第102話 君とメンズ服売場
「ねえ、亮介・・・・・・・、ちょっと見たいものがあるのだけれど付き合ってくれない」昌子は少し上目遣いでお願いをするように呟く。時間は正午過ぎ、まだまだ余裕があった。
「ああ、別に構わないけれど、一体どこに?」俺には昌子がどこに行きたいのか皆目見当がつかなかった。
「じゃあ、行きましょう」俺達は店を後にした。
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「ちょっと!二人でまたどっかに行くみたいよ!!」桃子は二人が店を出た瞬間を見計らって立ち上がった。
「ちょといい感じでしたよね!まさか・・・・・・・、あのままホテルとかに・・・・・・、なんてねえ」恵が冗談のつもりで言ったが、他の三人の形相は一気に激変した。
「ホ、ホテル!?」美桜は顔を真っ赤に染める。
「そんな抜け駆けはゆるさん!!」綾は拳を握りしめる。四人は慌てて二人の後を追いかけて行った。
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「なんだ、ここは・・・・・・・」俺達はメンズ専門の衣料を扱う百貨店の別館の前にたどり着いた。ブランド物に無頓着な俺はこういった場所は無縁の存在であった。
「さあ!」彼女は俺の服の袖を掴むと導くように店の中に入っていく。
「いらっしゃいませ!」メンズ専門の店ではあるが、女性客も多い。きっと意中の男性への贈り物など、上等な品をこういう場所で購入するのであろう。
「一体何を買うんだよ・・・・・・・・」俺は自分この場所に不似合いである事をひどく感じている。なんだか店員達の目が冷やかなような気がしてしまう。まあ、そんなのは自分の思い込みなのであろうが・・・・・・。
「そうね・・・・・・・、六階に行きましょう」エスカレーター横にある案内板を一通り見てから、昌子は目ぼしい物に検討を付けたようにエレベーターのほうに歩いて行った。俺は昌子の後をまるで召使のようにヘコヘコしながら着いて行った。
「六階ねえ・・・・・・・」エレベーターの中に表示された売り場案内の表示を確認する。六階は紳士スーツの売り場のようであった。箱の中には、俺と昌子だけであった。なんだか気まずい空気が流れる。「あの・・・・・・・、北浜とは最近・・・・・・、どうなの?」なんだか会話が思いつかなくて、北浜の名前を口にしてしまう。
「なんで北浜さんなのよ・・・・・・・?」昌子がエレベーターからガラス越しに外を見る。この箱は壁面がガラスになっており、上っていく街の景色を望めるようになっている。六階に到着した合図の後に、エレベーターの扉が開いた。目の前には高級そうなスーツが沢山並んでいる。
「すげえ、高そうだな・・・・・・・」そういえば大学に入学する時にスーツを買ったが、洋服に赤山で19,800円であった。近くにあるスーツの値札を何気なく見る。「4、40万円!?」俺にスーツ20着は買えるじゃん!愕然とする。
「亮介、こっちよ!」昌子は俺の手を引っ張りながら縦横無尽に売り場の中を歩いていった。
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