第13話 僕の幼馴染は看病がしたいらしい
(なんか、だるいな……)
目が覚めたときに、真っ先に感じたのがそれだった。身体がなんだか熱っぽいし、身体の節々も少し痛い気がする。
朝食の時。
「なあ、コウ、大丈夫か?」
「あ、ちょっとだるいけど、大丈夫、大丈夫」
まだ目が十分に覚めてないんだろう。
「うーん。ちょい、体温計持ってくるな」
共用の救急箱から、体温計を持ってくる真澄。
「ほい、それで熱はかりな」
「大丈夫だと思うんだけどなあ……」
と思ったのだけど、熱はなんと38.5℃
「ああ、やっぱり。結構熱出とるやん」
心配そうな顔。
「大丈夫だと思ったんだけど。今日は講義休むか」
同じ講義に出る同期の友達に、風邪で休むことを伝える。先生によるが、体調不良を伝えておけば、欠席扱いにしないでくれるところもあるのだ。
「とりあえず、今日は家で養生せなあかんよ」
「わかってる。ベッドでおとなしくしとく。真澄は行ってきて」
パジャマに再び着替えて、ベッドにごろんとなる。熱があると自覚すると、身体がどんどんだるくなってくる。
(ああ、だるいなあ)
そんなことを思っていると、ふと、冷えピタが僕のおでこに貼られている。
「ほい。これで、少しはマシやろ」
優しげな声。
「ありがと。大学は?」
「今日はウチも自主休講やよ」
「別に、これくらい大丈夫なのに」
「ウチら夫婦やろ?これくらいさせてえな」
「……そうだね。ありがとう」
真澄が望んで看病してくれているのに、今更遠慮するなんて、らしくないか。
「なんや欲しいものあるか?」
「あんまし、いや、スポドリとゼリーが欲しいかも」
食欲はあんまりないけど、水分とゼリーみたいに簡単に食べられるものは摂取しておきたかった。
10分くらいして、近くのコンビニに行ってきたらしく、スポドリとゼリー飲料を差し出してきた。
ごくごくごく。スポドリを飲むと、少し生き返った気分になる。
「ちょっとマシになったかも」
「それはよかったわ」
「……」
「……」
しばし、お互いの間を沈黙が支配する。
「えーと、別につきっきりじゃなくて大丈夫なんだけど」
「ウチがつきっきりで看病したいんや」
「そんな願望があったとは」
「そういうのもええやろ?」
「確かに」
なんだかんだで、風邪で弱っていると、こうして側に居てくれるのは助かる。
「とりあえず、風邪のときは寝んとな」
冷えピタの上からおでこに手を当てられる。
「なんか、昔、母さんにこうやって看病してもらったっけ」
小学校だったか、幼稚園だったか忘れたけど、僕が眠りにつくまでこうして側に居てくれたっけ。
「真澄と家族になったんだなって実感するよ」
「これまでは実感してなかったん?」
少し不満そうな顔。
「いや、そういうわけじゃないけど。真澄がお嫁さんだとは思っていたけど、今は「僕らの家庭」があるんだなって」
「ウチはとっくにそう思っとったよ?」
「実感するのが遅くて申し訳ない」
身体は相変わらずしんどいけど、こうして二人で会話できるのが心地よい。
気がついたら、枕元にいる真澄を抱きしめていた。
「ちょちょ。恥ずかしいんやけど」
「なんか、こうしたくなって」
「嬉しいけど。風邪がようなってからな」
仕方ないな、という顔をして引き剥がされる。
「コウがこうして甘えてくれるのも新鮮やな」
僕の瞳をじっと見つめながらはにかむ彼女を見ていると、少し体温が上がってきたような気がする。
「風邪のせいかも」
「それでもや」
そんなことを話している内に、少しずつ眠気が出てきた。
「眠くなってきた……」
「ゆっくり休んでな」
「うん。ありがとう」
身体は風邪でだるいけど、こういうのもたまにはいいのかも。そんなことを思った一日だった。
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