第12話 君と二人乗り

「ああ、疲れた……」大学のオリエンテーション旅行が終わり家に帰った。久しぶりに愛しいZX10Rに会える。ああ、やっぱりお前が一番の別嬪べっぴんさんや!お前が好きや!!俺はZX10Rのカウルに頬ずりしてしまう。


翌日の朝「ああ、これお父さんが良いって言ったから」言いながら巾着きんちゃくの袋を俺に渡す。


「お、おおおおおおおお!!!!!」なんとその中身は、ZX10Rのデザインに合わせたヘルメットだった。「こ、これは!?」驚きのあまり舌を噛みそうなった。


「ああ、それあの美桜って女の子があんたにって買ってきたのよ」そう言えばあの事故で買ったばかりのヘルメットを無駄にしてしまったのだった。しかし、このヘルメットは俺がなけなしの金で買った物よりもずいぶん高級そうなものであった。


「ヘルメットを渡してくれると云うことは、バイクに乗っても良いって事か!?」あの事故以来バイクに乗ってはいけないと父親にきつく言われていたのだ。


「ええ、せっかく買ったバイクも勿体ないしね。でも事故には気をつけて運転するのよ。それと、夜にお父さんが話があるって言って……」母の言葉が終わる前にZX10Rを押しながら道路に飛び出した。


 目の前に人影が見えた。

「あっ、美桜ちゃん!このヘルメットありがとう!滅茶苦茶カッコいいよ!」俺はテンション高めに美桜にお礼を言った。

「約束ですよ。バイクに乗せてくださいね!」


「えっ!?」そういえば旅行の間にそんな約束をしたような気がする。

 美桜が後ろに隠すように持っていたヘルメットを目の前に差し出した。それは、俺が貰ったヘルメットとお揃いであった。そうか、二個セットで買うとお得なやつやな。買い物上手ですな。

 彼女のヘルメットは真っ赤な色であった。


「やっぱり、……嫌ですか……」なんだか悲しそうな顔をした。そんなにバイクに乗りたいのかこのは!


「嫌じゃないよ。よし、後ろに乗って……!」俺は先に自分がZX10Rに股がった。美桜はヘルメットを被ると後ろに座る。あれっ、ミニスカート!バイク乗るのにそんなの普通は履いてくるか!パンツ見えるぞ!パンツ見えるぞ!っと心で二回雄叫びを上げた。


「じゃあ、行くよ!!しっかりつかまって!」美桜は俺の俺はエンジンをかけてから、スロットルを回す。ZX10Rが走りだした。まさか、初めて乗るのに女の子と2人乗りになるとは思ってもなかった。


「あれ?亮介……」亮介の家から飛び出してきたオートバイを見て篠原昌子は驚いたようであった。


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