3
一人目は紫藤琴葉。コトハはウェーブのかかった茶髪で、一際のんびりとした話し方をする。「よろしくお願いします~」と彼女が語尾を伸ばすと、こちらもいい具合に脱力する。コトハが喋ると欠伸がうつるって感じ。
二人目は、永岡麻佳奈。マカナは、かわいい。彼女にするならこっちかな。いや、どうかな。でも、デートするならやっぱりマカナかな。身体は小さく華奢で、長く真っ直ぐな黒髪が揺れている。男子に人気の女の子って感じ。
各自ママと合流して、今日はおしまい。ママが八木と話している間に教室を見渡すと、すでに何人かの女子が輪になっておしゃべりしていた。
「さき」と呼ばれてママを見ると、「校長先生の挨拶の間、ふらふらしてたでしょ」だって。ママの席から私は見えないはず。八木がばらしたのか?
「ふらふらはしてない」
ママの表情が浮かないので、「きょろきょろはしたかも」と付け加えた。
「ちゃんと聞かないとだめでしょう」
「聞いてたよ」
「聞く態度のことを言ってるの」
「校長の話つまんなくなかった? もっと話し方工夫した方がいいよね。ママもそう思わない?」
「それとこれとは別。どんな話し方でも聞くべき時はあるでしょう」
「あ、じゃあ話が下手だとは思ったんだね?」
ママは半ば諦めたように、「どんな話も完璧ではあり得ないわ」と言った。逃げの返答だが、私にはこれで十分だ。「あ!」と、友達を見つけたふりをして、廊下に出る。
後ろから「すみません」とか何とか聞こえてきたけど無視した。だって、この状況でママが八木に謝らなければならない理由なんて無いと思う。そうでしょう?
トイレに逃げ込むと鏡に自分が映った。肩にぎりぎり届かないくらいの髪。紺のブレザーに、膝丈のチェックのスカート。うーん、面白くない。ところで、スカートと言えば、前から気になっていることがあるんだけど、ちょっと聞いてくれる?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます