第2話
小屋の中には古びた農具や武器が転がっていた。
まともに使えるかどうかは別にして――。
ただ、ここに住むにはまず片付けは必要だろう。
今は埃っぽすぎるのと物が置かれ過ぎて足の踏み場すらまともになかった。
そして、水晶には小屋の情報が数字化して表示されていた。
【名前】 古びた小屋
【開拓度】 1(0/10)[戦力]
【必要材料】 E級木材(0/5)
【状況】 倒壊の危険あり
住み続けるには色々と問題がありそうだな。
ただ、補強するにしても俺に何か技術があるわけでもない。
ゲームみたいにボタンを一つ押せば強化される……というわけにはいかないからな。
「ははっ……、いきなり詰んでないか、これ?」
いくら数字が判ってもそれを上昇させる手段がわからなければ上げようがない。
いや、この【必要素材】が数字を上昇させる方法に当たるのか?
試してみないことにはわからないな。
それと、ここは倒壊の恐れがあるようなので迷っている場合でもない。
とにかくここに書かれているE級木材というのを探していこう。
小屋から外に出ると次は畑の方へ向かう。
凄く荒れた地なのにそこには元気にキュウリが育っていた。
一本だけ――。
【名前】 荒れた畑
【開拓度】 1(0/10)[農業]
【必要素材】 E級魔石(0/3)
【状況】 キュウリ(1/1)
うん、見たままだな。
こっちに必要な素材は魔石か……。畑にでもまくんだろうか?
確かにゲーム的に考えたらそうなんだろうけど、リアルだから自分で耕していく必要があるんだろうな。
魔石って聞くとおそらく魔物を倒して手に入れるもの……ってイメージだな。
さすがに今すぐに倒すのは厳しい。今の俺は武器すら持っていないからな。
でも、このままだと確実に飢え死ぬ。
俺の手持ちの食料はキュウリ一本だけ。
しかも、これを取ってしまったら次は生えてこないやつじゃないのか?
それとも時間経過と共に新しく生えるやつなのか?
……よしっ。
俺は試しに生えているキュウリを採ってみる。
すると状況の欄が『キュウリ(1/1)』から『キュウリ(0/1)』へと変化した。
やはりこの数字は今畑に生えているキュウリの本数を表していたようだ。
あとはこれが回復するのか……。
ちょくちょく調べていくしかないな。
全てが手探りなので中々前に進んでいるのかわからない。
でも、今はできることをするしかない。
一応このキュウリが食べられるか、直接かじって確かめてみる。
「…………、普通のキュウリだな。本当に普通のキュウリとしか言えない」
早めに味付けできる調味料が欲しいところだ。
ただ、この世界に来る前の表示画面を信じるならこの領地の回りは危険な場所で囲まれているはず。
運良く行商人が通るのを待つか、しっかりと武器を集め魔物を倒せるようになってからでないと買いに行くのは厳しいだろうな。
そもそも購入するための金もない。
やはりまずはこの領地を開拓していくところからはじめるしかないだろう。
よし、とりあえずは小屋だな。
E級木材。
おそらくはそこまで貴重なものではないはずだ。
むしろ簡単に拾えそうな……。
それこそ木の側に落ちているような枝とかじゃないのか?
試しに枝を拾って水晶を近づけてみる。
【名前】 木の枝
【品質】 E[木材]
【損傷度】 0/100
【必要素材】 D級魔石(0/5)
【鍛冶】 E級木材(0/10)→木の棒
品質がEと書かれている。
これでいいのだろうか?
一応木の枝ならそこら中に落ちているので、それを拾って小屋へと持ち帰る。
「……後はこれをどうしたら良いんだ?」
小屋の中へ木の枝を持ってきた。
しかし、何か変化が起きるわけでもなかった。
枝じゃなくて本当に木を木材加工して運んでこないといけないのだろうか?
……俺の力じゃどうやっても無理だぞ。
そんなことを考えながら水晶を見てみると表示が微妙に変わっていた。
【名前】 古びた小屋
【開拓度】 1(0/10)[戦力]
【必要材料】 E級木材(5/5)
【状況】 倒壊の危険あり
『古びた小屋の開拓度を上げますか?』
→はい
いいえ
選択肢のようなものが水晶に表示されていた。
これはかなりゲーム的だな。
もしかして『はい』を押すと勝手に小屋がきれいになったり大きくなったりするのだろうか?
それとも時間経過で大きくなったりするのか?
とにかく今の俺には必要なことだよな。
迷うことなく俺は『はい』を選択していた。
すると、どこからともなく水晶から木の板と釘、それと小さめの金槌が飛び出してくる。
それと水晶には『残り0:30:00』という表示が浮かんでいた。
……ちょっと待て!!
これって三十分の間にこの小屋を俺の力で強化しろってことなのか!?
か、考えてる時間はない。
とりあえずこの小屋に板を打ち付けたらいいんだな。
あまり体を動かすことに慣れていない俺だけど、必死に板を小屋に打ち付けていく。
そして、時間ギリギリでなんとか全ての板を打ち付けることに成功した。
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