　長いバスの時間を過ごした後、観光地へと到着した。皆さんお疲れさまです。一斉にバスを降りていく。背後から、金髪の男が飛び出していく。

「昌子さーん」なにやら彼なりの甘い声で悪魔の名を呼びながら強引に前に進んでいく。

「きゃ！」男の体が美桜に当たる。

「ちっ！」舌打ち。お前自分から当たっといてそれはないんじゃないのって心の中で思う。

「大丈夫か？」そんなに怪我をするほどでは無いとは思ったが、精神的なダメージが無いか心配であった。

「ありがとう、大丈夫」少しずれ落ちた眼鏡を直すと美桜は微笑んだ。あっ、強い娘（こ）で良かったわ。

　一通りの学生が降りたのを見計らって、俺達もバスを降りる。なんだか、ここは有名な観光地で商店も沢山立ち並ぶ。学生達はそれぞれグループを作り、お土産などを吟味しているようである。

「美桜ちゃんは、友達とかと一緒じゃなくていいの？」先程、彼女に声を掛けてくる女の子が数人いたから、決して友達がいない訳ではないないだろう。

「私と一緒じゃ、嫌ですか？」少し悲しそうな感じで答えた。ありゃ、そんなに俺が一人ぼっちになるのが可愛そうに見えたのね。うーん、優しいな美桜ちゃんってホントに優しいわ。

「どうして？嫌な訳ないじゃん！」なんだか照れてしまって彼女から目を反らした。

「良かった」なんだか嬉しそう。そうか俺のような男を一人救えた事に喜びを覚えたのね。君。

　少し向こうを見ると昌子に、男子学生達が群がるように着いていっている。まあ、相変わらずの小悪魔ぶりだぁ、あの女は！高校の時も頻繁にプロポーズされては、片っ端から男を振っていた。泣かされた男は数知れず。まあ、俺もその中の一人なんですけどね。ほっとけ！

「亮介さん、あの店を見てもいいですか？」美桜は可愛いキャラクター系の店を指差す。

「ああ、いいよ」俺は特に見たい物は無いので、彼女に行き先は任せる事にした。

「きゃー、可愛いい！」彼女は牛のリュックを背中に背負ってみせた。おお、確かに可愛いわ。大きい牛の人形が歩いているように見える。

「おい、見ろよ！あのブス可愛いだってよ」先程の金髪が美桜を見て笑っている。周りの男達も爆笑しているようだ。

「自分はどれだけのもんだっつうの」さすがに俺は腹がたったので一言いってやる。

「おい、お前！今何か言ったか！！」はい、言いましたがなにか？男は意気がって俺の胸ぐらを掴んでくる。

「ちょっとそこ！何やってるの！」その声は小悪魔、いや昌子の声であった。

「あっ、昌子さん！いや、コイツがケンカ売ってきたんでつい！」金髪が昌子を見てデレデレしている。お前もきっと泣かされるぞ。

「美桜ちゃん、行こうか」俺がそう言うと美桜はうなずいた。

「亮介さん、ありがとう……」彼女が礼をいう。

「いや、でもさ美桜ちゃんもその眼鏡外したら可愛いのにね。アイツら知らねえから」あら、俺ってもしかして要らんことを言ってしまったかな。美桜が歩みを止めた。

「やっぱり、亮介さん……、可愛い彼女のほうがいいですよね……」えーと、何を仰っておられるのでしょうか？まあ、お付き合いするなら不細工よりは可愛いほうが良いですが……。

「えーと……」なんだか言葉に詰まってしまった。

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