。

 正確にはスライムの魔石が、開拓度を上げるための素材となって、その結果畑が成長するのだけどな……。


 説明しても仕方ないことなので、これで統一させた方が良いな。



「そういうことだ。だからクルシュは草集めを頼んだぞ」

「はい、頑張ります!!」



 気合いを入れているが、すでにクルシュの足下には山のように摘まれた草が置かれていた。


 鍛冶には十分すぎるほどの草が揃っていた。


 これだと草集めだけだと暇を持て余しそうだな。


 そうなると次にクルシュに頼めそうなのは……釣りになるな。

 これは戻ってから相談してみるか。






 ずいぶんと慣れたもので半日ほど過ぎる頃には魔石の数が目標の三個に届いていた。



「さて、あとは戻って畑を強化するだけだな」



 いつも通りなら次に量を増やしたら、キャベツの量が増えるはず。


 そんなことを考えながら領地へと戻ってくる。

 すると、そこには草の山が出来上がっていたが、クルシュの姿はなかった。



「あれっ、クルシュ? どこに行ったんだ?」



 もしかして、この領地が嫌になって出て行った?



 確かにずっと草むしりをさせていたわけだし、俺一人しかいないというのも嫌だったのかも知れない。

 ほかにも食事が野菜しかなかったこととか、そもそも、まだ給金を支払っていなかった。

 俺自身が金を持っていないから現金では払えないけど、何かもので渡せるようにしておくべきだったか……。



 さすがにクルシュがいなくなることは予想していなかったので、少し動揺してしまう。


 すると、どこからともなく呪いのような呻き声が聞こえてくる。



「ソーマさぁぁぁん……、助けてくださぁぁぁい……」



 この声は……クルシュ!?

 もしかして魔物かなにかに襲われた!?



「ど、どこに居るんだ、クルシュ! 大丈夫か?」

「だ、大丈夫じゃないですぅ……。お、重いですぅ……」



 俺は必死に周りを見渡す。

 そして、声が草の中から聞こえて来ることに気づいた。



「も、もしかしてこの中にいるのか?」

「は、はい……」



 俺は慌てて草の山を退けると、本当に中からクルシュの姿が出てくる。



「た、助かりましたぁ……。本当にありがとうございますぅ……」



 自身についた草を払いながら、クルシュが何度もお礼を言ってくる。



「どうしてそんな中にいたんだ?」

「それが草を運んでいたときに思わず躓いてしまって、この山に突っ込んでしまったのですよ。それで意外と重たくて身動きがとれなくなったんですよ……」

「それは……間一髪だったな」

「はい、ありがとうございます……。ソーマさんは命の恩人ですぅ……」



 クルシュが抱きついてくる。



「い、いや、大したことはしてないからな」



 そっとクルシュから離れる。



「そ、それにしてもずいぶんと集まったんだな」



 少し動揺しながら慌てて顔を草山の方へ向ける。



「はい、頑張りました。これで足りますか?」



 クルシュが俺の顔をのぞき込んでくる。



「あ、あぁ、大丈夫のはずだ……」



 これで鍛冶が使えるようになっているよな?

 数も数えたいし、念のために『いやし草』を調べてみる。



【名前】 いやし草

【品質】 D[雑草]

【損傷度】 0/100

【必要素材】 C級魔石(0/5)

【鍛冶】 いやし草(271/10)→回復薬(D級)


『鍛冶を行いますか?』

→はい

 いいえ



 二百七十一本か……。凄い数だな。

 これだけあればかなりの量の回復薬が作れそうだ。

 それを商人に売ればこの世界の金が作れる。

 クルシュに給金を払うこともできるし、必要なものを購入していくこともできる。


 それにいくつかは俺たちが怪我したときのために置いておくと良いな。


 新たな鍛治に希望を抱きながら、俺は『はい』を押していた。

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