第2話 君と再会
あの交通事故から半年が経過した。リハビリを終えてやっと自宅療養をする事になった。
あの時、男の子を助けようとして車に跳ねられそうになった女の子を、俺が助けて車に跳ねられたそうだ。早口言葉か……。
男の子は怖くなったのかその場から逃げてしまったようだが、女の子は責任を感じたのか病院に何度も見舞いに来てくれたそうだ。
一月ほど意識不明で生死をさ迷っていたそうなのだが、正直言って俺にはその自覚は無かった。目が覚めた時は父も母もえらい喜んでくれたが、あの女の子が事故にあうのなら、お前で良かったと言う始末。なんだか知らないけれど、えらくあの
ところで大学というところは如何なる理由があっても、単位が足りなければ進級させてもらえない非情な場所だそうだ。入学式直後に交通事故にあい、一日たりとも授業に出席をしていない俺を進級させてくれる訳もなく、めでたく留年が決定した。もう季節は既に秋、半年遊べると考えて観念しよう。
お金は事故を起こした男からガッポリ取ってやると傷害保険会社にお勤めの父上様が張り切っておいでなので任せておくことにした。
「それにしても……」せっかくバイト料を貯めて買った俺のZX10Rは、お父上のプリウスの隣で眠ったままであった。
自宅療養になったからといってもしばらくはバイクを乗り回すような事は出来ないであろう。やむを得ずZX10Rを眺める事が俺の唯一の趣味になってしまった。
しばらくしてから、リハビリも兼ねてアルバイトを始める事にした。簡単で時間に融通のきくバイトを探した。見つけたのはゲームセンターの従業員。少し重い荷物を運ぶ事があるが基本はユーホーキャッチャーの管理、不正な事をする人がいないかを見張る仕事であった。楽勝、楽勝……と思っていたら、人形が取れないや、アームが弱いや、果てには思っていたより金を使ってしまったから返してくれなど、訳の解らんクレーム対応。
無抵抗主義の俺はイザコザはご面こうむりたいのだが……。
「あの……、すいません……」女の子が声をかけてくる。きっと人形の位置を変えてくれってリクエストだろう。いいですよ、いいですよ、職権乱用お構いなしに乙女の願い叶えますよ。
「あ、あれ?」それは見覚えのある顔であった。上下黒のコーディネート、牛乳瓶の底のような眼鏡、適当に結んだ髪。
「キチンとお礼が言えてなくて……、あの時は、本当にありがとうございました」少女は深々と頭を下げた。
「あれ、よくここが判ったんだね」そういえば眼鏡を外した顔が可愛かったんじゃ無かったかな……、事故の最中だったので記憶はあやふやだった。
「お家で聞きました。ここでアルバイトされてるって……」女の子は少し顔を赤くしている。
「ああ、わざわざ来てくれたんだ」律儀な子だなと感心した。
「あ、あの……、宜しければこれを!」両手で小さな紙袋を手渡される。
「え?」突然の事に驚いた。
「それじゃ、お邪魔でしょうから失礼します……」彼女は恥ずかしそうに後ろを振り向くと帰ろうとする。
「あ、あの、君の名前は?」なぜか、彼女の名前が知りたくなった。俺は事故からさっきまで全く彼女の事に興味がなかった。彼女を助けたという意識すら杞憂だったのだから……。
「
彼女がくれた袋を開けて中を確認すると、交通安全のお守りが入っていた……。
どういう意味なん?
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