第48話 お披露目パーティー(後編)
「それでは、次に、新郎新婦によるこれまでを、映像でご覧になってください」
正樹がプロジェクターの電源を入れて、DVD映像を投影する。
まずは、僕と真澄が出会った頃の写真を複数枚。
赤ちゃんだった時の云々はさすがに恥ずかしいのではしょった。
「僕と真澄が出会った頃です。この時は、こんな感じで二人でよく遊んでました」
「コウはこの頃からマセてたから、ほんと大変やったわー」
小学校に上ったばかりの頃を思い出して、懐かしそうにつぶやく真澄。
「なにあれ?「こんいんとどけ」って」
「お約束の「結婚の約束」って奴?さっすがー」
あー、そういうふうにも見えるよね。
「実は、これには裏話があってやな。コウのやつ、「こんいんとどけ」に記入しようとせえへんかったんよー」
いつの間にか、敬語を止めて、ノリノリで写真の裏話を解説し始める真澄。
「いやいや、だってさ。この年で結婚なんて無理あるでしょ。だから、意味がわからなかっただけだって」
思い出しながら、ツッコミを入れる。
「と、コウはこんな風に、小学校の頃から、とってもマセてたもんで、ウチは追いつくのに苦労したもんで……」
愉快そうに、完全にノリノリで色々暴露していく真澄。次に写されたのは、小学校高学年から中学校、高校にかけての写真。
「わぁ。相変わらず仲良しって感じ」
「でも、中高別だったんだよね」
「そうそう。コウ君が編入して来た時は大騒ぎになったよね」
「ますみんと、校内でラブラブだったよねー」
料理部の人たちは、あの騒ぎを覚えているのか、懐かしそうに語っている。
「ちなみに、真澄とは高2の春から付き合い始めたんだけど、その経緯がまたひどくって。中1の頃から何度もデートに誘ってたんだけど、真澄は全然気づいてくれなくてさ……」
付き合うまでの事を思い出して、少しおおげさに言ってみる。
「それ言うなら、コウがはっきり言わんのが悪いんやって。ウチも何度もアピールしたんやけど、コウの奴は、大体スルーしてたんよ。たとえば……」
負けじと真澄もツッコミを入れる。新婚旅行の時に語り合った話だけど、お互いに、微妙にすれ違っていたんだよね。
「そうそう。そういえば、ますみんがコウ君の事を意識したのはいつ頃?」
「ああ、まだ聞いたことなかったよな。というわけで、どうだ?」
朋美と正樹の二人から、マイクを向けられる。
「僕は……小6の頃かな。受験絡みで色々あって」
「ウチはもうちょい前やったな。小4辺りやったかな」
違う中学に通うことになって気づいた恋心。
僕に勇気をもらっていつしか芽生えた恋心。
お互いにそんなことを思い出しながら、語る。
「いやー、本当に甘酸っぱい。甘酸っぱすぎる!」
「そんな青春送ってみたかったよねー」
「ねー」
甘酸っぱいか。特に意識したことがないけど、でも、僕たちの思い出は、甘くて、でも、同じ中高じゃなかったから、時に酸っぱかったのかもしれない。
付き合い始めてからの写真が流れる。
GWの鎌倉旅行、真澄の誕生日。
真澄の高校に編入した時に、クリスマス・イヴに、バレンタインデー。
二人で過ごした様々な思い出。
「わー。ますみんってこの頃に、お泊り旅行なんて行ってたんだー」
「あの時は恥ずかしそうに否定してた癖に、コウ君としっぽりやってたとは」
「コウ君は掴みどころがなかったけど、外ではこんな顔をしてたとはな」
「コウ先輩、手を出すのが早かったんですね……」
歴史研究部の同期から見ると、「掴みどころがない」だったのか……。
そして、奈月ちゃん。手が早いって……。
「いやいや、奈月ちゃん。どちらかというと、真澄の方が積極的だったんだって!」
「コウー?そこでそんな事バラすのはあかんでー?」
「ご、ごめん。ついノリで……」
秘め事に関するところまで暴露するのはちとやり過ぎだ。反省、反省。
そして、いよいよ、入籍した時の写真。区役所で撮ってもらったものだ。
「そんな感じで、去年の4月に先に籍だけいれることになったんだ」
「もうすぐ一年になるんやから、早いもんやよねー」
入籍直後の写真を見ながら、そんな事を語りあう。
「というわけで、松島宏貴と中戸真澄の半生でしたー」
入籍記念の写真を流し終えて、DVD映像は終わりを告げた。
「えー?入籍してからの、ラブラブ写真は無いのー?」
「ねー。新婚旅行とか行ったって聞いたけど。
「そういえば、京都旅行の時もラブラブだったな……」
「ですよね、ほんと熱々でした」
サークルの新歓旅行だったか。
確かに、あの時は、はしゃぎ過ぎた気がする。
「はいはい。結婚した後の事は、二次会でたっぷり暴露してもらうということで。いいよね?ますみん?」
「さすがに全部は恥ずいんやけど……ちょっとなら」
ということで、二次会で暴露コースは決定。
その後も、歓談の席でさんざん冷やかされたり、祝福されたり。
最後には、ケーキ入刀の儀をやったりして。
お披露目パーティーは無事に幕を閉じたのだった。
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