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「日本の将来はああいう人に任せておけば大丈夫だね」
私はワタルが出て行ったドアを見たままそう言った。コトは曖昧に返事してから、「でもそんなこと言ったらワタールに衆愚になるべからずって怒られるよ~」と付け足す。確かに人任せはワタルの理想とは対極な気がする。私も何秒か考えて、「それって結局選挙制度が悪いんじゃないの?」と、思い付くままに言ってみた。「だって、馬鹿な国民を扇動して票を集めればいいんでしょ?」
コトが即座に「コトは国民だ。コトは馬鹿だ。だから日本は終わりだ~」と、仰々しく頭を抱えて天を仰いだ。私は思わず吹き出してしまった。
でも半分くらい本気で思うことはある。国民の多数決で国の未来が決まっちゃうなんて、そんな恐ろしいシステムでいいんだろうか。世の中ワタルみたいな国民ばかりじゃないのに。むしろ、あんなの少数派なのに。人はみんな自己中で身勝手。しかも流されやすい。あと三年も経てば、私も有権者になって政治の責任を背負わされる。でも、だからって勉強するモチベーションにはならないんだけど。
勉強しようがしまいが時間は流れ、考査はやって来る。中間考査は火曜日から金曜日まで続くが、唯一嬉しいのはお昼で解散になることだ。そしてお昼になると、「解けなかった」、「ミスった」、「分かんなかった」と牽制し合うのだ。
「現代文全っ然分かんなかったんだけど、コトどうだった?」
私のこれは牽制じゃない。私はできたのに「できなかった」とは言わない。本当に分からなかったから「分からなかった」と言っただけだ。
私の質問に、コトは「現文は答え書いてあるからね~」と涼しげに答える。「漢字以外は解けたと思うな~」とは何ともムカつくではないか。あんなに授業中に寝ているコトの方が成績いいなんて理不尽だ。
「答え書いてあるってどういうこと?」
私はちょっと厳しい口調で迫った。
「英数みたいに単語とか公式の知識が要らないでしょ? だから書いてあることをそのまんま読んでそのまんま書けば答えになるって感じかな~」
テスト期間に感じたことは、私が実は落ちこぼれの部類だということだ。中学の時は勉強で苦労した覚えも無いけど、なんだかんだ言ってもここは進学校らしい。一緒に馬鹿なことを言ってたマカナも、いつの間にか勉強するキャラになっていた。たぶん優等生のアカリと仲良くなってからだ。なんという抜け駆け。
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