第17話 君とカレー

 引っ越しの作業が終了し、近くの食品スーパーへ買い出しに来ている。昌子もよく知っている店で勝手もよく解っているようである。


「亮介、今晩なにが食べたい?」カートを押しながら昌子は色々な食材を物色している。玉ねぎを手に取りその大きさを確認しているようである。


「うーん、カ、カレーかな?」ボ○カレーじゃないやつ。


「えっ、カレーでいいの?もっと、違うものでも大丈夫よ」どうも料理には自信があるようである。


「いや、カレーが食べたい」なんだか、舌がカレーになってしまっている。それにカレーならまず不味くなる事はないだろう。


「そう……、それじゃあカレーにするか。人参とジャガイモ……牛肉、あっカレーのルー選んできてよ。出来れば二種類違うメーカーのやつ。中辛がいいわね」昌子に指示されたまま、カレーのルーを物色する。種類が沢山あるので正直迷った。まあ、有名どころのヤツを二種類買っておけば文句は言われないだろう。なんだか、お母さんと一緒に買い物に来た子供のように扱われているような感じになってきた。

 お菓子もかってもらおうかな。


 ルーを手に持って昌子を探す。なかなか、見つからないと思ったら、酒類のコーナーにいた。


「なに、酒買うの?一応俺、未成年なんだけど……」今は六月、俺の誕生日は七月である。


「知らないの?カレーに入れると美味しいのよ。それに私はもう大人だから飲んでもいいのだ!」大人!大人だと!……大人ってもしかして!!「あんた、なんか変な想像してない?」お前はエスパーか!


「いえいえ、全然……」首を激しく左右に振る。


 昌子は六本セットになったビールを籠に入れる。あれ、そんなにカレーにいれないでしょう。俺はそっと、見つからないように籠にお菓子を入れる。


「やっぱり、亮介はお子様だね」俺の放り込んだお菓子を手に取ると昌子はニッコリと笑った。




 

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