7■二度目の商売1

 安定した収入が欲しい。

 家が欲しい。

 店が欲しい。

 生活費や経費もろもろを超える収入があって、常に貯蓄に回せるような商売がしたい。


 数日悶々と悩んでいたが、商売するなら魔道具しかないと決心する。自分の唯一の生産系スキルである魔術陣スキルを活かさず、悪目立ちしせずにそれなりの利益が欲しいなど、都合が良すぎるのだ。


 決め手は、ゴブリン殲滅戦で、【熱風】の魔法具の使い勝手が思いのほか良かったからだ。

 高温の風を起こす魔術も魔道具も既に存在する。500℃の風で巻き込んだものを発火させる【炎風】の魔術があり、魔道具として炎風の杖として既に存在している。クズ魔石の消費が大きい、もしくは高価で大きな魔石が必要となる。

 温度を60℃くらいに下げると【温風】の生活魔法となり、モノを乾かすのに使われてることがある。

 【熱風】の魔術は温度を200℃くらいに抑えることで魔石の消費を小さくした。連続使用でクズ魔石1gで10分くらい使える。サウナを考えれば分かるように、熱い空気は比熱が小さいので殺傷能力は無いに等しいが、顔を狙えば目は一瞬で乾く。近距離で魔物を牽制するのにとても使いやすいのだ。


 お湯の魔道具のように既に市場にあって価格が安定しているものではなく、まだ市場に無い商品であれば、類似品が出てくるまでは利益が出る。ただ、今の形は魔法陣を描いた板に棒を付けただけなので、商品として拙過ぎる。多少洗練を加える必要がある。


「やっぱりワンドだよな……」


 カナタは冒険者通りをぷらぷらと歩き、何かヒントが無いかと店や冒険者の姿を見ながら考

えていた。扱いやすさから、片手に持って30cmくらいの棒、ワンドがいいだろう。ベルトに下げて咄嗟に抜ける形だ。

 しかし、魔法陣をどうすればいいか。魔法陣を量産化するなら、印刷するしかないが、この場合、版画というべきだろうか。一方で版画にしたい、一方でワンドにしたい。両方を満たし、かつ、魔石でも使えないといけない。


 冒険者通りが途絶え、広場から南東へ伸びる通りにぶつかる。南大通りと東大通の間の地区は職人街であり、各種工房が多い。工房は懇意にしている小売りにドカッとまとめて売っているらしい。商人を介するので消費者とは直接関わり合いが少ないエリアとなる。

 材木屋の前に立て掛けられたいる木材のなかに、目についたものがあった。竹だ。こんな中世ファンタジーに竹など珍しいものだと思ってじろじろ見ていたら、店から出て来た男が話しかけてきた。


「あんた、商人かい? 竹が珍しいのか」

「勝手に見てすみません。最近サンダールに来た駆け出しの商人です。竹自体は知っていましたが、こんなところで見るとは思いませんでした」

「ああ、辺境は温暖で雨が多いからな。南に行くと結構取れるんだ。加工手間無しで筒形が取れて、いろいろ使い道が多い」

「へえ、じゃあ、木工屋さんも竹の加工には慣れているんですか?」

「どこでもたまに扱う程度だが、この街で竹製品っていえばモッシ工房だな。珍しいからって、旅商人があそこの製品を買って王都近くで売っていると聞いた。あんたも旅商人なら行ってみたらどうだ?」


 材木屋が場所を教えてくれたので、早速その工房へと向かう。


「すいません」


 建物の1階の開けっ放しの大扉を覗くと中はガランとした広いスペースで、作業台で職人たちが竹を加工している。


「おう、あんた誰だ、何の用だ?」


 背は普通だが、木工をしているせいか上半身がムキムキのオヤジが来た。


「旅商人をしておりますカナタと申します。竹を使った商品を考えておりましたら、モッシ工房さんの腕が良いと聞きまして。少しお話をさせて頂ければと」

「おう、取引か。いいぞ、こっちだ、入れ!」


 オヤジに促されて工房の奥に行くとドアがあり、奥は事務所になっていた。


「それで、カナタさんだったか。俺がモッシだ。それで、どんなものをいくつ欲しいんだ? 設計図はあるのか? 納期は? 金は持ってるのか?」


 常に忙しいのだろうか、やたらとせっかちだ。


「まず、教えてほしいのですが、竹の原価って他の木と比べてどうです?」

「そっからか! ……まあそうだな、重量単価で言えば他の木材より少し高い。数が少ないからな。ただ、嵩で言えばかなり安い。軽いからな。加工は他の木よりしづらいが、うちなら皆慣れてるから、数さえあれば加工費を抑えられる」


 カナタはこんなものが作りたいのだと大まかに説明する。


「おお、簡単そうだな」

「決まったらおおよその寸法を描いたものを持ってきます。まず試作品を高目の値段で作っていただき、決まったら100個単位で発注しようと思います」

「100個なら単価は下げられる」

「それとは別に、細工しやすい目の細かい木材で、10センチ角くらいの立方体の塊を5つ欲しいのですが、売って貰えますか?」

「すぐ切ってやる。そうだな、立米単価があれだから…………銀貨3枚だな」


 親方はソロバンのような計算機を弾く。


「それでお願いします」


 モッシは立ち上がると工房へと戻り、近くにいた職人に木材をカットさせ、無造作にカナタへ渡す。カナタは銀貨3枚渡す。


「じゃあ、それでいいか? 次は設計図持ってきてくれ」

「ありがとうございました」


 職人だけあって商人相手のような腹の探り合いも無く、せっかちに話が進んだ。



 南通りでいくつか買い物をしてから、広場の屋台で肉串を買い、北通りへと進もうとしたときだった。


「カナタさーん!」


 丁度冒険者ギルドから出て来たシーラがカナタを見つけて駆けて来た。


「おう、シーラ。元気だったか?」

「とうとうギルドで【ゴブリン殺し】という二つ名が付きましたよ。あの魔石30個の威力はすごかったです!」


 シーラはそう嬉しそうに言うのだが、カナタにはどこに嬉しい要素があるのか分からない。


「そ、そうか、良かったな」

「これもカナタさんのおかげです!」


 見た目だけは見目麗しい少女なのだが、【ゴブリン殺し】の二つ名は良いことだったのだろうか。この子はどこへ向かっているのだろうか。


「さすがに巣を全滅させたからか、あれから街の近くでゴブリンを見なくなったんですよね。南にいけばまたいるんですけど、どこに巣があるのか分からないんですよ」

「シーラ、まさか一人で巣に突っ込もうとかしてないだろうな?」

「いえいえ、そうじゃなくて。巣を見つければ、またカナタさんと一緒に襲えるかなと思いまして。最近は見つからない練習もしていますしね!」

「悪いが、ちょっと今は商売の方で活動してるから、冒険者はしばらく休業だ」

「じゃあ、冒険者に戻るまでにゴブリンの巣穴を見つけておきます。私は【ゴブリン殺し】してきますんで、失礼します」

「おう、気を付けてな」


 シーラは東門へと駆けてゆくが、途中で止まるとまた戻って来た。


「そういえば、叔父さんから、カナタさんを見かけたら来るように言ってくれといわれてました」


 ラーベだ。支払期限にはまだ日付がたっぷりあるが、何かあったのだろうか。


「分かった。行ってみる」



 ラーベ商会につくと応接室に案内され、しばらくしてヨン・ラーベが現れた。


「シーラから聞いて来ました」

「ああ、マジックバッグについて話があってな」


 何か、まずいことでもあったのだろうか。カナタは少し緊張しつつ言葉を待った。


「ヴェストラプラ侯爵領に、物好きな貴族相手に珍しいものを売り付けるのを仕事にしている古い知り合いがいてな、先日、そいつが2つとも買った」

「それは良かったです。では、支払いですか?」

「ああ」


 ラーベは巾着をテーブルに置き、中から金貨を出すと10枚ずつ積み上げ、それを15と、6枚置いた。


「残りの金貨156枚だ」


 支払い書、受領書を交わし、それぞれサインして交換する。

 金貨の入った巾着ごと受け取り、懐へしまった時、ラーベが言った。



「おまえがマジックバッグを作ったんだな?」



 ギクリとして体がこわばり、急激に血の気が引いてゆく。それを無理矢理平静を装い、口を開く。


「作った……?」

「マジックバッグは1000年以上古いものしか無いと言われている。元の品質が良いため見た目は古いバッグにしか見えないがな」


 ラーベは言葉を切り、鋭く探るような目でカナタを見る。カナタは背中に冷たいものを感じながらも、目を逸らさぬよう腹に力を込める。


「マジックバッグを売る直前、鞄についた焼き印に気づいた。薄くなっていたので気づくのが遅れた。あれはこの町の皮細工を扱うヤッシュ工房の焼き印で、その工房は出来て20年しか経っていない。慌てて焼き印は削っておいたが、もう少しで面倒なことになるところだった」


 カナタは冷や汗が噴き出るのを感じた。そんなところから気づかれるとは全く予想できなかった。どのようにマジックバッグを手に入れたかを説明出来ない以上、ここでどう取り繕おうと、ラーベが考えを撤回することはない。

 ラーベはどう動くつもりなのか。欲に目がくらんでカナタを囲い込み、短期間荒稼ぎし、大きな力に目を付けられたらカナタを売るという手だってある。

 しかし、


「余計なことは聞かない。マジックバッグはもう買うつもりはない。それに関しては俺が囲い込んだところで守り切れる自信はない。おまえも自分自身を守り切れないだろう」


 己の困難な行く末を想像していたカナタだったが、それは杞憂だった。

 ラーベは良識のある商人だった。

 これは大きな借りだ。それを知らないふりができるほどカナタは腐ってはいない。


「ありがとう、ございます……」


 カナタは自然と深く頭を下げた。


「俺は短期的な商売より長期的な商売が好きなんだ。長い間儲かる方がいいだろう? おまえが魔道具師なら、そんな目を付けられるものをわざわざ作らなくても十分稼げるはずだ。俺だって、危険な橋を渡ってその伝手を駄目にするより、そちらのほうが長期的に見て儲かる」


 カナタ自身もそう考えていたところだ。


「魔道具師は囲い込まれているからな。なかなか工房と伝手が持てなかったんだ。もちろん、取引である以上、無理強いはするつもりはない。ただし、俺と取引をするつもりなら、俺以外に売るな」


 もちろん、良識だけでなく、したたかだ。自分以上に安全な取引相手はいないだろうから俺だけと取引しろ、と言っているわけだ。


「敵わないですね……」


 カナタは観念したと同時に安心して息をつく。


「当たり前だ。年季が違う」


 ラーベはそう言ってカラカラと笑う。



 カナタは今考えている熱風の魔道具について説明する。


「魔石の持ちがいい牽制用の道具……。分かりにくいな」

「分かりにくいとは?」

「商品ってのは、効果と値段が揃ってこそ、買うか検討できる。

 例えば、値段がハッキリしない商品を買おうとは思わないよな? 悠長に見積もりを取る商品は限られている。同じように、何に使えばいいか分からない道具を買おうとは思わない。そもそも買う検討の俎上に上らないわけだ」

「実演販売のようなものが必要なんですかね」

「実演販売? なんだそりゃ」


 カナタは使い方を面白く見世物にして売る手法を説明する。


「それも一つの手だが、それ以前の問題だ。これは何の魔道具です、と一言で言えるか?」


 魔石の持ちがいい牽制用の道具と言われても、確かにピンと来ない。


「新しい商品ってのはそういう説明が重要で、何に使えるか一言で分からないといけない。それは何なんだ? 武器じゃないんだよな? 何でもいいから、似たようなものが無いか? ヒントになるかもしれない」


 武器と言うには相手を傷つけるようなものでもない。役割で言うには、網とか、押さえつける刺又とか、足を引っ掛かけて転ばせる罠とか、そういう……。


「非殺傷武器。抵抗するものを殺さず捕える場合に使う武器です」

「非殺傷武器か、悪くない呼び方だ。そうだな……、それならあちこちの領主に警備用の武器として売れるかもしれん。殺さず捕えられる。いいじゃないか。

 低レベル魔道具だし、最初は小売り価格を金貨2枚くらいから始めるか。卸値が金貨1枚銀貨50枚、生産価格が金貨1枚。近くの都市の武器商や領主に売り捌いてやる。どうだ、やれるか?」


 お湯の魔道具は小売価格が金貨1枚だった。生産価格が金貨1枚なら余裕で利益が出る。


「はい、それならこちらも利益が出ます」

「あとはおまえの工夫次第だな。類似商品が出回ったら当然価格は下がっていく。そのときはまた買取単価は要相談だ。安くなりすぎたら早目に手を引くからな」


 早速家に戻り、おおよその大きさや構造を絵にし、寸法を決める。

 長さは30cm程度、直径4cm程度の握りやすい竹のワンドで、端部の一方は節とし、もう一方を木材の栓になっていて開けられる。竹の水筒のような形だ。中に魔術陣が記された紙を丸めて入れ、栓を抜きクズ魔石を入れた状態で発動させれば、熱風が吹く。

 この時魔術陣の中心から熱風が生み出されるのではなく、魔法陣の横方向に熱風を生み出すように魔術陣を描けば、ワンドの先端方向へ熱風が吹く。だから、丸める方向と入れる方向だけは気を付けないといけない。

 何より、こうやってワンドと魔術陣を分けておくことで、新しい魔術陣を開発すると新しい商品になる。

 魔術陣は10cm角のスタンプをつくり、簡単に量産できるようにする。



 いざ、あとは量産体制を築くだけというところで、重要なことに気づく。家が4階にあるのだ。いちいち部品を4階の自宅に運んで作業し下ろすのは、今後も魔道具を作成してゆく上で問題だ。

 モッシ工房に発注する前に、小さくていいからどこか工房を借りる必要がある。

 早速フッリ不動産商会へ行き、相談する。


「小さくていいので、工房や倉庫に使える一階の物件はありませんか?」


 家を借りる時に対応してくれた店員は他の店員と相談しつつ、二、三の物件を挙げてくれた。サンダールの街は治安の管理のため、大通りに面する建物以外は、所得層ごとに大きさを変えるため、北の建物は間口が大きく、南の建物は間口が小さい。なので、1階で小さな工房となると、南端となり、治安があまりよろしくないらしい。


「北の街区では無理ですが、南の街区あたりで1階の小さな住宅を工房として借りてはいかがでしょう? 以前そういう使われ方をしていた物件がちょうどありまして、そこなら大家さんも工房として使っても苦情を言わないと思われます」


 自宅の半分くらいの広さの1階にある部屋を借りることが出来た。作りは自宅の建物と変わりないが、間口が半分ほどしかない。中庭が狭く一階にあるせいで日当たりが悪いが、賃料は一月銀貨35枚で安い。ここなら楽に資材を運び入れられるだろう。

 

 モッシ工房と試作品を作って確認し、最初のロット100本を発注した。ワンドが単価で銀貨5枚だ。竹の太さが微妙にまちまちなため、端部の蓋の加工が一番手間になった。

 魔力インクはラーベ氏が大量に調達してくれて、銀貨20枚まで単価が下がった。

 その他もろもろ合わせ、原価は銀貨30枚に収まる。粗利は銀貨70枚だ。


 カナタはぺったんぺったんと魔術陣を紙にスタンプし100枚刷る。そして、魔力を流して回路化する。こればかりはカナタが一日でやれる回数は限られているが、モッシ工房の納期の方が長いので焦る必要はない。


 数日後、100個の竹筒が工房に届けられた。あとは、魔術陣の向きを間違えないように気を付けつつ丸めた紙を筒に押し込んでいくだけだ。

 光魔術の基本魔術【光明】を習得し、照明の魔道具を作ってあるので、工房は明るい。

 完成したワンドを運び込まれた時に入っていた大きな麻袋に詰め直し、ラーベ商会へと届ける。

 5割を即金で、5割を一か月後の支払いとする。この先はラーベ氏の売れ行きを確認しつつ、ロットごとに買い取って貰うことになる。



「全部フィアーグラン卿に売れたぞ。もっと数が欲しいそうだ!」


 しばらくして会ったヨン・ラーベはでかい商機に興奮していた。目は血走り、爛々と輝いている。

 一方で、誰だそれ、とカナタは首を傾げる。


「フィアーグラン辺境伯はサンダール家の家督を持つアレクシス・サンダール様で、敬称で呼ぶ場合、その者が持つ一番高い爵位の地方を統べる者という意味で、フィアーグラン卿と呼ぶんだ」


 街の名と家名が一緒の理由は、中央広場の銅像で読んだ覚えがある。

 フィアーグラン辺境地域の都市のほとんどがサンダール本家のものであり、農村さえそうだという。なので、アレクシス・サンダールは、辺境地方を統治するフィアーグラン辺境伯であると同時に、この街を統治するサンダール子爵であり、その他の街の子爵であり、その他多くの村の男爵でもある。それぞれ、血縁の者が多い内務官を代官として派遣しているらしい。

 自分が持つ爵位=領地は、王に忠誠を誓い税を上納する限り、部下に下賜することができるらしく、中には、辺境開拓時の功臣が子爵となっている街もあるとか。

 話を戻すと、フィアーグラン卿に売れたということは、フィアーグラン辺境伯領のすべての街の警備兵に売ることと同義なのだという。


「ここまでうまく行くとはな。どんどん作れ、次はヴェストラプラ侯爵領に売る!」


 とりあえず、千個作れとラーベは言う。

 カナタはごくりと生唾を飲んだ。



 次から次へとモッシ工房から筒のワンドが送られてくる。

 カナタは魔術陣に魔力を流し、倒れるようにして眠り、また魔術陣に魔力を流す。100個作成するごとにワンドに捻じ込み、納品する。

 制作数が400を超えたころ、スキルレベルが上がる。


『魔術陣スキルがLV3になりました。』

『風魔術スキルがLV2になりました。』

『火魔術スキルがLV2になりました。』

『魔術融合スキルがLV2になりました。』


 制作数が800を超えたころ、スキルレベルが上がる。


『魔術陣スキルがLV4になりました。』

『風魔術スキルがLV3になりました。』

『火魔術スキルがLV3になりました。』

『魔術融合スキルがLV3になりました。』


 制作数1600を超えたころ、スキルレベルが上がる。


『魔術陣スキルがLV5になりました。』

『風魔術スキルがLV4になりました。』

『火魔術スキルがLV4になりました。』

『魔術融合スキルがLV4になりました。』



 ほとんど工房に泊まり込み状態で作り続け、1か月ほど経つ。モッシ工房も増産体制に入り嬉しい悲鳴が聞こえている。


 一度寝ると40個作れるようになったのを機に、カナタは寝て作ってを繰り返すのやめた。

 夜寝る前に自宅で魔術陣に魔力を通し、100枚たまったら、工房に行って魔術陣の紙をワンドに捻じ込むようにした。それでかなり生活にゆとりができた。


 財産は売掛金を含めると1600枚に迫っており、金貨は全て亜空間収納に放り込んでいる。大した仕事量ではないのだが、金があるのにどうして働かないといけないのか分からなくなってきた。考えると余計面倒くさくなるので考えないようにする。


 昼は惰性で魔術スタンプを押し、夜になると魔術陣に魔力を流す。

 100枚になるとワンドに捻じ込む。

 早く価格が下落しないかな、そうしたらやらなくてよくなるのに。そう、本気で思い始めていた。


 緊張感がなくなっていた。このままこれがずっと続くのだと思っていたのだ。

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