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 午後になると早くも熱が下がり始め、布団を出てキッチンを歩き回る。冷凍ご飯とレトルトカレーを温め、横にスマホを置く。しかし、誰からも何の連絡も来ていなかった。

「私は生徒会長」と呟いてみる。

 これは厳然とした事実なのだ。生徒会会則に書かれている、選挙という正式なプロセスを経て決まった。だから、何人たりともこの事実を覆すことはできない。僅差だろうが何だろうが、私は勝ったのだ。それは皆が受け入れなければならない。そう。誰しもが認めなければならない。この綾雲咲姫が生徒会長であると。私はテレビのリモコンを手に取った。


 八木に似たおっさんが、日本の人口ピラミッドを解説している。「釣鐘型」が「棺桶型」になるんだそうだ。中身は正に死体ですってか。面白くないのですぐに消した。


 翌朝、すっかり元気になった私は、ぎりぎりの時間に教室に駆け込む。

「咲姫ちゃん大丈夫?」と一番に話しかけてきたのは、優等生のアカリだった。

「あ、うん。もう平気。コトは?」

 教室にコトの姿が見当たらない。今日も遅刻か? と思っていると、アカリが「琴葉ちゃん昨日も休みだったから、大丈夫かな」と心配そうに空いた席を見やった。

「そうなんだ」

 まぁ欠席も多い人だけど。

 そこへマカナが近付いてきて、「昨日はサキとコトが一緒に休んだから、学校サボってディズニーでも行ってんのかと思ったよ」と笑った。

「生徒会長だからズル休みとかしないんですー」と私も冗談で返す。

「でも咲姫ちゃん生徒会長なんだよね。それってなんかすごいね!」

 アカリが今その事実に気付いたかのように、声を大きくして驚いた。

「おめでと!」と言ったマカナが「演説のあれって、文化祭何やるつもりなの?」と聞いた所でチャイムが鳴った。一時間目は八木の数学だ。テレビみたいにリモコンで消せたらいいのに。


 私は正々堂々と戦った。そして、みんなが私に投票した。だから私が生徒会長になった。なんのズルもない。ミッキー先輩も言っていた。私を生徒会長にしたのはみんなの選択だから、みんなが責任を負わないといけないのだ。私はただ胸を張っていればいい。

 さぁ。早速ミスコンの準備に取り掛かろう。

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