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考えてみれば当たり前かもしれない。思い通りにやりたければ、自分が組織の長になればいい。だから、文化祭でミスコンがやりたければ、自分が長になれるように部活を作ればいいのだ。
「先輩って生徒会の偉い人でしたよね」
私はミッキー先輩に椅子ごとグイっと近寄る。確かこの人は副会長とか、何か役付きのはずだった。
「新しい部活ってどう作るんですか?」
「設立趣意書と五人以上の構成員名簿、顧問教員の許可印。それで生徒大会を通せば同好会が作れる。さらに、二年以上の活動実績が承認されれば、晴れて部活動に昇格となる」
先輩は早口で一気に説明した。半分くらい聞き洩らしたかもしれないけど、とにかく部員を五人揃えなければならないということは理解した。頭の中で「マカナは名前を貸してくれるだろう」と考える。
しかし、ここでも予期せぬ壁が立ちはだかった。
「サキちゃんは、あくまでも今度の学園祭で何かやりたいんだよね」
「ミスコンです」
「うん。でもそれだと、今から同好会を作ろうとしても間に合わないと思うよ」
「どうしてですか」
ミッキー先輩の説明によると、同好会になるのに生徒大会の承認が必要だが、次の生徒大会は文化祭よりも後だ、ということだった。先輩はさらに付け加える。
「しかも、どの団体も学園祭実行委員会に一次企画書を提出済みだ。今からの追加は難しいのではないかな」
放送部でもダメ。新しい部活もダメ。じゃあ、どうすればいいの? せっかく文化祭を楽しもうと思ったのに。
私が不機嫌な顔をしていると、コトが「生徒会は?」と次なる妙案を出してきた。「今から生徒会に入って、生徒会主催でやるのは~?」というわけだ。
目が自然とミッキー先輩を向く。生徒会主催ということは、まずはこの人を説得しなければならないということだった。しかし、そんな心配をよそに先輩は「That’s right.」と軽く言って、「サキちゃんに覚悟があるなら、今度の生徒会長選挙に推薦しよう」と笑った。
「え、ちょっと待って、どういうことですか」生徒会長? そんなこと一言も言ってないけど。私の狼狽を無視して、先輩はにこやかに「唯一の道だと思うよ」と言った。
思い通りにやりたければ――。ということなのかもしれない。
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