第4話 君と自己紹介
「隣に座ってもいいですか?」美桜が聞いてきた。
「ああ、いいよ」俺はバスの窓側に席を詰める。どうやら、まだ友達は出来ていないようだ。人見知りなのだろう。
「あー、美桜ちゃんおはよう!」女の子が美桜に声をかけてくる。
「おはよう……」美桜が返答をする。なんだちゃんと友達がいるじゃないか。
「あの女の子と一緒に座らなくていいの?」どうせなら知り合いと楽しく時間を過ごしたほうが良かろうと謂ってみる。
「ううん、ここでいいです」美桜は顔を赤らめながら下を向く。そうか実はあの女の子とは仲が悪いのか。少し不味いことを聞いてしまったと反省する。なんだか少し気まずい感じがする。
「あっ、そうだ。これ食べる?」俺はカバンからお菓子を出す。
「あっ、それ付けてくれてるの?」美桜が俺の鞄を指差した。そこには彼女のくれた交通事故のお守りがぶら下がっていた。
「ああ、せっかく貰ったからね。また交通事故にあったら困るからね」とんでもないことだ。「はい」俺は彼女にキャラメルを数個手渡した。
「わぁ、ありがとう」とても嬉しそうに微笑む。よっぽどキャラメルが好きなのだなと感心した。今時、キャラメルでここまで喜ぶ
しばらくしてからバスが発車する。一つ学年が上の女性がバスガイド代わりにマイクを握る。
「みなさーん、おはようございます!」彼女は自分の耳に手を当てる。
「おはようございます……」皆、恥ずかしそうな小さな声であった。
「元気がないぞ!おはようございます!」大きな声で再度挨拶をする。
「おはようございます……!」ひとまず、皆さん大きな声を出した。
「私は、二回生の
「それではオリエンテーションの説明です」昌子は段取りを説明し始めた。
「まず、昼食を高速道路のインターチェンジで取ります。一時間ほどの休憩の後に、再びバスで移動して観光です。夜はホテルでオリエンテーションの予定です。そして明日は自由行動で、夜はキャンドルサービス、で三日目の朝にバスで移動して夕方解散でーす」昌子はざっくりと予定を説明した。
「はーい」皆さん元気に返事が出来るようになったようだ。
「それでは、少し時間がありますので、順番に自己紹介していきましょうか!」昌子が提案した。
「それでは、まず私から行きますね。先程も言いましたが名前は篠原昌子といいます。経済学部二回生です。出身は兵庫県の神戸です。ちなみに彼氏募集中ですので、ヨロシク!」昌子はウインクした。
「先輩は年下もオーケーなんですか?」一年生の男子が手を上げて質問する。
「年下も年上もウェルカムよ」言いながら手招きするような仕草をする。
「ヒュー!」なんだか男子のテンションが上がっているようだ。
マイクを順番に回していく。俺の番がやって来た。
「あっ、えーと、経済学部、名前は瀧山亮介です。趣味は……バイク弄りと、空手を少々……です」恥ずかしくなり、俺はマイクを後ろに渡した。
「亮介さん、オートバイ好きなんですか?」美桜が聞いてくる。俺に話を合わそうとしてくれている優しい
「ああ」実際あの事故の後、バイクに乗れていないので完全にバイク弄りが趣味になっている。
「今度、乗せてくださいね」小さな声で言ってきた。
「ああ、いいよ」まだ、一人でも乗ったことないんですが、社交辞令として受け取っておこう。
「次は、あなたよ」美桜の番が回ってきた。
「名前は、梵美桜といいます。あっ経済学部です。趣味は……歌を、いえ、カラオケです」恥ずかしそうに、美桜は座った。
「二人は恋人同士なのかなぁ?」昌子が美桜の自己紹介の後、突っ込んでくる。
「違います」俺は間一髪入れずに答えた。そんな訳ないだろう。男と女が並んで座ったら恋人なら、今まで何人恋人がいたか解らんわ!俺はそのまま窓の外を見た。
あっ、旅行日和のいいお天気だわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます