第69話 君と誤解

「それは本当なのか!?」綾は猛烈に驚いた。俺に美桜の説得を依頼しておきながら実際に彼女が歌を唄うと言ってくれるとは思っていなかったようである。


「彼女は思い違いをしていたみたいなんです。実際は彼女の歌声を待っている人が沢山いる事をきちんと説明してあげたら、自分から歌を唄ってくれたんです」


「それは、私達も何度か話し合いの場所を設けて説得はしたんだが・・・・・・・、まさか、亮介君・・・・・・・・、MIONとなにかあったんじゃ・・・・・・・」彼女は目を見開きながら少し体を後ろに逸らした。


「な、何馬鹿な事を言ってるんですか。僕達はただ、2人でカラオケに行っただけです」俺は特に隠すことではないので、そのまま告げた。


「本当に・・・・・・・?」なぜか綾が口を尖らせて少し上目使いで聞いてくる。やはり自分の所のタレントのスキャンダルには敏感なのだろう。さすがに社長だと俺は感心する。


「嘘を言う理由がないでしょう」俺はため息をついて返答をする。


「ちょっと亮ちゃん!」ちょうどそこへ桃子が返ってきた。


「あっ、お帰り・・・・・・」


「あの後、MIONさんとラブホテルは入ったんじゃないわよね!」何を言うとんねんお前は、カラオケボックスに行くって説明した筈だが・・・・・・・・。


「何を・・・・・・・、だから俺は美桜ちゃんと・・・・・・・」


「まさか、君は・・・・・・無理やりMIONを手籠めにして!?」綾が顔を引き釣らせて、あり得ない事を言う。


「もう、ややこしい事を言うなよ!本当にカラオケに行って二人で歌っただけですよ」俺は少し頭に血が上って怒ったように言ってしまう。そこに丁度、二階から美桜が下りてきた。「あっ、美桜ちゃん!」俺は彼女に助けを求めるように視線を送った。

 

「・・・・・・」なぜだか彼女は恥ずかしそうな顔を見せてからくるりと背を向けると二階の自分の部屋に戻って行った。その彼女の行動がどういう意味なのか俺は理解出来なかった。


「・・・・・・・亮介君」「・・・・・・・亮ちゃん」二人は軽蔑するような目で俺の顔を見た。


「ええい、もう知らん!」俺は両手で顔を覆いながらダイニングのソファにダイビングした。

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