第24話 君と洗濯

「実は明日、事務所の社長がこちらに来る事になりまして……」夕食の時間、突然美桜が口を開いた。


「へっ?なにをしに来るの」昌子が答える。

「一応、引っ越しを伝えたのですけど……、凄い怒られて……、あと、環境を確認しておきたいって……」なぜか、俺の顔を確認する。なに、俺が何か関係あるの?「シェアハウスに、男の人がいるって言ったら……、去勢してやるって……」


「ブー!!」俺は米粒を吹き出した。


「き、汚いわね!!」昌子は上手いことかわした。


「いやいや、去勢って!元々はここ俺の家だし!」テーブルに手足を縛りつけられて、改造されるどこぞのヒーローを思い出した。それも怖そうなオッサンに!


「キチンと事情は話したんですけど、納得してもらえなくて……」美桜はうなずく。いや、事情ってたぶん誰が聞いても、あのマンションに住んでいたほうが良いって言うと思うぞ。


「そんなに怖い人なの……?」昌子がビールを飲む。あなた、毎晩晩酌するのね。


「ええ、中学生の時からお世話になっているんですけど……、誰も逆らえないんです」


「よく、そんな社長に休業の話が出来たんだな」今日のお米よく炊けてる。今日の食事当番は俺であった。結局、夕御飯は当番制で作る事が決まった。


「まあ、半分無理やり言いくるめたんですけどね。新しい歌を書くのにもっと色々な経験したいって……、たとえば恋……とか……」箸の先を咥え、顔を赤くして俺の顔を見る。なんだ、誰か紹介しろってか?残念だが、大森ぐらいしかいないぞ。


「恋か……、いいよね!美桜ちゃんの次の歌楽しみ」昌子は暢気な顔をして食事を続けている。昼間のあの男と居た時の顔とは別人のようであった。「あっ、そうそう、洗濯は亮介の分は別に洗ってね!私達の分は二人で当番制にするから!」突然話題が変わる。


「な、なんだよ。藪から棒に……」まあ、俺もそのほうが助かるが……。


「一緒に洗ってあんたの下着と私達の下着がが絡んだらキモいし、私達の下着がなくなったら嫌だから」この女、殺したろか!!小さな殺意が芽生える。


「くすっ!」美桜が笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る