第42話 君と背中
あの音楽の流れる商店街に到着。この商店街には並行するように歓楽街が並んでいる。その通りをZX10Rで往復する。「畜生!どこなんだ!!」桃子の姿はどこにも見つからない。
しばらく捜索を続けて諦めかけたその時、ラブホテルの前で
「見つけた!!」それはまさに奇跡のようなタイミングであろう。俺はZX10Rをホテルの目の前に停車させて飛び降りサイドスタンドを下した。
「りょ、亮ちゃん!?どうしてここに!」ヘルメットは外していないがZX10Rを見て俺である事を認識したようであった。
「
「お前!一体何を・・・・・・・!」男がそこまで言ったところで反射的にその顔面に
桃子は疾走するZX10Rの後ろで、俺の背中に力強くギュッとしがみついていた。
しばらくの距離を走ってから、家の近くにある川の土手の上にZX10Rを停車させて彼女を下す。
「あははははは!亮ちゃんなにやっているのよ!可笑しい」桃子はケラケラと笑っている。まるであの出来事が無かったかのような対応であった。
「何が可笑しいんだよ!何でこんなことをやってるんよ!
「・・・・・・」桃子は急に押し黙ったように静かになった。
「何か言えよ!?なぜなんだ!」
「ちっ、何も知らないくせに・・・・・・。こんな事ってなんだよ!」久しぶりに桃子がこのモードに入った。急に人が変わったように機嫌が悪くなり俺の事を睨みつけている。
「こんな・・・・・・、お、男と寝ないとお前は仕事が出来ないのかよ!!」俺がその言葉を発した瞬間、彼女は俺の胸の辺りを小さなコブシで力いっぱい叩いた。
「何よ!!何も知らないくせに・・・・・・・、私の事を何も知らないくせに・・・・・・!そうよ!どうしてくれるのよ!これで芸能界に居られなくなったらどうしてくれるのよ!!責任を取ってくれるの!!」彼女は俺の胸ぐらを男のように掴み上げた。俺はその手を払いのける。
「ああ、知らねえよ!!そんな事は知りたくもない!そんな芸能界なんて糞くらえだよ!!」最近、美桜や昌子、そして作品を作ろうとする
「そう・・・・・・、もう私の事はほっておいて!!」そう言い残すと彼女は逃げるように歩いていく。その表情はなぜか悲しそうに見えた。
「勝手にしろ!!」俺は再びZX10Rにまたがりエンジンをかける。
そのまま走りだそうとしたが、やはり彼女をこのまま置き去りにしていくことは出来ない。
結構な距離を歩いて行った桃子の前までZX10Rを走らせ停車する。「とにかく・・・・・・後ろに乗れよ」彼女にZX10Rの後ろに乗るように即す。
「・・・・・・」返答は無い。彼女は俺の言葉に反応せずに沈黙している。その瞳には少し涙が溜まっているように見える。
「早く乗れよ!置いていくぞ!」
「・・・・・・」相変わらず返答は無かった。俺も無言で首を振り、もう一度後ろに乗るように即した。
彼女は無言のまま、ゆっくりとZX10Rの後ろに跨った。こんな時になんだが、彼女のミニスカートの中の白い下着がバックミラーに映り少しドギマギする。「もう、イヤらしいわね!」言いながら俺のヘルメットをパチンと叩いた。
「うるせー!み、見てねえよ!!」俺は明らかにわかる嘘を吐きながらZX10Rを走らせた。桃子はもう一度俺の背中に強くしがみついた。揺れているのが彼女の震えなのかZX10Rの振動なのかは今の俺には判らなかった。
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