帰り道、ママと私は話題のハンバーガー屋に寄った。少し遅めの昼食のためだ。スポンサーがいるので注文は強気で、ジュースも付けちゃう。

 私がオレンジジュースの「氷なし」をタップしているのを、ママは「へぇ~」と見ていた。マニュアル敬語の大学生や片言の外国人より、注文はタッチパネルの方がよほどいい。スマイルは二次元のイラストで十分だ。


 トレイを持って席に着くと、ママは正面に座る私をしげしげと見て、「さきも高校生かぁ」と一人感慨に浸り始める。

「ねぇママ」

「ん?」

「なんで女子だけスカートなの?」

「標準服の話?」

「差別じゃない?」

 あくまで「標準服」だから違う服で登校してもいいんだけど、女子の「標準」がスカートというのは解せなかった。なのに、世間で異を唱える人は誰もいない。

ママも「一般にスカートを穿くのは女の人が多いからね」と、煮え切らない。

「普段着で誰が何を穿こうが関係ないじゃん。学校の標準服って所が、こう、根深いんだって」

 私は力説したが、ママは冗談めかして「じゃあさきは毎日パンツスタイルにすればいいじゃん。さき足長いからかっこいいと思うよ」と、フライドポテトをつまんだ。

「いや、逆にめちゃ短くするから」と、私はジュースに手を伸ばす。炭酸の刺激が心地よい。


「そういえばさ」

 私にはもう一つ気に食わないことがある。

「なんでトイレは男女別なの?」

 ママはハンバーガーを頬張りながら首を傾げた。

「女子の方ばっか混むじゃん。あれずるくない? 男女一緒にしてくれればあんなに並ばなくていいのにさあ」

 コーヒーを一口飲むと、ママは「大浴場とかは男女別だからね」と、またも煮え切らない。

「トイレはどうせ個室だし、ここだって区別ないじゃん」

 私は店のトイレを見た。ドアには男女のシルエットが並んで描かれている。

こんなこと考えてる私ってバカなのかなぁ、と思っているうちに、ママは先に食べ終わってしまった。 

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