第45話
俺はまずエーファを呼びに来た。
大慌てで彼女の家の扉を叩く。
「なんだ……、って主様ではないですか!? も、もうしわけありません。私、生意気な口調を――」
「いや、それは気にしていない。それよりも手を貸してくれ」
「もちろんです! どこを滅ぼしますか?」
エーファが突然物騒なことを言ってくる。
「いや、滅ぼしたりとかはしない。ただ、詳しく説明している時間はない。後からまとめて説明するから」
「わかりました。では、行きましょう!」
エーファは頼られたことが嬉しかったようで笑みを浮かべながら、俺の後ろについてくる。
そして、俺たちは今度はアルバンに会いに来た。
ただ、アルバンはエーファよりも更に早く、簡潔に答えてくる。
「何を潰したら良いのですか?」
「――お前たちは本当に物騒だな」
「はははっ、ソーマ様に逆らう異教徒でも現れたのですよね。一瞬で葬って上げることこそが彼らのためになりますよ」
「いやいや、まだそうと決まったわけじゃない。それにその言葉だとまるで俺が信徒を集めているみたいじゃないか!?」
「えぇ、ソーマ様は神聖武器に選ばれた、言わば神にも等しいお方。あがめ奉るのは当然かと」
「そんなことあるはずないだろう!?」
思わずため息が吐きたくなる。
ただ、これ以上いっている時間もない。
「とにかく来てくれ。大急ぎだ!」
「はっ、かしこまりました」
恭しく頭を下げた後、アルバンが俺の後をついてきてくれる。
「あっ、言われたとおりにみんな集めたわよ。それでどうするの?」
俺たちの館の前ではそわそわしたラーレが待っていた。
そして、俺の姿を見た瞬間に慌てて駆け寄ってきた。
「今はとにかく探し回るしかないな。おそらく遠出はしていないはず。近場から探して回ってくれ。ただ、領内に危険な魔物とか怪しい人物とかが紛れ込んだ可能性がある。一人で回らずに複数で回ってくれ!」
俺は集まってもらった皆にそう指示を出す。
今はどこにクルシュが行ったのか分からない状態だ。
少なくともちょっとした情報でも良いので集めたい。
そのための人海戦術だった。
そして、俺もラーレと一緒に周りを探し出す。
本当はエーファやアルバンが一緒についてきたそうにしていたが、二人でにらみ合って喧嘩を始めてしまったので、そんなに仲が良いのなら、とアルバンとエーファは二人で組ませることにした。
最後に恨めしそうな表情を見せていたが、俺に嫌われないために探すのを優先してくれた。
そして、俺たちも近場の草むらを探していく。
すると、大量の素材が転がっているのを発見する。
「おっ、これは使えそう……って、違う違う。今はそんなところじゃない」
ついついいつもの癖で素材採取しそうになる。
しかし、大慌てでその手を止める。
「でも、こんな所に固まってるなんて変じゃないかしら?」
ラーレにいわれて気づく。
確かに固まって転がっているのは変だな。
それこそ、今まで集めていたのでは……というような気になる。
そんなときに木の枝に隠れるように杖が落ちているのに気づく。
――水晶の杖だ!
でも、どうしてこんな所に水晶の杖が!?
……もしかして、ここで何かに襲われたのか?
水晶の杖を手に取ると周囲を確認する。
「どうかしたの?」
「――どうやらここでクルシュは何かに襲われたようだ」
「……本当なの!?」
ラーレも周りを見渡して周囲を警戒してくれる。
――そうか、ラーレは探索スキルを持っている。
それを強化すれば何かわかるかもしれないな。
それに今のクルシュが連れ去られたという状況なら――。
俺は自身のスキルを発動する。
【鼓舞】と【激昂】を――。
そして、ラーレの能力値を確認する。
【名前】 ラーレ
【年齢】 16
【職業】 探索士
【レベル】 11(0/4)[ランクD]
『筋力』 9+1[×2](63/500)
『魔力』 5+1[×2](67/300)
『敏捷』 20+2[×2](23/1050)
『体力』 10+1[×2](28/550)
【スキル】 『短剣術』3+1[×2](1143/2000)『索敵』4+1[×2](2143/2500)『気配探知』5+1[×2](2879/3000)『隠密行動』2+1[×2](1178/1500)
この[×2]って部分が【激昂】で増えた数値だよな?
いくら何でも増えすぎじゃないのか?
全ての能力が倍になるってことだろう?
「……あんた、一体今何を……。いえ、それは関係ないわね。クルシュの居場所がわかったわ」
ラーレの索敵スキルや気配探知のスキルも二倍になったからか、すぐにクルシュの居場所がわかったようだ。
「どこに居るんだ?」
「ちょっと待ってて。この能力なら――」
ラーレがその姿を消したかと思うと、次の瞬間にはその腕にクルシュを抱えて戻ってくる。
「あ、あれっ、私どうして――?」
困惑するクルシュ。
当然だろう。とんでもない速度でこの場所に戻ってきたのだから――。
俺自身も信じられない表情で自慢げな表情をするラーレを見ていた。
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