生徒会のミッキー

32

 試験前には私とコトだけだった放送室も、賑やかな日常を取り戻していた。理人先輩がパソコンの前、ワタルがその隣。ハッキンは密かに持ってきたゲーム機をモニターに繋いでレースゲーム。時折「よっしゃ!」と言っている。ミッキー先輩とソフィー先輩は仲良く書類を読んでいて、私とコトは「文化祭どうする?」と話し合っていた。運動会の後に「文化祭で何かやろう」と言っていたのに、テストのせいで棚上げになっていた件だ。

「やっぱ文化祭と言えばミスコンでしょ!」と私が強く推したからか、コトもその気になってきていた。しかし、そのやり取りを聞いていたミッキー先輩が、意外なことを言い出した。

「サキちゃん、企画を出すなら学園祭実行委員会にルールを確認した方がいいと思うよ。確か有志団体の参加は受け付けていないはずだ。ねぇユウトちゃん」

ミッキー先輩がそうハッキンに呼びかけると、ハッキンは「俺はeスポーツ大会に一票」と、的外れな返答。仕方なく先輩は「そうだよね、ソフィー」と聞く相手を変える。ソフィー先輩は何やらスマホをいじって、「学園祭に企画申請できるのは、クラス、部活動、委員会、PTA、その他特別に認められた団体のみとする。生徒有志での企画はこれを認めない」と読み上げた。

「え、じゃあ放送部でやればいいじゃん」

 私は至極自然な流れでそう言ったつもりだったが、「それは難しいと思います」と、思わぬところから反論を受けた。ワタルだ。私はすぐに「なんで」と言い返す。

「学園祭マニュアルによると」と、ワタルは分厚いファイルを開いて、「一団体一企画の原則があります。放送部は毎年ブースを出しているので、それ以上のことはできません」といつもの説明口調だ。将来は官僚じゃなくて弁護士か検察にでもなればいいと思う。

「何それ。全然面白くない」と私は口を尖らせた。

 もっと自由に何でもできるような場所はないの?

「せっかくイケメンか美女をゲットしようと思ったのにぃ」とふくれていると、コトが「放送部じゃなくて放送委員会として参加するのは~?」と妙な案を出してきた。つまり、部としてと委員会としてとで、企画を二つ出そうというわけだ。

 この天才的アイディアにも、ワタルは「放送部と放送委員会は同じ組織です」と厳しい。

「分かった!」

 しかし、私は最高の解決策を思い付いた。

「新しい部活を作ろう!」

 今度はワタルも何も言わなかった。自分に被害が及ばなければ、放送部のブースが出せさえすれば、後は何でもいいんだろう。

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