第20話 君と朝

 朝日が部屋に差してくる。昌子はその光に反応して目を覚ます。


「あー、少し頭が痛いな……」実家から出た解放感からか、何時もよりも多目にビールを飲んでしまった。たいていの時は一二本飲むと眠くなって布団に入ってしまうのだが、昨晩は買ったビールを全て飲んでしまったようである。

 なにか、亮介と話をした記憶はあるのだが、途中からはよく覚えていない。


「あれ?」今更だけども、なぜ自分がリビングで寝ているのか解らなかった。「えっ!!」すぐ目の前のソファーに亮介が寝ている。「ええっ!!!」自分の姿を確認するとパジャマの胸元のボタンが二つほど外れていて、今にも胸が飛び出しそうになっていた。彼女はそれを慌てて整えた。「まさか、亮介……!」一瞬、この男がボタンを外したのかと疑ってはみたが、亮介にそんな度胸が無いことは、自分がよく解っている。

 昌子は、起き上がると自分に掛けられていた毛布を亮介の体に被せた。


「お寝坊なひつじさんね……」そう言いながら、彼女は亮介の頬に軽く口づけをした。


「……」亮介は人差し指で、彼女の口づけした後をポリポリと掻いた。


「寝顔は可愛いね」初めて見る亮介の寝顔に笑ってしまった。


「昌子……」突然、亮介が彼女の名前を呼んだ。


「えっ、もしかして起きてるの?」昌子はキスした事を気づかれたのかと思い、顔を真っ赤にした。その胸の鼓動が激しくなる。


「頼むから、頼むから……、殺さないでくれ……」それは寝言だった。うっすら目に涙を溜めている。


「どんな夢、みてるのよ!」軽く亮介の尻の辺りを蹴った。


「う、ううん、あっおはよう……」亮介が目を擦りながら口を開いた。


「ふん!」なぜ、昌子の機嫌が悪いのかを亮介には解らなかった。

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