第37話
「えっと、ここ……?」
ユリが確認のために聞いてくる。
まぁ、見たとおりボロ屋なので聞き返したくなる気持ちはわかる。
俺だってこんな所に住めと言われてたら反論したくなるだろう。
「ま、まぁ、すぐにちゃんとした家に強化するから、それまでの仮住まい……ということで」
「見て見て、バルグ! これがボク達のお店だよ!」
「……(こくりっ)」
「もう、もっと喜んでよ。ようやくボク達もお店を持つことができるんだよ。やっぱりビーンさんに紹介してもらってよかったね」
「しょ、商品……」
「うん、そうだね。これからじゃんじゃん売っていくために品数を増やしていかないとね」
ユリとバルグは嬉しそうに話し合っていた。
まぁ、本人たちが気に入っているのならそれで構わないけど、本当に良いのだろうか……。
少し不安に思いながらも、喜んでくれているなら――とそれ以上なにも言わなかった。
ただ、忘れずにクルシュに木の枝を集めてもらおうと心に決めていた。
そして、商業レベルが上がり、ついにこの領地ももう一段階レベルアップさせることができるようになる。
まだ、これから魔物を倒さないといけないが、それはエーファとアルバンがいればまず問題ない。
素早い魔物にはラーレに相手をして貰えば問題なく勝てる。
そうなると問題になってくるのが、次はどの項目を強化していくか……だが、もうここまでくると迷う必要もないだろう。
すでに現在の領地内に建てられるものは全て建てた。
これ以上は領地を広げないことには話にならない。
まぁ、建物を建てるだけなら普通に森を開拓していけばいいのだが、俺の能力の効果が届く範囲が決められている。
今だとそれが庭程度の範囲で、それ以上遠くの距離になると開拓がらみの俺の能力は使えなくなってしまう。
素材を活かした簡単な鍛冶や錬金はできるみたいだが、建物を建てるための素材を出せるのも領地の中だけ。
どちらかと言えば領地……というより開拓スキルの効果範囲――という言葉が一番わかりやすいかも知れない。
まぁ、能力で建物を建てたり、強化等ができないと今の人数だと話にならないので実質俺の領地……と見て問題ない。
ただ、今はそれが狭すぎる。
人数が増えてきた以上、そろそろ領地範囲を広げるべきだろう。
方針が決まったので早速、三人を探しに行こうと思ったその時、ボロ小屋の方から商店を開く準備をしていたユリの声が聞こえてくる。
「バルグ、すごい魔物を狩ってきたんだね。ワイバーンなんて滅多に取れるものじゃないよ」
「頑張った――」
「ただ頑張っただけじゃ取れないよ。さすがバルグだね」
相変わらず仲がいいな。
それに、Eランクだったバルグだが、彼もまたエーファみたいに能力では測れない力の持ち主のようだ。
ワイバーンと言えば、飛竜……ということだよな?
さすがにエーファほどの能力を持っていないだろうが、それでもなかなかの強敵と見て間違いないはず。
……ひょっとしてバルグも戦力として数えても良いのだろうか?
ふとそんな気持ちを抱いてしまったが、首を振って三人を探しに向かった。
「主様、また魔物を倒せば良いのですね?」
「かしこまりました。私たちにお任せください」
恭しく頭を下げてくるアルバンとエーファ。
相変わらず頼りになるな。
そんなことを思いながら開拓度を上げるクエストを開始する。
すると、その瞬間になぜかクエストが終わってしまう。
しかも、達成で――。
「へっ!?」
理由がわからなかった俺は思わず声を漏らしてしまう。
「どうしましたか? 我々は一体何をしたら?」
「いや、もう魔物が倒されているらしい……」
「はぁ?」
さすがに訳がわからなさすぎてもう一度よくクエストを見る。
すると討伐魔物のところにワイバーンと書かれていた。
も、もしかするとさっきバルグがもっていたワイバーンがそれだったのだろうか?
いや、あれはクエストが開始される前に倒していたはず。
ならどういうことだ?
……もしかして、このクエストで討伐対象とされる魔物はこの領地の近くにいる魔物で、先に討伐していたらクエストなしで達成できるのか?
まぁ、弱い魔物たちはかなりの数がいるだろうけど、今回のワイバーンみたいな魔物だったらそこまでの数を連れてこられるわけでもないだろうし――。
「け、結局どういうことだったんだ?」
「あ、あぁ、すでに倒すべき魔物はバルグが倒してしまったようだ――」
「ば、バルグって商人がか!?」
「そういうことらしい」
さすがにアルバンも信じられない様子だった。
と、取りあえず目標通りにクエストが終わったんだ。
領地を広げよう。
見た目は何も変わらないと思うが――。
そんなことを思っていたのだが、『領地を広げる』を選んだ瞬間に周りの木々が少し倒れ、たくさんの素材が並べられていた。
そして、水晶には残り時間が表示されていた。
『90:00:00:00』
住宅(0/5)
道(0/1)
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