第19話 君と乾杯
「カンパーイ」って、もう結構な量飲んでるじゃん……。俺が風呂に入っている間に昌子は一人晩酌していたようだ。
「はぁ……」彼女は赤い顔をして溜め息をついた。お前、もしかして酒弱いんじゃねえの。
「飲み過ぎなんじゃないか……」ビールは四缶目に突入している。
「うるせー、お子ちゃまの癖に偉そうに言うな……」こりゃ完全に酔ってるな。
「お子ちゃまって、同じ歳だろ……」3ヶ月ほど俺のほうが後に生まれた事は認めるが……。俺のコーラを飲んだ。
「ふー……」って、言いながら彼女が俺の肩にもたれ掛かってくる。風呂上がりのシャンプーの良い香りと少しのアルコールの臭いが俺の鼻を
「お、おい、くっつくなよ!」勘違いするやんけ!
「いいじゃん、減るもんじゃないし……」彼女はピンクのパジャマとその上に、黒地のパーカーを着ている。ちょっとだけ胸元が見えてドギマギしてしまう。
「いいから……」間違いが起こっては困るので両手で彼女の体を向こうに押した。
「ふん、ケチ……」いや、貧乏ですけどケチではございません。
「……本当に、美桜ちゃんとは、何もないの……」
「お前はしつこいな!美桜ちゃんとは何もございません」美桜というか誰とも何もございませんが……。
「そうなんだ……、まあ、信じてあげよう!」俺の背中を力任せに叩いてくる。こいつ酒癖悪いな。
「……」少しの沈黙。
「ねえ、亮介……、本当に私達やり直さない……」昌子が目を閉じて口を開いた。
「な、なにを……」やり直すんでしょうか?酒に酔ってまた、俺をからかっているのか?あの時のあの失望感を俺は二度と味わいたくない。
「……」昌子は無言のまま、目閉じている。
「なんじゃこいつ、寝てるやん!?」昌子はソファーの肘掛けに体を預けて眠っている。「しょうがねえな」俺は部屋から枕と毛布を一枚調達し彼女の体を楽な姿勢に変えてから、被せてやった。
「うーん、……亮介の匂いだ……」夢心地のまま彼女は呟いた。
「な、なに言ってるんだ、こいつ……」彼女の寝言を聞いて、こちらが恥ずかしくなってしまう。
「
テレビの電源を入れると、以前やっていたドラマの再放送が流れている。部屋の明かりを少し落として、ぼんやりとそれを見ていた。
ドラマが終わりエンドロール、あれ聞き覚えのある歌声……。
主題歌 送り火 歌 MION 作詞 MION 作曲 ……
それは、美桜の歌であった。以前にも聞いた事はある歌ではあったが、本人を知ってから聞くとやはり、感覚が違う。
「うーん、負けないから……」突然、正直の声。また喧嘩の夢でも見てるのかいな。本当に暴力的な女だ。
そのまま、ぼんやりとテレビを見たまま俺も眠ってしまった。
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