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「今度の文化祭で生徒会主催のミスコンをやるために生徒会長に立候補しました」

 自分で聞いても動機が不純すぎる。でも、がんじがらめのこの学校で自由になりたいなら、生徒会長はちょうどいいかもしれないと、ちょっと思った。


「選挙っていつあるんですか」

「来週だ。ただし、申込期限は明日。猶予は二十四時間」

「何か先輩楽しそうですね」

 いつもにこやかな先輩だったが、この時はいつにもまして口角が上がっている気がした。

「そりゃそうだ。サキちゃんが生徒会長になったら、学校が変わるかもしれないからね」

「変わるってどういうことですか」

 ミッキー先輩の真意が読めない。この人は私に何を期待しているのだろう。

「噂は聞いているよ。ダイガク先生とやり合った話とか」

 ソフィー先輩が「金子先生のことよ、体育の。サキさん赤いエクステで色々あったでしょう?」と補足する。

「金子ってダイガクって名前なんですか? 全然そんな感じしない」


 ミッキー先輩は私を会長に推したいのか、「教員に対しても意見できる度胸、これだけ噂を広げる生徒への影響力、そして抜群の知名度。生徒会長の素質に関して右に出る者はいないと思うよ」と褒め殺しだ。それだけ褒められると、私も悪い気はしない。知名度は、先輩のせいでもあるけど。

 そこへコトまでが「いいじゃ~ん、姫が生徒会長だって~」と乗ってきて、最後に先輩が「現生徒会長の正式な後継者にして、現副会長と書記の公式の推薦を受けているということにしよう」とウィンクした。

 何となくいい気分になった私は、「生徒会長になります!」と元気よく言って敬礼した。アホっぽいと言えばアホっぽいけど、まぁ楽しそうだからいいんじゃないかと思った。

「で、今の会長って誰なんですか?」

 私は本当に知らなかったが、ミッキー先輩は心底意外だという反応だった。

「え? 知らないの? タカキちゃんだよ」

 ソフィー先輩が「放送部部長の齋藤隆煕さん」と補足する。「それから、書記は私のことね」とさらりと言った。

 なんと、全員放送部員ではないか。

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