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「生徒会長選挙に出る」と言うと、意外にもママは反対しなかった。

「一年生でも出られるんだ」と驚いたみたいだったけど、それだけ。

 夕食を終えると、部屋にこもる。私はこれから一枚の書類を書かなければならない。立候補届だ。一年A組一番、綾雲咲姫。立候補する理由? そんなの書かなきゃいけないの?

「生徒会長になって学校を変えるため」としておいた。

 次。意気込み? 要る? この項目。

 全部ひらがなで「がんばります。」完璧。

 ミッキー先輩は「届を書いたら生徒会室に出しに来て」とだけ言っていた。書き終わったので、今日はこれで寝ることにする。


 生徒会長選挙。全校でたった一人の生徒会長を、全生徒の投票で決めるイベント。当選すれば、会長が指名する副会長と書記一人ずつを含めた三人が、役員として半年間の任期を務める。普通は二年生が立候補するんだろうけど、規定では「三年生は立候補できない」とあるだけ。寛大な規定を作った先人に感謝する。

 会長は当選した後に副会長と書記を指名してもいいが、大抵は指名してから選挙に臨むらしい。となると、私は副会長と書記の候補者を決めなければならない。

とりあえず昨夜書いた届を持って、生徒会室のドアを叩く。隣にはコトも連れてきていた。私は内心、コトに副会長を頼もうと考えていたからだ。

「どうぞ」とミッキー先輩の声。何だか面接を受けているみたいで変な気分。

「失礼しまーす」とドアを開けると、ミッキー先輩と、ソフィー先輩と、もう一人、見覚えのある人が座っていた。その子の名前を思い出すのは、コトの方が早かった。

「ユーコちゃん、何でこんな所にいるの~?」

 そうだ。宮原優子。同じクラスの大人しい女子。いつも何か読んでる優子。私の名前の漢字を知っている優子だ。彼女は恥ずかしそうにフフッと微笑んだ。ミッキー先輩が代わりに返事をくれる。

「彼女は現生徒会執行部のメンバーだ。非常に優秀なので、サキちゃんの右腕として自信をもって推薦できる」

 こうして選挙対策本部は旗揚げとなった。会長候補が私。副会長候補が優子。そして書記候補がコトだ。

 なんと、全員一―Aではないか。

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